乳幼児健診・就学時健診
母子保健手帳が交付されると、1か月健診、3~4か月健診、5~6か月健診…6歳児検診のページが設けられているのに気づきます。出生すると毎月、毎年のように健診があるようです。さらには子どもが小学校に入る際に『就学時健診』なるものもあり、「こんなに健診って必要なの?」という声も聞こえてきます。
この記事では幼児健診と就学時健診ではどのようなことをするか、そして、なぜ必要なのかについて解説し、健診後の対応について説明していきます。
なお、乳幼児『健診』は『健康診査』を略したもの、就学時『健診』は『健康診断』を略したものです。『検診』は特定の病気かどうかを診察することであり(例:乳がん検診)、『健診』とは目的が異なります。
乳幼児健診とは
母子保健法に基づいて実施されます。母子保健法第12条では次のように定められています。
市町村は、次に掲げる者に対し、厚生労働省令の定めるところにより、健康診査を行わなければならない。
・満一歳六か月を超え満二歳に達しない幼児
・満三歳を超え満四歳に達しない幼児
上記は一般的に「一歳半健診」と「三歳児健診」と呼ばれており、自治体が実施をしなければならないという意味において『法定健診』と言われることがあります。
なお、上記以外の対象者については同法第13条に「前条の健康診査のほか、市町村は、必要に応じ、妊産婦又は乳児若しくは幼児に対して、健康診査を行い、又は健康診査を受けることを勧奨しなければならない。」と定められており、自治体は地域の小児医療機関に個人健診として委託したり、自治体主導で集団検診を実施したりして、定期的な乳幼児健診体制を整えています。
乳幼児健診は全国的にも高い受診率を維持しており、島根県も毎年9割以上の方が健診をうけています。
島根の母子保健(平成27年) 1-2妊婦・乳幼児健康診査 島根県
乳幼児健診の歴史
以前の日本では乳幼児の死亡率はとても高く、大正時代の記録では新生児1,000人あたり約150人が亡くなっていました。同時に、妊産婦の死亡率もとても高く、早急な対策が必要でした。1937(昭和12)年に保健所法が制定され、保健所の主要な事業に『妊産婦及び乳幼児の衛生に関する事項』が定められ、母子に対する衛生指導が重要施策となりました。翌年1938(昭和13)年に厚生省が設置され、生後1、2か月から1歳2、3か月までの乳幼児に対する一斉検診と、育児の指導が行われ、1940(昭和15)年には、新生児1,000人あたりの死亡率は100人へと改善していきました。1942(昭和17)年には、のちの母子手帳となる『妊産婦手帳』が制定され、当時は医療者のみが管理していた保健管理情報を妊産婦自身にも管理させることで、妊産婦の母子衛生の意識が大きく改善したのです。
終戦後の1947(昭和22)年に児童福祉法が制定され、母子保健対策も児童福祉法に位置づけられることとなり、妊産婦と乳幼児の保護者に対する妊娠、出産、育児についての保健指導の実施、乳幼児の健康診査の実施、生活困窮者に対する保健指導に要する費用の代負担などが制度化され、母子衛生に関する対策が拡大充実していきました。
1965(昭和40)年になると、母子保健をさらに充実する必要性から、母子保健に関する単独法の必要性が叫ばれ、母子保健法が制定されることになりました。翌年の1966(昭和41)年には『母性・乳幼児の健康診査および保健指導要綱』が示され、乳児健康診査が次々に制度化されることになりました。1975(昭和50)年には新生児1,000人あたりの死亡率は10.0となり、以降、一桁になりました。
当初は乳幼児、妊産婦の高い死亡率を改善する目的で整備されていった乳幼児健診も、時代の流れとともに新たな目的を果たしていくようになります。
乳幼児や妊産婦の死亡率が改善した一方で、平成に入って少子高齢化、核家族化、女性の社会進出、虐待問題など母子保健を取り巻く状況は変化し、2000(平成12)年に策定された『健やか親子21』では、乳幼児健診はこれまでの『母子保健対策』から『育児支援』へと移り変わっていきます。これに伴い、乳幼児健診に携わる職種も、乳幼児の身体、口腔の健康を評価する医師、歯科医だけでなく、2001(平成13)年度からは、育児相談に応じる心理相談員や親子のグループワークを担当する保育士も配置されるようになりました。
このように乳幼児健診は子育て世代の健康増進と支援が図られるよう、社会情勢に応じて整備されてきました。乳幼児健診は病気を調べる『検診』や具合が悪いときに受ける『診察』のようなものではなく、国民の健康を守るためのものなのです。
