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障害者手帳

障害者手帳については「自分の障害は対象になるの?」「どんなメリットがあるの?」といった質問から、「取得すると『障害者』とみなされ、将来の選択が狭まるのでは?」との誤解まで、様々な声を耳にします。
この記事では障害者手帳の種類や申請方法など基本的事項をおさらいし、障害者手帳を取得することで生活はどのように変わるのかを解説していきます。

障害者手帳とは

障害者手帳は『身体障害者手帳』『療育手帳』『精神障害者保健福祉手帳』の3種類の手帳を総称した一般的な呼称です。
各障害者手帳の根拠となる法律、交付主体、対象となる障害、等級の違いなどは次表のようになります。障害者手帳によって根拠となる法律は異なりますが、どの手帳でも障害者総合支援法の対象となり、福祉サービスや税制優遇など様々な支援が受けられます。

障害者手帳

上表:障害者手帳 厚生労働省

身体障害者手帳について

身体障害者手帳は、身体の機能に一定以上の永続的な障害があると認められた場合に交付される障害者手帳です。
身体障害者手帳の等級には1級から6級までがあります。7級の身体障害レベルもありますが、7級の障害単独では障害者手帳の交付対象とはなりません。7級以上の障害が2つ以上重複すると6級相当となり、身体障害者手帳の交付対象となります。

身体障害者障害程度等級表 厚生労働省

身体障害者手帳制度は、身体障害者福祉法に基づき、都道府県、指定都市又は中核市において障害の認定や交付の事務が行われています。身体障害者手帳の交付申請は、都道府県知事、指定都市市長又は中核市市長が指定する医師の診断書・意見書、身体に障害のある方の写真を用意し、近くの福祉事務所または市役所にて行います。 本人(15歳未満は保護者が申請)が申請をし、下記のものが必要になります。

  • 身体障害者手帳交付申請書、再交付申請書
  • 指定医師による診断書
  • 写真(上半身・正面・1年以内のもの・サイズ:タテ4cm×ヨコ3cm)
  • 印鑑
  • 個人番号及び申請される方の身元の確認ができる書類

身体者障害者手帳について(様式のダウンロード) 島根県 申請から手帳発行までの流れ 島根県

身体障害者手帳に必要な診断書は、指定医師が所定の様式に従って作成した診断書でなければなりません。通院した医療機関が指定医でない場合には、紹介状を書いてもらい適切な医療機関へ紹介してもらいましょう。
※障害のある身体部位を診療する医師であれば、基本的に指定医となります。つまり、視覚障害で身体障害者手帳を申請する場合は、最寄りの眼科医にかかれば指定医条件を満たすことがほとんどです。

身体障害者福祉法15条指定医 島根県

原則、更新はありませんが、医療の進歩やリハビリ訓練のほか、成長に伴って障害の程度が変化することが予想される場合には、再認定が実施されることがあります。通常、手帳交付から1~5年の期日となり、期日が近くなると通知書が届きます。通知書に従って診断書を再提出しましょう。
障害状態が一時的なものではなく『永続的な状態』を認定要件としているため、乳幼児期には認められないこともあります。その場合、医師や保健所のソーシャルワーカーと相談し、申請の時期を検討するとよいでしょう。

療育手帳について

療育手帳は知的障害があると判定された人に対して交付される障害者手帳です。18歳未満の場合は児童相談所、それ以上の場合は知的障害者更生相談所などが判定機関となります。
療育手帳制度は身体障害者手帳の「身体障害者福祉法」、精神障害者福祉保健手帳「精神保健及び精神障害福祉に関する法律」の様に根拠となる法律はなく、判定基準や運用方法などは各自治体で定められています。そのため自治体によって手帳の大きさや表紙が異なるだけでなく、名称や等級名・区分も異なることがあります。 例えば、東京都は「愛の手帳」と呼ばれ、下記の4区分の名称で判定をしています。

