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放課後等デイサービス

小学生以上の児童生徒が利用できる療育に放課後等デイサービスがあります。
この記事では放課後等デイサービスの対象年齢や本サービスの目的と位置づけ、支援の内容などについて説明してきます。

放課後等デイサービスとは

放課後等デイサービスは、2012(平成24)年に児童福祉法第6条の2の2に位置づけられた比較的新しいサービスで、以下のように定められています。

この法律で、放課後等デイサービスとは、学校教育法(昭和22年法律第26号)第1条に規定する学校(幼稚園及び大学を除く)に就学している障害児につき、授業の終了後又は休業日に児童発達支援センターその他の厚生労働省令で定める施設に通わせ、生活能力の向上のために必要な訓練、社会との交流の促進その他の便宜を供与することをいう。

利用対象者

対象年齢は就学している児童生徒であり、基本的に小学生から高校生が対象となります。特例として、高校を卒業しても放課後等デイサービスを受ける必要があると判断された場合は、20歳まで通うことができます。2020(令和2)年現在、厚生労働省は『専修学校』や外国人学校などの『各種学校』に在籍する生徒にも利用対象の拡大を検討しています。
ただし、放課後等デイサービス事業所によって受け入れ可能な年齢が異なるため、各事業所に確認が必要です。

利用者の要件は、知的障害や発達障害などの各種障害をもった児童生徒のほか、支援の必要性が認められた児童生徒となります。後者は診断や障害者手帳の取得は不要ですが、医師や児童相談所所長などの専門家の意見書が必要になります。

放課後等デイサービスの対象拡大について  厚生労働省

支援の目的と位置づけ

子どもは小学校に就学すると、生活のほとんどを学校で過ごすようになります。学校では年齢に応じた学習内容を習得するだけでなく、教師や友達との交流、係の担当や校則の遵守など、知識技能の獲得、人間形成、社会性の育成など多くのことを学びます。しかし、これらの多くは時間や場所、方法などの枠組みがあるため、子どもは受け身になってしまうことも少なくありません。放課後や学校休業日は子どもが自主的になれる時間帯であり、放課後等デイサービスはこの時間帯を利用して、子どもの自立や発達の支援を目指していきます。

放課後等デイサービスの対象は、学校に通学している学童期や思春期の子ども達であるため、在籍する学校だけでなく自治体の施策である放課後児童クラブなどとの連携や協力が必須となります。例えば、学校で作成される「個別の教育支援計画」には、放課後等デイサービスでの支援が記載されることになります。そのため放課後デイサービスで作成する個別支援計画書との整合性が取れていることが望ましいでしょう。学校と放課後等デイサービスが情報共有や連携を確実にすることで、子どもの困難や特性に応じた教育や学校卒業後を見据えた支援を提供できるようになります。また、放課後児童クラブでは一般的に小学生高学年以降の利用が制限されるため、思春期の子どもでも利用ができる放課後等デイサービスによって切れ目のない支援も可能になります。

支援の内容

放課後等デイサービスでは「発達支援(本人支援)」、「家族支援」、「地域連携」の点から支援が行われます。

発達支援(本人支援)

放課後等デイサービスも児童発達支援事業と同じく個別支援計画に基づいて支援が提供されます。個別の支援計画は子どもの発達課題を考慮して作成されなければなりません。例えば、学童期には集団生活に必要な規範意識の形成、学業やその他の活動の評価による自尊心の育成が、思春期には自己の在り方に関する思考や主体的な選択や進路の決定が発達課題となります。これらの発達課題とそれぞれの子どものニーズに応じて活動プログラムを提供することで発達を促していきます。

例えば、自由遊びの際には高学年の児童生徒にルールを設定させることで、低学年の児童生徒への配慮を意識させたり、活動時間の合間に宿題をするのを見守ったりします。進路検討を目的に近隣の職場に見学へ行ったりすることもあり、活動内容は多岐にわたります。基本的には集団活動ですが、同じ空間であってもそれぞれが個々のスペースで個別の活動に取り組んだり、子どもの状態に応じて個別の対応を提供したりすることもあります。これらは放課後等デイサービス事業所によって異なるため、事前に問い合わせをしましょう。なかには見学や一日体験を受け入れている事業所もあります。

