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診療科の違い

「子どもの様子が気になるから病院にかかりたいけれども、実際どの診療科にかかったらよいのかわからない」そのような疑問をお持ちの保護者は少なくありません。中には「どの診療科にかかってよいのかわからないから、とりあえずたくさん診療科がある近くの総合病院に行ってみよう」と、総合病院や大学病院を受診される方もお見えになります。しかし、そのような行動が地域の医療体制を圧迫させることがあります。
そこで、この記事では診療所、総合病院、大学病院などの医療機関ごとの役割、各診療科の違いについて解説し、子どもの受診先について説明します。また、診断を受けることの意義についても触れていきます。

かかりつけ医を持とう

法令などでは定義されていませんが、一般的に医療機関は下記の通りに分類されます。

  • 1次医療機関:外来診療によって患者の医療を担当する医療機関。かかりつけ医、日常生活での軽度のけがや病気に対する医療を提供する診療所など。
  • 2次医療機関:入院治療を必要とする重症患者の医療を担当する医療機関。地域の中核的病院、専門性のある外来や一般的な入院医療を行う病院。
  • 3次医療機関:2次医療機関で対応できない、脳卒中、心筋梗塞、頭部損傷や複数の診療科領域にわたる重篤な患者に対応する医療機関。高度医療や先端医療を提供する病院。
各医療機関の役割

https://www.mhlw.go.jp/houdou_kouhou/kouhou_shuppan/magazine/2019/02_01.html より

軽度の怪我や病気で総合病院や大学病院にかかると、一般的な外来に時間を割かれて専門性のある外来をする余裕がなくなったり、地域の中核病院に重篤な状態にある患者を受け入れる病床が不足してやむなく他自治体の病院へ搬送されたりしてしまいます。結果、地域の中核病院が地域住民の健康を守ることができなくなってしまうのです。事実、他県では地域住民が診療所ではなく総合病院を受診したり、軽微な病気でも総合病院を受診したりすることが原因で、中核病院の小児科が閉鎖せざるを得ない状態に陥ったことがあります。この事例では、地域の母親たちがネットワークをつくって相互に助け合うことで小児科閉鎖をまぬかれました。 厚生労働省は「『いのちをまもり、医療をまもる』国民プロジェクト」にて、国民にかかりつけ医を持つことを勧めています。

かかりつけ医(1次医療機関)は、子どもの頃から受診することで成長を通じて状態を把握してくれます。また、総合病院や大学病院のような異動はほとんどないので、顔なじみのお医者さんに子どもが安心して受診することができます。また、地域に根差しているために、子どもが通う学校について詳しい先生もいます。 「子どもの病気がかかりつけ医の先生の専門じゃなかったらどうしよう」と心配しなくても大丈夫です。そのような状況では、医師は専門の医療機関に紹介をしてくれます。 「紹介されるなら、最初から紹介先の病院を受診したらいいんじゃないの?」と意見がありますが、紹介状なしで特定の病院を受診すると5,000円(税抜き)の『選定療養費』が診察費に上乗せされてしまいますが、紹介状を持参すると『選定療養費』は免除されるため、非常に経済的です。

発熱や体調不良などがあるが、病院を受診するほどなのかわからない場合には、『医療電話相談』を活用してみましょう。保健師などの専門家が電話を受けて子どもの状態を確認し、医療受診の要否を検討してくれます。有料の会員登録により、医師と相談できるサービスを提供している企業もあります。

●かかりつけ医を持つことについて
賢い患者になろう 上手な医療のかかり方 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/houdou_kouhou/kouhou_shuppan/magazine/2019/02_01.html
県立柏原病院の小児科を守る会
http://mamorusyounika.com/
健康のために・・・あなたのそばにお医者さん 島根県
https://www.pref.shimane.lg.jp/medical/kenko/iryo/byouin-shinryosho/kakarituke_Dr.html

●選定療養費制度について
外来時の負担について 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000179591.pdf
外来受診のご案内(初診) 島根大学医学部附属病院
https://www.med.shimane-u.ac.jp/hospital/syoshin-saishin/graiju_shoshin_.html

●子ども医療電話相談(#8000)について
Part2:子どものための医療機関の選び方と症状別対応法 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/houdou_kouhou/kouhou_shuppan/magazine/2019/02_01.html
島根県子ども医療電話相談(#8000)事業について 島根県
https://www.pref.shimane.lg.jp/medical/kenko/iryo/shimaneno_iryo/8000/

診療科ごとの専門分野

子どもがかかる診療科は小児科であることはおおよそ想像できますが、発達障害に関しては小児科なのか精神科なのかわかりづらいものです。また、神経内科や心療内科という診療科もあり区別がつきません。
小児科が何歳まで受診可能かについては厳密な規定はありません。慣習的に15歳までを受け入れる小児科が多いようですが、小児科の先生によっては、高校を卒業するまで、成人するまで、と制限年齢はまちまちです。
各小児科が設ける年齢制限に従って決める他にも、子どもが『小児科』の受診を恥ずかしがるかどうかで、内科に切り替える時期とする家庭も多いようです。

各診療科の特徴は以下のようになります。

小児科

子どもの病気でお世話になるところですが、小児神経専門医がいる病院や発達外来が設けられている病院があります。行きつけの小児科があれば、発達障害の診察も行なっているかを確認してみても良いでしょう。いつも行き慣れている病院であれば子どもも不安に感じにくいかもしれません。

精神科・児童精神科

うつや統合失調症、不安障害など、心が原因で起きている精神的な症状を中心に診療するところです。児童精神科は基本的に15歳以下の子どもを対象とした精神科で、成人を対象とした精神科よりも子ども特有の症状に専門的な知識をもった医師が対応してくれる病院です。

