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てんかん

てんかんとは?

てんかん発作は、よく「脳の電気的嵐」に例えられます。私たちの体を構成する細胞にはすべて電気的な流れがあり、脳の神経細胞も規則正しいリズムで電気的に活動しています。しかしてんかん発作は、この穏やかなリズムが突然崩れて、激しい電気的な乱れが生じることで起こります。この「電気的嵐」は、脳波検査によって確認することができます。
てんかんの有病率は、100~200人に1人と言われていて、どの年齢でも起こり得ますが特に小児と高齢者に多いです。

てんかんの主な症状の「発作」とは?

発作には、脳の一部分が過剰興奮して始まる「部分発作」と、両側の大脳半球が同時に過剰興奮する「全般発作」に分けられます。部分発作では意識消失は起こらない一方で、全般発作ではほとんどの場合意識消失が起こります。てんかん発作の大部分は、通常数分以内に自然に終わります。しかし発作が反復もしくは持続すると、てんかん重積状態に陥ってしまいます。

てんかんの主な症状の発作とは

公益財団法人日本医療機能評価機構 より
https://minds.jcqhc.or.jp/n/pub/3/pub0116/G0000623/0005

てんかんの分類は?どのようなタイプがあるの?

てんかんには、先に示した発作型の分類とは別に、症候としての分類があります。ここでは局在関連性てんかん(発作が大脳の一部分から始まる)と、全般てんかん(発作の始まりに両側大脳半球が関与)に大きく分けられ、さらに発作を引き起こす原因によって、特発性(原因が不明)と症候性(原因が明らか)に分けられます。

局在関連性てんかん
  • 病因は不明(多くは素因性)
  • 好発年齢がある
全般てんかん
  • 発作の始まりに両側大脳半球が関与する
特発性
  • 病因は不明(多くは素因性)
  • 好発年齢がある
  • 小児後頭葉てんかん
  • 中心、側頭部に棘波をもつ良性小児てんかん(Rolandてんかん)
  • 読書てんかん
  • 小児欠神てんかん
  • 若年欠神てんかん
  • 若年ミオクロニーてんかん
  • 覚醒時大発作てんかん
  • など
症候性
  • 脳の先天奇形、脳腫瘍、脳血管障害、神経変性疾患(アルツハイマー型認知症など)のような器質性病変が原因
  • 側頭葉てんかん
  • 前頭葉てんかん
  • 頭頂葉てんかん
  • 後頭葉てんかん
  • など
  • West症候群
  • 乳児重症ミオクロニーてんかん(Dravet症候群)
  • Lennox-Gastaut症候群
  • ミオクロニー欠神てんかん
  • 進行性ミオクローヌスてんかん
  • など

てんかんの概要(出現部位と病因をもとに分類)

てんかんの診断方法は?

診断は発作型とその他の臨床症状を総合して行います。

  • 問診:発作のタイプを聴きます。本人の意識がない場合は目撃者から聞きます。
  • 脳波:発作症状の病歴に見合う脳波所見が見られれば確定診断となります。
  • MRI:脳の病変部位を確認します。
  • 血液・尿検査:てんかん発作は、先天性代謝異常や脳炎のような中枢神経の感染症が原因となることもあるため、原因検索のため行います。

てんかんのさまざまな治療法

70~80%の患者さんでは何らかの薬物療法で寛解に至りますが、残る20~30%は難治に経過します。いずれの場合でも治療は長期にわたるため、生活の質を損なわないような薬剤の選択・調節をしていきます。

発作の治療(慢性期)

誘因のないてんかん発作が初めて起きたときは、発作の再発の可能性が高い場合以外は治療を開始しません。通常は2回目以降の発作で治療を考慮します。(2回目の発作を起こす確率は50%以下にすぎないため)

  1. 薬物療法
    まず単剤から治療を行っていきます。それでも発作が抑制されず、2~3種類の単剤治療を行っても奏功しなければ、外科治療や多剤併用を考慮します。
  2. 外科治療
    発作の完治を目指す切除手術と、発作の減少を目指す緩和手術があります。
  3. その他
    食事療法(ケトン食)や、迷走神経刺激療法などがあります。
  • 抗てんかん薬は眠気やふらつき、気分の変化などさまざまな副作用をきたすことがあります。
  • 抗てんかん薬の多剤、高用量投与は、胎児の奇形のリスクが増加します。挙児希望女性に対しては、可能であれば単剤投与とし、奇形の予防として葉酸の補充を行います。
  • 抗てんかん薬は体内で一定量を保つことが治療上重要であり、規則的な服薬が必要です。急な中断はてんかん重積状態を招く可能性があります。

てんかん重積状態(急性期)

30分以上持続する発作、または反復する発作の間30分以上にわたって意識が回復しない状態を、てんかん重積状態といいます。
まず気道・呼吸・循環の確保を行った後、抗けいれん薬の静注を行います。それでも改善しない場合は、全身麻酔薬を使います。(発作が長く続くと低酸素脳症をきたす恐れがあり、体内の酸素のモニタリングを行うことが望ましいため)

てんかんと間違われやすい疾患って?

