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児童発達支援

療育のひとつに児童発達支援というサービスがあります。
未就学の子どもが利用でき、集団遊びで社会性を磨いたり、糊やハサミを使って創作活動をすることで新しい感覚に触れたりイメージしたり、様々な技術と方法で子どもたちの発達を促していきます。
この記事では、児童発達支援について詳しく説明し、どのような活動をしているのか?利用のための手続きは?利用料金はいくら?などをお伝えしていきます。

児童発達支援について

児童発達支援には大きく分けて「児童発達支援」と「医療型児童発達支援」の2種類があります。医療型児童発達支援は肢体不自由があり、理学療法等の機能訓練または医学的管理下の支援が必要と認められた児童に対して、児童発達支援及び治療を行う福祉サービスです。以下からは「児童発達支援」を対象に説明をします。
児童発達支援は、児童福祉法に基づいて設置されている通所サービスです。
児童福祉法第6条の2の2では、児童発達支援の役割を「日常生活における基本的な動作の指導、知識技能の付与、集団生活への適応訓練その他の便宜を提供するもの」と定めています。

以前より、障害をもつ子ども達が利用できる福祉サービスはありました。しかし、知的障害、難聴、肢体不自由など、障害の種類で利用できる福祉サービスが異なっていたため、総合的な支援を受けにくい状態でした。また、根拠となる法律も障害者自立支援法と児童福祉法とで分かれており、福祉サービスの設置主体が市町村か都道府県かで異なっていました。そのため、発達支援を受けるために、わざわざ街に出向かなければならないということもあり、子どもの支援を気軽に受けることがとても難しい状態でした。2012(平成24)年に児童福祉法が改正され、住みなれた市町村で児童発達支援サービスを受けることができるようになりました。

児童発達支援サービスを提供する機関は「児童発達支援センター」と「児童発達支援事業(所)」の2種類があります。児童発達支援センターと児童発達支援事業(所)のどちらも、子どもやその家族に対する支援を行うことは共通していますが、以下のような違いがあります。

○児童発達支援センター
地域の障害児やその家族への相談だけでなく、障害児を預かる施設へも援助や助言を合わせて行うなど、地域の中核的な療育機能をもつ。

○児童発達支援事業(所)
専ら子どもやその家族に対する支援を行う身近な療育の場。

児童発達支援センターの多くは児童発達支援の他にも、放課後等デイサービスや保育所等訪問支援サービスなども提供していることがあり、広く子どもたちの支援に携わっていることが少なくありません。
児童発達支援事業(所)は、児童発達支援センターよりも身近に通えるよう整備されています。そのため児童発達支援センターよりも設置数が多いです。

障害児通所支援の一元化と種類  厚生労働省
児童発達支援センターと事業について  厚生労働省

児童発達支援の対象者は?

児童発達支援を利用できる対象者は、小学校に入学する前の子どもです。具体的には、身体障害、知的障害、発達障害児を含む精神障害のある子どものほか、『療育の必要性』があると判断された子どもも利用することができます。利用の申請にあたっては診断や障害者手帳の有無は問われないため、発達障害の診断がなくても『療育の必要性』がある場合に児童発達支援を受けることができます。ただし、『療育の必要性』は児童相談所や医師などが判断することとなっており、希望者は必ず利用できるとは限りません。
利用者の多くは、乳幼児健診などで療育の必要があると指摘を受けたり、保育園や幼稚園で子どもの様子が気になったりしたことがきっかけで児童発達支援の利用を希望されます。

どのような支援方法(療育内容)なの??

児童発達支援が行う支援方法(療育内容)は、大きく分けて以下の4種類があります。

  1. 本人支援
  2. 移行支援
  3. 家族支援
  4. 地域支援(主に児童発達支援センター)

「本人支援」と「移行支援」を合わせて「発達支援」と言います。それぞれの内容を詳しく見ていきましょう。

本人支援

現在の子どもの発達を考慮して、将来の日常生活や社会生活をスムーズに過ごせるように知識や技能を教えたり、動作の訓練や集団生活の練習をしたりします。
支援する領域には、心身の健康や生活に関する領域「健康・生活」、運動や感覚に関する領域「運動・感覚」、認知と行動に関する領域「認知・行動」、言語・コミュニケーションの獲得に関する領域「言語・コミュニケーション」、人との関わりに関する領域「人間関係・社会性」の5領域があります。これら5領域にどのような課題があり、今後の生活を送るにあたって必要な支援は何かを、支援者が保護者から聞き取ったり子どもの様子を直接観察したりして詳しく評価して児童発達支援計画書案としてまとめていきます。児童発達支援計画書案をもとに、市町村が児童発達支援センターや児童発達支援事業(所)の利用についての支給額を決定します。