神経(内)科・小児神経(内)科

パーキンソン病や認知症、高次脳機能障害など、脳や脊髄、筋肉など神経の異常に起因する身体的症状を中心に診療するところです。問診の他に脳波検査や血液検査等を行い、総合的に診断をしてくれています。小児神経内科においては、主に痙攣や脳性麻痺、脳・神経・筋など各種の発達を専門にしています。

心療内科

心身症や胃潰瘍、ぜんそく、過呼吸など、ストレスなど心理的要因による身体的症状などを中心に診療するところです。心理的、社会的な要因によって体に支障をきたしてしまったときに受診する場合が多く、例えば「学校に行こうとするとお腹が痛くなる」といった症状がそれにあたります。心療内科というと精神科よりも軽い症状の人が行くところというイメージがあるかもしれませんが、身体症状が強い場合に受診するところと考えた方が良いでしょう。

  小児科 精神科 神経(内)科 心療内科
対象年齢 概ね15歳まで 全年齢
※児童精神科は概ね15歳まで
全年齢
※小児神経(内)科は 概ね15歳まで
全ての年齢
内容 子どもの病気をみるところ。子どもの総合医ともいわれています。
小児神経や小児外科の専門医がいる病院や発達を専門にする外来を設けている病院もあります。
心が原因で起きている精神的な症状を中心に診療するところ。
児童精神科は成人を対象とした精神科よりも子ども特有の症状に専門的な知識を持った医師が対応してくれます。
脳や脊髄、筋肉などの神経の異常に起因する身体的症状を中心に診療します。
小児神経(内)科は、脳、神経、筋などの発達を専門に診察します。
ストレスなどの心理的な要因によって生じている身体症状を中心に診療します。
気持が落ち込むなどの精神的な症状よりも、寝られない、胃が痛いなどの体の症状が強い場合に受診します。
疾患例 一般的な小児の病気、発達障害 うつ、統合失調症、不安障害、発達障害 パーキンソン病、認知症、痙攣、脳性麻痺、発達障害 心身症、胃潰瘍、ぜんそく、過呼吸

小児科がそろそろはずかしいと思ったら 独立行政法人環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/sukoyaka/50/medical/medical05.html

島根県内の発達障害を診察する医療機関

島根県内で発達障害を診察する医療機関は下記のサイトで検索することができます。
ただし、子どもと成人を含めており、掲載情報も限定的です。まずはかかりつけ医に相談し、専門の医療機関受診の検討や適切な医療機関への紹介をしてもらいましょう。

島根県医療機能情報システム 
http://www.mi.pref.shimane.lg.jp/shimane/ap/qq/men/pwtpmenult01.aspx
トップページ→医療機能から探す→精神科・神経科→発達障害(自閉症、学習障害等)の順で検索

国立研究開発法人国立成育医療研究センター
http://www.ncchd.go.jp/kokoro/kyotenmap.php
子どもの心の診療 機関マップ→「島根県」を指定し「発達の問題」と「療育関連」で条件検索

診断をうけることについて

発達障害の診断を受けることで以下のような支援を受けられるようになります。

薬物療法が適応される

当然のことながら、疾患が認められなければ薬物療法は適応されません。
どんなに忘れっぽく、怒りやすい傾向があっても、性格や一時的なものであると判断されれば、薬物療法の適応とはなりません。
忘れっぽくて社会生活上の規則を履行するのが難しい、イライラしてしやすいためについ周囲を威嚇してしまい孤立しているなど、社会生活上に著しく問題をきたしている現在の状態が、何らかの病気によって生じているのであれば、お薬の力を借りて改善するのも一つの方法です。薬物療法の詳細はこちらを参照ください。

各種障害者手帳を取得できる

発達障害と診断された場合に障害者手帳を取得することができます。知的障害が併存していれば療育手帳が、発達障害のみであれば精神障害者保健福祉手帳が発行されることが一般的です。障害者手帳を取得することで、医療費の助成を受けることができたり、公共料金や交通運賃の割引、時には所得税や住民税などの各種税金が軽減されたりすることがあります。つまり、障害があることでかさむ医療費への助成だけでなく、生活を維持するためにかかる費用への負担も軽減してくれるのです。各種障害者手帳についてはこちらを参照ください。

一方、診断を受けることで生じるデメリットもあります。その典型が、保険への加入があげられます。
がん保険は、現在がんを発症していなければ発達障害の有無に限らず加入は可能なようですが、一部の保険では加入が難しくなったり、掛け金が高くなったりすることがあるようです。ただし、これらは服用している薬の有無、二次障害を併発しているかどうかい大きく左右されることが少なくないようです。
このことからも、発達障害は二次障害に以降するのを防ぐためにも、早めに対応や支援を受ける体制を整えることがいかに必要なのかが分かります。

「発達障害と診断されたら保険に入れない」これって本当?  ファイナンシャルフィールド
発達障害だと保険に入れない…?審査結果発表  キクエスト

合理的配慮と福祉サービスは診断がなくてもよい

色覚障害があり重要な箇所を赤色チョークで強調されても区別がつかないため、赤色チョークで書くのではなく波線を引いて強調するようにした書字障害があるためにタブレットPCを使った文字入力を学校に許可してもらったなど、障害によって生じている問題に対して、必要な配慮を講じてもらうことを「合理的配慮」と言います。合理的配慮を受けるために、診断は必須ではありません。また、一般的に療育と言われている『児童発達支援』や『放課後等デイサービス』などの福祉サービスも、診断は必須ではありません。ただし、診断がなく合理的配慮や療育などの支援を受けるためには、どのような状態でどのような困りごとが生じているのかを客観的に示さなければなりません。

合理的配慮についてはこちらを参照ください。