わが国の妊産婦死亡率(出産10万対)の年次推移 厚生労働省
母子保健関連施策 厚生労働省
日本の母子健康手帳のあゆみ 厚生労働省
乳幼児健診の時期と目的
1か月健診
母乳やミルクの飲み具合、へその乾き具合、黄疸がある場合はそれが消えているか、心臓の雑音の確認、モロー反射(大きな物音など外部から刺激があったとき、両腕を急に伸ばして何かにしがみつくような動き)の様子などをみます。母乳の場合、ビタミンKが不足することがあります。ビタミンK欠乏症は突然の頭蓋内出血につながることもあるため、ビタミンKシロップを勧められることがあります。
子育ての不安が最も高くなる時期です。産後うつや育児不安を防ぐためにも、保護者の不安や困りごと、身近な支援者を確認します。
3~4か月健診
法定健診ではないですが、多くの自治体が集団検診として4か月健診を実施しています。
首がすわっているか(頭が垂れずに自分で動かせる)、見えないところから声をかけて反応できるか、眼でものを追うことができるかなどを確認します。
首がすわることで子どもを連れて外出しやすくなるため、親子で集える場所の情報提供がされます。また、乳幼児揺さぶられ症候群やSIDS(乳幼児突然死症候群)についても情報提供され、事故防止についての指導がなされます。
6~7か月健診
寝返りや支えがなくてもひとりで座ることができるかなどを確認し、身体的な発達を調べます。また、おもちゃに興味を示して手を伸ばそうとするか、家族に声をかけるようなしぐさがあるかを確認することで精神的な発達も調べます。離乳食の状況についても聞き取りが行われ、栄養状態を確認します。
9~10か月健診
つかまり立ち、はいはいを確認して運動機能をみます。つかまり立ちやはいないなどの運動の様子が眼に入ることで、ほかの子どもと比較してしまい、発達の不安が高くなる時期です。保護者の不安や悩みについても聴取します。徐々に歯が生えてくる時期であり、歯磨きについて確認や指導がなされることがあります。
一人で移動できるようになるため、誤嚥や誤飲などの事故について情報提示と指導がなされます。
1歳児健診
ひとりで立つ、つたい歩きをするなどの運動機能の確認と、「おいで」「ちょうだい」などの簡単な指示に応じられるかを確認して社会性をみます。食事や睡眠の状況を確認し、生活のリズムが整っているかをみます。
1歳半健診(1歳6か月児健診)
母子保健法で自治体に実施が定められている法定健診で、保健所(保健センター)などの施設を借りて集団で行われることがほとんどです。
乳児期から幼児期に移行する時期であり、乳児期の発達が定着しているかをみていきます。
心臓の音、腸内の動き、皮膚、視力、聴力、運動機能の発達などを確認するほか、歯科検診を実施し、虫歯を予防するためにフッ化物を塗布します。認知面の発達をみるために、物の名前を理解しているか、「ワンワン」「まんま」などの一語文があるか、指差しで相手に伝えることができるかなどを簡単な道具を使って観察します。
2歳児健診
走る、スプーンの使用などの運動機能、ごっこ遊びや模倣遊びから認知能力をみます。言語能力として、2歳頃からみられるようになる「わんわん、きた」などの2語文を観察します。歯が生えそろう時期でもあり、自治体によっては虫歯を調べる歯科検診が推奨されることもあります。
2歳になると『魔の2歳期』と呼ばれるイヤイヤ期が始まります。「自分でやる!」「思い通りにならないからキライ!」など、子どもの様子にイライラしてしまうものです。一人でため込まずに健診で相談しましょう。
3歳児健診
母子保健法で自治体に実施が定められている法定健診で、保健所(保健センター)などの施設を借りて集団で行われることがほとんどです。
視力や聴力の検査、運動機能、言語、精神の発達の確認を丁寧にしていきます。友達遊び、家族以外の人との関わりができるようになり、社会性が備わっていきます。対人交流場面や社会的規則に従う場面での様子を聴取し、社会性の発達について確認します。
4歳児健診以降
法定健診としては3歳児検診が最後の健診となり、4歳以降は自主的な健診となります。そのため、地域の診療所に行き健診を受けることがほとんどです。
一部の自治体では満4歳児に対する『年少健診』、満5歳児に対する『年中健診』として、希望者に対して幼稚園などの集団場面で健診を行うことがあります。というのも、この時期には軽度発達障害の問題が出現することが多く、集団場面での様子を確認することで適切に評価できるからです。