子どもの発達段階ごとの特徴と重視すべき課題  厚生労働省

家族支援

放課後等デイサービスが行う家族支援には主なものとして以下の3つが挙げられます。

  1. 子育ての悩み等に対する相談を行うこと
  2. 家庭内での養育等についてペアレント・トレーニング等を活用しながら子どもの育ちを支える力をつけられるように支援すること
  3. 保護者の時間を保証するために、ケアを一時的に代行する支援を行うこと

発達障害の多くは、学齢期になって初めて診断されます。
乳幼児を育てる保護者に子育て全般の不安が強かったように、児童期の子どもを育てる保護者も、障害特性や今後の進路に関してなどこの時期特有の悩みを抱きます。混乱の大きいこの時期に、障害に関する知識や支援の方向性を適切に伝えていくことで、家族は安定を取り戻すことがほとんどです。また、発達支援事業と同様に『レスパイトケア』(小休止や休養という意味)の役割もあり、子どもとが一時的に離れて家族が休息をとることで、家族がゆとりを持てるようになります。
保護者が子どもに向き合う自信やゆとりを持てるようになると、子どもの発達にも良い影響となることが少なくありません。

地域連携(地域での生活支援)

児童期以降の子どもは生活のほとんどを学校で過ごしており、学校などでの生活を含めた支援が必要不可欠になります。
学校で作成される「個別の教育支援計画」には、通院している医療機関や利用している福祉サービスの情報が記載されるため、放課後等デイサービスでの支援内容も記載されることになります。
放課後等デイサービスは学校と以下のような点で情報交換を行っていきます。

  1. 本人の状態や課題
  2. 学校での個別の教育支援計画や指導計画に基づく年間目標、単元ごとの目標など
  3. 支援の方法(姿勢保持の椅子などの器具、スケジュールなどのツール、声かけの方法、身体介助方法、パニック時の対応など)
  4. 学校が考える福祉的ニーズ(放課後等デイサービスに求めること)など

また、多くの放課後等デイサービス事業所が、学校から事業所までの送迎を行っています。送迎時に、放課後等デイサービスの職員が、その日の子どもの様子を学校の先生に伺うことで、学校と放課後等デイサービスのこまめな情報共有を行うこともあります。

学校と放課後デイサービス事業所で支援内容の整合性が取れるようこまめな情報共有と連携をすることで、教育と福祉とで支援内容に一貫性が生まれ、より高い効果が期待されます。同時に、子どもが通院している医療機関との連携や連絡も行われるため、医療、教育、福祉をも含んだ総合的な支援が可能になります。 しかし、残念なことに教育と福祉の連携は確実とはいえず、学校と放課後等デイサービス事業所とがお互いの活動内容や課題、担当者の連絡先などが共有されていないことも少なくありません。このような問題を解消すべく、厚生労働省と文部科学省は連名で「児童福祉法等の改正による教育と福祉の連携の一層の推進について」を各都道府県に通知しています。

発達支援の指針  全国児童発達支援協議会
教育と福祉の一層の連携等の推進について  厚生労働省・文部科学省

放課後等デイサービスの費用と利用手順

放課後等デイサービスは障害児通所給付費の対象となる福祉サービスです。そのため、児童発達支援事業と同様、『通所受給者証』(自治体によっては『障がい児通所受給者証』など)を取得すると1割の自己負担でサービスが受けられます。
前年度の所得により負担額の上限が決められているほか、生活保護を受給しているなどの条件によって様々な減免措置が受けられるため、利用する日数が多くても過重な負担金額が発生することはありません。利用料金や減免措置については障害児相談支援や自治体に相談しましょう。

放課後等デイサービスを受ける手順は児童発達支援事業と同様です。具体的な利用手順は「福祉サービス利用手順」を参照ください。放課後等デイサービスの利用を受けるかどうかを悩んでいる場合には、障害児相談支援に相談するとよいでしょう。障害児相談支援事業所は自治体が取りまとめていますので、市役所に問い合わせをしましょう。