児童発達支援計画書の見本  厚生労働省

それぞれの児童発達支援センターや児童発達支援事業所の特徴によって、支援方法(療育内容)や形態が若干異なることもありますが、概ね5領域への支援方法(療育内容)は次のようなものになります。

健康・生活

食事、トイレ、着替えなどの基本的な生活習慣を練習します。具体的には、一定時間ごとに排尿を促してトイレの習慣を形成したり、工作などを通じて手先を使うことで食器を上手に使えるようにしたりします。
健康が維持されることで活動量は増え、身体の発育や知的好奇心の向上につながります。また、園や学校にも継続的に通えることにもなり、集団活動や交流場面に参加することとなり社会性の獲得につながっていきます。

運動・感覚

遊びながら楽しく身体を動かしたり、様々な素材に触れたりすることで運動機能や感覚の発達をうながします。
様々な遊具で遊ぶことで運動の発達が促されれば姿勢を保つことができるようになり、集中して座れるようになることがあります。調理実習で小麦粉をこねることで、べとべとする感覚に慣れることで、粘土遊びや糊を使った工作にも積極的になることができ、頭の中にイメージした考えや計画をより思い通りに創作できるようになっていくことがあります。

認知・行動

周囲の状況から必要な情報を理解して、適切な行動ができるようにします。
発達の能力に応じたパズルや問題に取り組んだり、状況にふさわしい行動を丁寧に学んだりすることで、状況の理解と行動を自発的に起こせるようにしていきます。
また、支援を提供する空間を構造化することで、状況理解を促しています。

言語・コミュニケーション

保護者さんの多くが心配される『言葉の遅れ』の要因には様々なものがあります(ことばに関する問題を参照ください)。例えば、言葉の遅れの要因が構音障害である場合には、言語聴覚士による個別支援が行われることがあります。
ことばを発する機能に問題のないコミュニケーションや社会的なやり取りの動機に要因が考えられる場合には、個別支援よりも集団活動で支援されることが多いです。例えば、自由遊びを通じて子ども同士の交流を促すことでやり取りの意欲を高めたり、挨拶や要求のパターンを練習することで応答のルールを習得したりします。

人間関係・社会性

みんなで大きな工作をするなど、協力が必要な遊びを設定することで、他者への意識を高めていきます。支援者が集団遊びに介入することで、一人遊びでは実感できない集団遊びの楽しみを感じられるようにし、集団参加への意欲を高めていきます。
また、清掃やおやつの時間に役割を割り振ることで、社会性を育んでいきます。

移行支援

地域の保育、教育などの支援を受けられるように関係機関と連絡調整、連携をしていくほか、同年代の子どもとの仲間づくりを図っていきます。例えば、関係機関の連携を目的に子どもの発達評価や支援方法を評価し、保護者同意の元、これらを移行先に伝達します。
また、小学校進学後を見据えた年長児に対しては、授業時間を模して座って作業する時間と休み時間を模して遊ぶ時間を交互に設定することで、小学生活の模擬体験を提供する児童発達支援センターや児童発達支援事業(所)もあるようです。

家族支援

児童発達支援のサービス対象者は子ども本人に限りません。子育ての悩みや子どもの発達に関する不安について、家族も相談することができます。これは、保護者への直接的な支援であると同時に、家族機能を支えることで子どもたちの発達を促してもいるのです。
また、発達支援事業には『レスパイトケア』としての役割もあります。レスパイトとは「小休止」「休養」という意味であり、子どもと一時的に離れることで、保護者や家族が休息をとることができるのです。保護者の中には、他人に負担をかけてはならない、自分で子供の面倒を見るべきだとの思いで、子どもを預けることに消極的になる方がいます。
しかし、子どもが親と離れて活動できるようになることは、自立への第一歩であり、発達に必須の課題なのです。

地域支援(主に児童発達支援センター)

地域の保育園や放課後児童クラブなどの子どもを預かる施設を訪問し、地域で総合的に支援できるよう連携をします。医療機関、保健所、児童相談所などの専門機関との連携だけでなく、市町村が地域の実情に応じて開催している自立支援協議会などにも参加し、地域支援体制の構築に協力しています。