1度 最重度
2度 重度
3度 中度
4度 軽度

なお、厚生労働省の「療育手帳制度の概要」では、以下の区分名を使用しています。

【重度A】

○知能指数が概ね35以下であって、次のいずれかに該当する者

  • 食事、着脱衣、排便及び洗面等日常生活の介助を必要とする。
  • 異食、興奮などの問題行動を有する。

○知能指数が概ね50以下であって、盲、ろうあ、肢体不自由等を有する者

【それ以外B】

○重度Aのもの以外

療育手帳制度の概要 厚生労働省
療育手帳制度について 厚生事務次官
療育手帳制度の実施について 厚生省児童家庭局長
療育手帳の程度 大田市

療育手帳の申請窓口は、各市町村の障害者福祉担当課になります。具体的な手続方法はお住まいの市町村の担当窓口に問い合わせましょう。
申請時には下記のものが必要になります。

  • 療育手帳交付等申請書
  • 写真(上半身・正面・1年以内のもの・サイズ:タテ4cm×ヨコ3cm)
  • 印鑑

療育手帳について 島根県
療育手帳申請・届け出一覧 島根県

療育手帳の申請には、身体障害者手帳や精神障害者福祉保健手帳のように医師の診断書は不要です。ただし、療育手帳交付の判定を受けるためには、知能検査の受検や成育歴などの聴取が必要になります。 島根県では、18歳未満の児童は児童相談所で、18歳以上は心と体の相談センターか児童相談所で実施をします。市町村に交付申請(再判定を含む)をした後は、検査などの日時を調整するために児童相談所(もしくは、心と体の相談センター)に連絡をしましょう。

療育手帳の交付を受けるためには 島根県

療育手帳の対象障害である知的障害は、成長やライフステージの変化に伴って変化することがあり、更新のための再判定が必要になります。再判定の時期は療育手帳に記載されていますが、2~5年ごと、小学校入学や中学校進学の時に、など自治体によって異なります。また、再判定の時期に従わずとも、障害の状態が変わったと思われる場合にはいつでも再判定を受けることができます。 なお、島根県では2016(平成28)年から療育手帳の再判定が簡略され、本人や付き添い者の負担が軽減されるようになりました。

療育手帳再判定の簡略化 島根県

精神障害者福祉保健手帳

精神障害者保健福祉手帳は、精神疾患や精神障害のために日常生活又は社会生活への制約がある方に交付される障害者手帳です。
精神障害者福祉保健手帳を取得することで、その他の障害者手帳と同様に様々な福祉サービスや税制優遇などを受けることができます。
精神障害者保健福祉手帳の等級は、精神疾患の状態と能力障害の状態の両面から総合的に判断され、1級から3級まであります。
申請は、市町村の担当窓口を経由して都道府県知事又は指定都市市長に行います。詳しくは、お住まいの市町村の担当窓口にお問い合わせください。

精神障害者福祉保健手帳をご存じですか(県内担当窓口) 島根県

申請の際には以下のものが必要になります。

  • 精神障害者保健福祉手帳申請書
  • 添付書類(ア、イのいずれか)

(ア)医師の診断書(初診日から6ヶ月以上経過した時点で作成されたもの)
(イ)精神障害を支給事由とする障害年金等を現に受けていることを証明する書類の写し
(年金証書、年金裁定通知書、直近の振込通知書等。但し個人番号を活用した情報連携により年金関係情報を把握する場合には添付不要)、及び同意書

  • 写真(上半身・正面・1年以内のもの・サイズ:タテ4cm×ヨコ3cm)
  • 印鑑
  • 個人番号及び申請者の身元確認ができる書類

精神障害者保健福祉手帳について(様式のダウンロード) 島根県

申請に必要な診断書は、初診日から6か月以上経過したものでなければなりません。一過性(一時的)の精神症状ではなく、固定的な精神疾患や障害であることが取得条件であるためです。また、精神障害者保健福祉手帳には2年間の有効期限があります。更新は有効期限の3か月前から申請が可能です。その際に必要な書類は新規申請の場合と同じです。

知的障害や発達障害の子どもでは療育手帳を取得することが多いようです。知的障害のない発達障害の子どもでは、精神障害者保健福祉手帳を取得する場合が多いようです。療育手帳では知能検査による知能指数が加味されることが多く、知的障害を伴わない(知能指数に著しい低下のない)場合には取得が難しくなることがあるのです。自治体によっては発達障害の特例として、一定以上の知能指数であっても療育手帳の発行することがあります。

身体障害者手帳や療育手帳に比べて、精神障害者保健福祉手帳は利用できる福祉サービスは多くはありません。発達障害の場合、精神障害者保健福祉手帳に加え等級の軽い療育手帳を同時取得される方もいます。