乳幼児健康診査事業実践ガイド 厚生労働省
健診・発達相談等の実際(5歳児健康診査) 厚生労働省
乳幼児健診受診の流れ
法定健診とされる1歳半健診と3歳児健診は自治体が、保健所(保健センター)などの施設を借りて集団で行います。多くの自治体は4か月健診も集団健診として実施しています。
子どもの月齢が乳幼児健診日に近づくと、市町村からお知らせが届きます。指定された日時と場所に行き、健診を受けます。費用は無料です。
法定健診以外の健診は『任意健診』と呼ばれ、地域の小児科医療機関で受けることができます。母子健康手帳に記載されている月齢に合わせて、医療機関に健診の予約を取りましょう。母子健康手帳交付時に市町村から配布される『乳児一般健康診査受診票』を利用することで、無料で健診を受けることができます。『乳児一般健康診査受診票』は2枚あり、1歳の誕生日の前日まで使用できます。2回を超える健診の費用は、約3,000円~5,000円の自費負担となります。
里帰り出産のため島根県外の医療機関で健診を受ける場合には、県内自治体が費用を負担するための『乳児健康診査受診票』が利用できません。この場合、申請により払い戻しが可能です。印鑑、診療明細書、乳児健康診査受診票、母子健康手帳、金融機関の口座番号がわかるものなどを持参して市町村役場に申請しましょう。申請に必要なものは自治体に確認しましょう。
健診日には母子健康手帳と状況に応じて『乳児一般健康診査受診票』を持参しましょう。その他の持ち物として、バスタオル、水分などが自治体により指定されることがあります。乳幼児健診のお知らせや市町村のホームページ、自治体の窓口に確認しましょう。
※下記のURLは令和2年度末の情報のため、年度がかわって参照できない場合があります。
最新の情報は各自治体のURLを参照ください。
乳幼児健診 松江市
令和2年度母子保健事業予定表 安来市
乳幼児健診等のご案内 出雲市
子どもの健診(乳幼児健診) 大田市
乳幼児健診を受ける際に
乳幼児健診を受けるに際しては、事前に母子健康手帳に子どもの様子を書き込んでおきましょう。母子健康手帳には各時期の子どもの様子を「はい」「いいえ」で簡単にチェックできる保護者観察欄が設けられています。乳幼児健診を受ける前に記載しておくと、こどもの様子を振り返ることができ、健診当日に効率よく相談できるようになります。また、健診がスムーズに進むようにもなり、子どもの負担も軽減されます。
乳幼児健診は病気を診断するためのものではなく、母子の健康を守るためのもの、増進するためのものです。法定健診は必ず受け、法定健診以外も定期的に受診をしましょう。
母子健康手帳副読本を発行している公益財団法人母子衛生研究会では、乳児期は毎月、1歳以降は3か月に1回程度の受診が理想としています。
健診で問題を指摘されたらどうなるの?
乳幼児健診の目的は、母子の健康と発達の維持、促進にあります。
母子の健康と発達を損なう状況にある場合には、専門家による指導や情報提供、医療機関や相談機関の利用を勧められることがあります。
例えば、体重増加が不良の場合、保健師や栄養士から保健指導や栄養指導、情報提供がなされます。また、股関節脱臼、皮膚の問題、虫歯など、明らかに治療が必要な状態に対しては、医療機関の受診を勧められます。発達障害が疑われる場合には、子どもの状況に応じて医療機関の受診や児童発達支援センターなどの利用が勧められます。
明らかな問題を認めないものの、経過観察が必要であると判断される場合、必要に応じて市町村が主催している親子教室や子ども集団療育の利用を提案されたりすることがあります。
就学時健康診断とは
就学時健康診断は、次年度に初等教育を受ける子どもたちに対して行われる心身の健康を確認するための健康診断です。
学校保健安全法の第11条に以下の通り定められています。
「市(特別区を含む。以下同じ。)町村の教育委員会は、学校教育法第17条第1項の規定により翌学年の初めから同項に規定する学校に就学させるべき者で、当該市町村の区域内に住所を有するものの就学に当たって、その健康診断を行わなければならない。」
また、同法12条には健診結果に対して
「市町村の教育委員会は、前条の健康診断の結果に基づき、治療を勧告し、保健上必要な助言を行い、及び学校教育法第17条第1項に規定する義務の猶予若しくは免除又は特別支援学校への就学に関し指導を行う等適切な措置をとらなければならない。」
と定めています。