利用頻度や形態について

利用の頻度としては、保育園や幼稚園の代わりとして毎日通ったり、習い事のように週に何回か通って支援(療育)を受けたりすることもできます。また、午前は幼稚園に通園して午後から児童発達支援を利用するといった併行通園も可能です。

形態としては、支援者が子どもと一対一で対応する個別療育、支援者が数名の子ども達を対象に支援プログラムを提供する集団療育の形態があるほか、幼稚園のように子どもを預けて保護者は送り迎えをする場合から、親子で参加する活動プログラムを実施するために保護者の参加が必要な場合まで様々な形態をとります。子どもの状況や施設のタイプによって受けられるサービスは異なるだけでなく、保護者の就労状況などによって受けやすいサービスも異なってくるでしょう。
児童発達支援をひと月に受けられる日数には上限があります。子どもや保護者の状況や意向、地域にある機関の機能や数などをふまえて、市町村が利用内容を総合的に決定します。

児童発達支援の利用手順や料金について

児童発達支援の利用手順は概ね次の通りになります。詳細は『福祉サービス利用手順』を参照ください。

  • 市町村にサービス利用の申請をする
  • 相談支援事業所などで『サービス等利用計画案』を作成し、市町村に提出する
  • 市町村が本人らに対し、サービス利用のための認定調査をする
  • 市町村がサービスの支給内容を決定する
  • 相談支援事業所などで支給決定の内容に合わせて『サービス等利用計画』を作成し、市町村に提出する
  • 本人が児童発達支援事業所などとサービス利用の契約をする
  • 児童発達支援事業所などが、本人と『個別支援計画』を作成する
  • 児童発達支援の利用開始
  • 相談支援事業所などが児童発達支援事業所などでの支援をモニタリングする

児童発達支援を1割負担(1回、約1,000円)で利用するためには『通所受給者証』(自治体によっては『障がい児通所受給者証』など)が必要になります。受給者証は明確な診断や障害者手帳(療育手帳、身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳)がなくても、医師や児童相談所所長などの専門家から児童発達支援を利用する必要性が認められれば発行されます。その際には専門家の意見書を利用申請する際に市町村へ提出することになります。

なお、児童発達支援の料金は医療費ではなく福祉サービスにかかる費用として支払われます。そのため、多くの自治体が導入している子どもの医療費が無償になる医療費助成制度の対象とはなりません。そのため、費用は医療費に比べて割高になることがありますが、前年度の所得に応じて支払う額に上限が定められており、利用回数が多くなっても過重な金額負担は生じません。また、自治体によっては独自の減免措置が設けられている場合もあります。

支援提供の流れ  厚生労働省
障害児の利用者負担  厚生労働省
児童発達支援ガイドライン  厚生労働省

島根県内の児童発達支援

島根県では、2019年10月1日から児童発達支援等の利用者負担が無償化されました。これにより、子どもの医療費助成と同様に無償で支援(療育)を受けられるようになりました(ただし、期間は『満3歳になって初めての4月1日から3年間』です)。

島根県は県内の児童発達支援や放課後等デイサービス等の障害児通所支援事業所の一覧を公開しています。また、児童発達支援センターや児童発達支援事業(所)は、2017(平成29)年からガイドラインに基づいた自己評価を実施し、その結果及び改善内容を1年に1回以上、ホームページ等を活用して公表することが義務づけられることとなりました。児童発達支援の選択希望(※)に際しては、各事業所が公開している自己評価表を参考してもよいでしょう。

島根県内の児童発達支援の詳細はこちらを参照ください。

※障害者福祉制度は、2003(平成15)年4月の「支援費制度」の導入により、「措置制度」から「契約制度」へと制度変更されていきました。これにより、市町村などの行政がサービス内容や施設を指定していたものが、利用者が自ら選択して契約できるようになりました。基本的には利用者による自主的な「契約」による利用ですが、発達支援事業(所)などの設置場所や各施設の収容人数などによって、希望する施設との契約が難しい場合があります。この場合、相談支援事業所と相談しながら現実的な選択をしていきましょう。

就学前障がい児の発達支援の無償化について  島根県
障害児通所支援事業所一覧  島根県
児童発達支援及び放課後等デイサービスの自己評価等について  島根県