障害者手帳で受けられるサービス

障害者手帳を取得することで受けられる主なサービスには以下のようなものがあります。
これらはほんの一部であり、障害者手帳の種類や等級によって助成内容や利用範囲が異なりますので注意しましょう。また、障害者手帳は申請から交付まで時間がかかることが一般的です(1か月以上かかることも)。サービスを受けたい時期に合わせて、計画的に障害者手帳を申請することが重要です。

○医療費の助成

障害者の医療費の一部を助成する制度です。例えば、身体障害者手帳1級を取得していると、自己負担額は『医療費(保険適用部分)の1割』になります。都道府県や市区町村が行っており、地域によって対象となる障害の程度や助成の内容などが変わります。詳細な内容は自治体に確認しましょう。

福祉医療の助成 島根県
福祉医療費助成制度 出雲市

助成対象は保険適用部分になります。そのため入院が必要となった場合、保険適用外の個室や差額ベッド代はそのまま請求されることになります。知的障害があるために個室を利用したい、発達障害による混乱で病院備品を破壊してしまった、などに備えて、障害者が加入できる医療保険もあわせて利用してもよいでしょう。

生活サポート総合保障制度 一般社団法人全国知的障害者生活サポート協会
ASJ保険 一般社団法人日本自閉症協会

○自立支援医療

先の医療費助成制度が、金銭的負担の軽減による福祉の増進を目的としていたのに対し、自立支援医療制度は「心身の障害を除去・軽減するための医療について、医療費の自己負担額を軽減する公費負担医療制度」です。自立支援医療費の受給者を受け付けることができる指定自立支援医療機関を受診すると、その医療費に対して補助されます。世帯の所得状況や疾病に応じて1か月の負担上限額が設定されます。
対象となる疾患や必要書類については各自治体に確認をしましょう。

自立支援医療の概要 厚生労働省
自立支援医療とは(制度説明、各市町村の窓口など) 島根県
指定自立支援医療機関 島根県

自立支援医療は以下の3つに大別され、更生医療は身体障害者手帳の取得が条件となっています。

更生医療(18歳以上の身体障害者)

身体障障害者の障害を軽減したり除去したりするための医療で、日常生活活動を回復または向上させる可能性が認められる場合に適用されます。身体障害者手帳の取得が条件になります。

自立支援(更生医療)18歳以上対象 松江市の例
自立支援医療(更生医療) 浜田市の例

育成医療(18歳未満の身体障害児)

身体に障害のある児童が、障害を軽減するために行う手術などの医療費の一部を公費により負担する制度です。

自立支援(育成医療)18歳未満対象 松江市の例

※乳幼児等医療費助成制度や子ども医療費助成制度について

子どもの医療費助成制度には、都道府県や市町村が単独で行っている乳幼児等医療費助成制度や子ども医療費助成制度があります。自治体によって年齢や入院・外来かで負担金額が変わりますが、多くは無料で医療を受けることができます。
子どもの医療費補助制度にて医療費の減免を希望される方は、各市町村から「乳幼児等医療費受給資格者証」の交付を受け、支払いの際に医療機関等の窓口に提示してください。
島根県・市町村単独医療費助成事業の自己負担限度額一覧(令和3年1月~) 島根県
子ども医療費助成制度 大田市の例

精神通院医療

精神通院医療 継続的な精神医療が必要な病状にある方に対し、通院にかかる費用の一部を公費により負担する制度です。精神疾患・精神障害や、精神障害のために生じた病態に対して、病院又は診療所に入院しないで行われる医療(外来、外来での投薬、デイ・ケア、訪問看護等が含まれます)が対象となります。

自立支援医療(精神通院医療)の概要|厚生労働省 (mhlw.go.jp)
自立支援医療(精神通院医療)について 厚生労働省
自立支援医療(精神通院)受給者証の申請・更新について 出雲市の例
自立支援医療(精神通院医療) 浜田市の例

補装具、バリアフリー費用の助成

車いす、義肢、歩行器、補聴器などの補装具の購入費用や修理費用を補助します。 また、家の階段に手すりを付ける、玄関の段差を解消するなどのバリアフリーにかかる費用を補助します。