就学時健康診断は、市町村教育委員会が学齢簿を作成し、入学通知を行う就学事務の一環として行うことが義務づけられています。法文には、保護者に受検の義務は記載されていませんが、乳幼児健診に引き続き児童期に入る子どもの心身の状況を把握するためにも必ず受診しましょう。
就学時健康診断の目的
公益財団法人日本学校保健会によると、就学時健康診断には次のような目的があるとされます。
1.子どもとその保護者が、子ども本人の健康に関する認識と関心を深める。
これまでの乳幼児健診では、主に保護者が子どもの健康情報を管理していました。就学時健康診断では、こども本人が自身の健康状態を把握することがポイントとされます。
2.病気や異常がないかを調べ、適切な治療や支援につなげる
一般的に乳幼児健診は、法定健診といわれる3歳健診で終了となる自治体がほとんどです。3歳児以降の幼児健診は任意であるため、この期間に生じた病気や異常は見逃されてしまう危険性があります。就学時健康診断では、内科検診、歯科検診、視力、聴力検査などを実施しています。例えば、歯科検診で虫歯がみつかれば、就学までに歯科医院にて治療するよう促します。
3.健診結果は就学先の判断材料、就学後の支援の資料として活用する
就学時健康診断で得られた疾病や障害に関する情報や事前に就学相談(後述)にて得られた情報は、就学先を決める際の判断材料となります。
このことは検査に異常がみつかったとしても進路が強制的に決定されるということではありません。子どもの状態と就学先の学校状況(人員、校内環境など)を総合的に判断するための材料に活用されるということです。
就学時の健康診断マニュアル平成29年度改訂 公益財団法人日本学校保健会
就学時健康診断の内容
就学時健康診断の検査項目は、学校保健安全法施行規則の第3条に定められており、就学時検診当日には以下のような健康診断が実施されます。不安になりやすい子どもには、以下のようなことが行われることを事前に知らせておくとよいでしょう。
・視力検査:『C』(正式名称:ランドルト環)の隙間がある方を答えます。
・聴力検査:音が流れるヘッドフォンをして、音が流れたらスイッチを押します。
・歯科検診:歯医者さんが小さい鏡をお口に入れて虫歯がないか調べます。
・内科検診:お医者さんがお腹や背中を見て骨や筋肉が丈夫かを調べます。
・知能検査※:クイズに答えたり鉛筆を使って絵を描いたりします。
※知能検査の形態は自治体によって様々です。簡単な応答や道具を使った操作ができるかを一人ひとりに実施したり、集団知能検査を実施したりする自治体もあります。
就学時健康診断の流れ
一般的に、就学する前年度の10月頃に、市町村から就学時健康診断日程通知書が送付されます。11月中に、校区ごとで就学時健康診断を実施します。市町村から届いた通知書に記載されている各校区の開催日時を確認しましょう。予定が合わない場合、事前に市町村の教育委員会に連絡すると、開催日の異なる別校区で就学時健康診断を受けることができます。当日、体調不良などで、受検ができなくなった場合にも、市町村教育委員会に連絡しましょう。別日の就学時健康診断を受けることができます。
就学時健康診断に必要な持ち物は、市町村から送られてくる通知書に記載されています。一般的に保護者用、児童用の上履き、就学通知書、筆記用具などが必要となります。必ず通知書を確認しましょう。
会場は、就学予定の小学校で行われることがほとんどです。典型例を下記に紹介します。
平日の午後、子どもと一緒に就学予定の小学校へ行きます。一般的に体育館に集合となります。就学時健康診断当日は、幼稚園は午前中で終了になります。幼稚園から園服のままお越しいただいてもかまいません。内科検診があるため、服をめくりやすい園服のほうが好都合でしょう。
体育館に集まった皆さんに「小学生になる君たち、保護者様へ」ということで、小学校の校長先生からお話があるかもしれません。しっかりお話を聞きましょう。
聴力、視力、歯科、内科の種類ごとに、教室が設けられています。効率よく健診が進むよう、事前に分けられたグループごとに健診の順番が指定されます。係の人に従って該当の教室に移動しましょう。
集団知能検査を実施する自治体では上記の健診終了後、係の人に連れられて子どもたちだけで教室へ移動します。保護者は体育館で待機し、その間に市の保健師が『児童期の生活や発達で気を付けたいこと』を講演することがあります。
検査を終えた子どもたちが体育館で待つ保護者のもとに帰ってきて、就学時健康診断は終了です。