障害児の利用負担  厚生労働省

放課後等デイサービスとその他のサービスの違い

親の就労などを支援することが目的である保育園や放課後児童クラブには、利用要件として親の就労状況が問われますが、放課後児童クラブは「生活能力の向上のために必要な訓練、社会との交流の促進その他の便宜を供与する」と児童福祉法が定めているように、子どもの発達の支援が目的であるため、親の就労状況は問われません。放課後児童クラブの利用要件は子どもの状態が放課後等デイサービスを利用する必要性を満たしているかどうかです。
未就学の子ども達が利用できる療育である児童発達支援が保育園などの代わりとして利用できたのに対し、放課後等デイサービスは学校の授業終了後や長期休暇中にしか利用できません。つまり、日中に小学校や中学校などに行かせる代わりに放課後等デイサービスを利用することはできません。

放課後等デイサービスの現状

下のグラフは、厚生労働省の『障害福祉サービス等の利用状況について』などに基づいて作成した放課後等デイサービスの利用者数です。
放課後等デイサービスは2012(平成24)年に開始となった比較的新しい福祉サービスですが、年々利用者数は増えており、2018年度には当初の4倍の利用者数となっています。放課後等デイサービスの事業者数も増加しており、サービス開始の2012(平成24)年には、事業所の数は約3,000でしたが2018年には4倍に増加しています。
全国の小学校は約2万校、中学校は1万校であるため、単純計算で小学校2校に対して放課後等デイサービス事業所が1つ、中学校1校に対して1つとなっています。2012(平成24)年の児童福祉法改正により、住みなれた市町村で児童発達支援のサービスを受けることができるようになったとはいえ、やや過密な状況と言えるでしょう。

厚生労働省の資料では、放課後等デイサービスへの営利法人の参入が著しく、放課後等デイサービス事業所の運営母体の約半数が営利法人となっています。自治体によっては、放課後等デイサービス事業所に対して補助金を支給しているところもあり、そのような地域では放課後等デイサービスの事業所が多い傾向にあります。
残念なことに、一部の放課後等デイサービス事業所では発達支援よりも利潤を追求することを優先するために、子どもにテレビを見せたりゲームを渡したりして遊ばせているだけの事業所があるとの報告もあり、厚生労働省は人員配置や報酬単価の見直しによって適正化を図っています。

利用者人数と事業所数

放課後等デイサービスの現状 厚生労働省
放課後等デイサービス、就労継続支援A型の運用の見直しについて 厚生労働省

まとめ

放課後等デイサービスは児童期以降の発達支援の要ともいえるサービスですが、放課後等デイサービスの現状で触れたような課題もあり、利用したいけど選択に迷うこともあるでしょう。選択の際には以下のポイントに留意してみましょう。

ホームページで活動内容や自己評価を閲覧する

県内の放課後等デイサービスの事業所は島根県が一覧を公開しています。気になる放課後等デイサービス事業所があれば、インターネットなどで活動内容を検索してみましょう。また、2017(平成29)年から、事業所はガイドラインに基づいた自己評価を実施し、その結果及び改善内容を1年に1回以上、ホームページ等を活用して公表することが義務づけられることとなりました。各事業所が公開している自己評価表を参考してもよいでしょう。

利用前の見学や一日体験をする

利用前に見学や一日体験をさせてくれる事業所もあります。ホームページでは伝わりにくい実際の様子気やスタッフの雰囲気を感じ取ってみましょう。

送迎があるか

放課後等デイサービス事業所の多くが子どもの送迎を行っていますが、送迎対象地域に違いがあります。希望したい放課後等デイサービス事業所が、子どもの通う学校を対象に送迎しているかどうかをしっかりと確認しましょう。

子どもの特性に適切な活動内容を提供しているか

事業所によって、ソーシャルスキルトレーニングの実施、理学療法士などの専門家による運動技能の向上、音楽療法を取り入れている、生活スキルの獲得を目指して買い物や調理を実際に行う、元教員による学習サポート、中高生を対象にした進路相談会など、活動内容は様々です。子どもの特性に対して必要な活動を提供しているかどうかで放課後等デイサービスを選択してみるのもよいでしょう。その際には、障害児相談支援事業所の相談支援専門員や心理師などの専門家からこどもの特性をアセスメント(≒評価)してもらうことが望ましいです。

島根県内の放課後等デイサービスの詳細はこちらを参照ください。

障害児通所支援事業所一覧 島根県