税制優遇

障害者手帳の種類や等級によって変わりますが、障害者手帳の取得により所得税、住民税、自動車税などの減免措置を受けることができます。親が亡くなり、子ども達の助けになる相続税や贈与税も特例を受けることが可能です。
税金控除は障害者本人だけでなく、障害者を扶養している方(同一生計配偶者又は扶養親族が障害者)にも適応されます。
自動車にかかる税金(自動車取得税、軽・自動車税など)の軽減は、原則、障害者が所有する自動車1台に対して発生します。
申請手続きは各市町村の担当課に確認をしましょう。

障害者控除 国税庁
障害者と税 国税庁
障害者控除対象者認定書の発行 安来市の例
所得税・住民税の障害者控除対象者の認定について 浜田市の例
自動車税の減免 島根県

公共交通機関の割引

障害者手帳を提示することで公共交通機関である鉄道やバス、旅客船などの運賃割引サービスを受けることができます。等級により本人だけでなく介護者も対象となる場合があります。割引制度を実施している事業者とその詳細は各事業者に確認が必要です。

バス・電車及び旅客船の運賃割引 島根県
障害者手帳で行こう! 島根県の交通機関の障害者割引 一般社団法人シシン

公共交通機関ではないタクシーや飛行機、高速道路の利用料金も割引を受けることができます。サービスによっては事前に市町村に申し込みが必要にあります。

有料道路における障がい者割引制度についてのご案内 NEXCO西日本

その他の割引

障害者手帳を取得することで、下記のような割引を受けることができます。内容や申請方法については、各社に問い合わせください。

  • NHK放送受信料
  • 携帯電話会社の料金割引サービス
  • 美術館、博物館、動物園などの入場料割引 など

障害者手帳で行こう! 島根県の障害者割引 一般社団法人シシン

就労に関する様々な支援

障害者手帳を取得することで、様々な就労支援も受けることができます。
例えば、「障害者雇用促進法」に基づく企業の障害者採用枠で採用試験を受けることができ るため、就職や転職の可能性や選択肢が広がります。企業側としても、一定割合人数の障害者雇用をすることで助成金が支給されるため、雇用者にも労働者にも利点があります。
また今後の就労にむけて、職業訓練支援、就職活動支援、定着支援などを、ハローワークや地域障害者職業センターをはじめとする専門機関から受けることもできます。
障害者に対する就労支援についてはこちらを参照ください。

各種手当

下記の各種手当は、障害者手帳の取得が必須ではありませんが、自治体によっては提示を求められることがあります。

  • 特別児童扶養手当
  • 障害児福祉手当
  • 特別障害者手当
  • 心身障害者福祉手当重度心身障害者手当
  • 心身障害者医療費助成

各種手当の詳細についてはこちらを参照ください。
特別児童扶養手当・特別障害者手当・障害児福祉手当について 島根県

障害者手帳に関する正しい理解を

障害者手帳に関してよく生じる誤解や偏見に次のようなものがあります。

療育手帳は『療育』を受けるために必要

療育手帳は障害者手帳の一種です。行政が提供している療育をうけるにあたって療育手帳の有無は問われません。また、一般的に療育と言われる『児童発達支援』や『放課後等デイサービス』などを受けるときに必要なのは『通所受給者証』(自治体によっては『障がい児通所受給者証』など)になります。

障害者手帳を取得すると障害者としての人生選択しかできなくなる

療育手帳を取得していても、普通学校の普通学級に通うことができます。
各種障害者手帳を取得していても、障害者枠以外で就職活動をしても問題ありません。
障害者手帳の取得を学校や企業に伝えなければならないということもなく、進路選択、学校や企業への報告は本人の自由となっています。
また、障害者手帳はいつでも返納可能です。取得すると生涯にわたって障害者であるということではありません。

健常者には障害者手帳に関する知識は不要である

障害者雇用促進法に定められている通り、企業は障害者雇用に取り組むことで様々な助成を受けることができます。逆に、定められた法定雇用率を満たさなかった場合には、障害者雇用納付金を納めなければなりません。
このことからも、障害者手帳に関する理解は障害者にのみに課せられるものではなく、(いわゆる)健常者にも必須の知識と言えるでしょう。

参考文献
渡部伸 障害のある子が将来にわたって受けられるサービスのすべて 自由国民社 2019
渡部伸 まんがと図解でわかる障害のある子の将来のお金と生活 自由国民社 2020