就学時健康診断や就学相談などの内容がまとめられ、入学する学校が1月31日までに通知され、1月下旬頃に入学説明会があります。
就学相談を活用しよう
子どもが小学校に入学する際の不安は、障害種の有無に関わらずどの保護者でも抱くものです。市町村教育員会が開く『就学相談』では、小学校入学前に学校関係者と保護者とで子どもの様子を共有し、小学校に入学して教育を受けるにあたって必要な支援や教育的ニーズを一緒に検討していきます。これにより、就学後の具体的な支援が実施可能となり、高い教育効果が期待できるとされます。就学相談に参加することで、就学先の学校が一方的に決定されることはありません。
就学相談には、市町村教育員会の指導主事や心理職などの専門家が対応します。就学希望の小学校で通級を利用できるのか、特別支援学級は設けられているのかなどの教育環境や子どもの発達について総合的に相談することが可能です(学校と学級の種類についてはこちらを参照ください)。
就学相談は乳幼児健康診査や就学時健康診断のように事前通知はなく、申込制となります。希望者は市町村教育委員会に申し込みましょう。自治体によっては、通っている幼稚園が取りまとめていることがあります。
就学相談は5月頃に開始する自治体が多く、年度初めの早い時期に申し込み締め切りになります。就学相談を検討している方は、市町村教育委員会に開催日時を確認しましょう。
就学相談では、まず、就学に関する保護者の希望や不安を聴取します。
「やや知的にゆっくりだが、幼稚園での友達が多いので一緒の教室で勉強したい」
「そわそわ落ち着きがなく、授業中に立ち歩いてしまうかもしれない」
その後、子どもの成育歴やこれまでに支援を受けていればその内容を共有し、どのような支援があれば学校生活を送れるか、教育的ニーズは何か、それらを入学予定となる学校で提供可能かなどを一緒に話し合います。面談は複数回実施されることもあります。
進学を希望される学校や学級は事前に見学ができることもあります。是非、就学相談で尋ねましょう。
就学相談・就学先決定の在り方について 文部科学省
就学相談、教育相談の場 島根県
お子さまの就学のために 島根県教育委員会
就学支援シートを活用しよう
家庭、幼稚園、支援機関での支援の工夫が小学校に入学しても継続して実行されることで、子どもは安心して学校に通うことができるようになります。
一部の自治体では、障害の有無に関わらず、就学する全ての子どもを対象に、家庭、保育所、幼稚園などでの様子や必要な支援をまとめる『就学支援シート』の作成を推奨しています。一般的に、まず保護者が自治体ホームページからダウンロードするか、設置されている幼稚園などから就学支援シートを入手します。保護者シートは家庭で記載し、園シートは幼稚園などに記載を依頼します。記載後、両シートを保護者が取りまとめ、入学先の学校に提出します。提出された就学支援シートの内容を参考に学校生活や学習に関する支援を検討していきます。ただし、支援員などの人的支援を保障するものではありません。
島根県では一部の自治体で、就学支援シートや相談支援ファイルが活用されています。例えば、出雲市では『出雲市子ども支援ファイル』が作成されています。市町村窓口に問い合わせが必要です。
なお、就学支援シートには定められた様式はないため、他の自治体の就学支援シートを活用してもよいでしょう。
相談支援ファイル(益田市版) 島根県
相談支援ファイル「ぐんぐんファイル」(海士町版) 島根県
就学シートとは 東京都調布市の例
発達障害と健診
乳幼児健康診査と就学時健康診断には誤解が多いものです。しかし、これまで説明した通り、乳幼児健康診査も就学時健康診断も『健康を守る』ことが目的であり、病気を診断したり進路を決定したりするものではありません。『健康を守る』ためには、病気を未然に防いだり、病気が悪化する前に適切に処置したりすることが必要になります。例えば、歯磨き習慣を身につけることで虫歯は予防されますし、初期の虫歯を早めに治療することで悪化を防ぐことができます。
発達障害でも同様のことが言えるでしょう。乳幼児の早期に子どもの特性をつかみ、例えば親子教室に参加することで発達障害による社会性困難を改善することができますし、多動衝動があっても教育環境を整えることができれば、学習困難に陥ることは解消されます。
発達障害者支援法の第5条には、母子保健法に規定する健康診査と学校保健安全法に規定する健康診断を行うにあたり、「発達障害の早期発見に十分留意しなければならない」と明記されており、発達障害でも健康は保障されるシステムがあるのです。