不安発作-過換気症候群

若年女性に好発し、ストレスなどが原因で頻呼吸とそれに伴う呼吸困難が出現します。両手足のしびれや、全身けいれんと区別のつかないような激しい発作に陥ることもあります。不安の除去など対症療法を行います。

転換性障害(ヒステリー)

精神面でのストレスが神経症状としてあらわれ、てんかん発作と酷似したけいれんや意識障害がみられます。精神療法が有効となります。

一過性脳虚血発作

脳の血流が低下することで脱力やしびれが出現しますが、その症状は数分~十数分で改善します。動脈硬化や微小脳塞栓が原因で、脳梗塞の一歩手前と考えられます。

心原性失神

房室ブロックなどの心臓の病気が原因となり、脳に十分に血液が送られず、意識消失することがあります。

その他のてんかんに類似する発作

上記以外に意識障害を引き起こすものとして、起立性低血圧、排尿失神、糖尿病性昏睡、脳炎、髄膜炎、薬物中毒などがあります。またけいれんを引き起こすものとして、低カルシウム血症、子供に見られるチック障害、くも膜下出血などもあります。

てんかんの原因って?

症候性てんかんの主な原因として、周産期異常(胎児仮死、低酸素、分娩外傷など)、先天奇形、頭部外傷、脳腫瘍、脳血管障害、代謝異常、結節性硬化症、Sturge-weber症候群などがあります。20歳以降の発症は症候性が多く、特発性てんかんが30歳以降に初発することは稀です。

てんかんと発達障害の合併

てんかん発作が抑えられず慢性化すると、脳の機能が障害を受けます。特に小児では、1/3の患者で自閉スペクトラム症(ASD)や、注意欠如多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)などの、精神や学習の発達障害を生じることがあります。そのため、保育園や幼稚園、学校の先生は、てんかんのある子どもに発達障害がみられる場合もあることを考慮した上で、その子どもの特性を充分に理解して適切な支援を行うことが必要です。

てんかんで障害者手帳を取得するには?

長期にわたり日常生活や社会生活に制約のある人が対象となり、精神障害者保健福祉手帳を取得することができます。この手帳は、てんかんのある人が一定の障害状態にあることを証明するもので、福祉サービスの利用や各種減税制度の適用を可能にする証書でもあります。発作の種類や頻度によって障害等級が判定され、それぞれの等級に合った自立支援や日常生活の支援を受けることができます。申請先は市区町村役所の障害福祉課で、主治医診断書、写真(4×3cm)、申請書、同意書が必要です。

目の前でてんかん発作が起こったら?

てんかん発作は突然起こりますが自然に終息し、発作そのものが命に関わることはほぼありません。もし周りの人がてんかん発作を起こしても、騒ぎ立てないよう、冷静になりましょう。また発作は止めようとして止まるものではないため、体をゆする、大声をかける、叩く、押さえつける、などの行為を行っても意味がありません。発作中は注意深く観察し、すぐに救急車を呼ぶ必要はありません。

いざという時の周りの対処法

発作によって本人や周囲に危険が及ぶ場合は介助が必要となります。

①大きなけいれん発作が起きた場合

  • 火、水、高い場所、機械のそばなど、危険な物・場所の近くから遠ざけ、本人が怪我をしないように気を配る(頭の下にクッションを入れる等)。
  • 衣服の襟元をゆるめ、ベルトをはずす。
  • 眼鏡、ヘアピンなどけがをする可能性のあるものをはずす。

自動症が起きた場合

  • 本人には意識がないため、無理にその行動を制止しようとはせず、一定の距離を保ちながら観察し、周囲に危険なものがあれば取り除く。

転倒発作が起きた場合

転倒発作では急に崩れるように倒れるなど、通常に倒れる時とは違って身をかばうことが全くできないため、日常的に周囲の人が注意しておく必要があります。

  • 転倒発作が繰り返しおきている期間には、眼の届かない場所に一人にしない。
  • 歩行するときはできるだけ手をつなぐ。
  • 保護帽を着用する。

また、以下のようなときは医師による処置が必要なため、救急車を呼びましょう。

  1. けいれんのあるなしに関わらず、意識の曇る発作が短い間隔で繰り返す。
  2. 発作と発作の間で意識が回復していない状態のまま繰り返す。
  3. 1回のけいれん発作が5分以上続き止まらない。

てんかん発作の予防策

服薬を規則的に守り、中断しないことが重要です。また過労や睡眠不足、風邪など生活面に気を付ける工夫も必要です。さらにてんかんの治療には、周囲の協力も大きな助けとなるため、周囲の人たちがてんかんについて正しく理解し、どのような発作が起こり、どう対処すべきかなどを知っておくことが望ましいです。

参考文献
てんかんについて 日本てんかん協会
https://www.jea-net.jp/epilepsy
てんかん 脳神経外科疾患情報ページ
https://square.umin.ac.jp/neuroinf/medical/501.html
てんかん情報センター 静岡てんかん・神経医療センター
https://shizuokamind.hosp.go.jp/epilepsy-info/question/faq8-2/
家庭でのサポート、動画で見る「小児のてんかん」解説 てんかんinfo
https://www.tenkan.info/commentary_movie/child/