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自閉スペクトラム症について

『自閉症』と呼ばれることが多い自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder:ASD)は、1943年に初めて報告されて以来、分類や名称だけでなく、診断基準も変更されつづけています。この記事では、まず名称のおさらいをしたうえで自閉スペクトラム症とは何か、その特徴や対応方法などについて説明していきます。
なお本記事では、アメリカ精神医学会の「精神疾患の診断・統計マニュアル第5版」(DSM-V)に従って記載しています。

自閉スペクトラム症の名称の移り変わり

自閉スペクトラム症が最初に発表されたのは、1943年アメリカのジョンズ・ホプキンス大学の児童精神科医レオ・カナーによるものとされ、当時は『自閉的障害』と呼ばれていました。これはレオ・カナーによって初めて用語を使用されたということであり、自閉スペクトラム症は以前から存在していました。
翌年の1944年には、オーストリアの小児科医ハンス・アスペルガーが、自閉症の傾向があっても比較的知能水準の高い子ども達を『自閉性精神病質』という名称で報告しました。
当時は第二次世界大戦中であったこともあり、レオ・カナーとハンス・アスペルガーには交流はなかったのですが、両者が同時期に同じような症例を報告したのです。

レオ・カナーの症例は、知的能力の問題や言葉の遅れが目立った子ども達であったのに対し、ハンス・アスペルガーの症例は知的能力の問題や言葉の遅れは見られませんでした。このことから自閉スペクトラム症は以下のように分類されることが多くなっていきました。

自閉症の症状があって、

  • 知的能力の問題や言葉の遅れがある場合は『カナー型自閉症』と分類
  • 知的能力の問題や言葉の遅れがない場合は『アスペルガー障害』と分類

また、知的能力に問題はないが言葉の遅れがある場合には『高機能自閉症』という名称が使用されていたほか、以前の診断基準では自閉症障害、アスペルガー障害を含む障害を『広汎性発達障害』という名称で総括していたこともあり、自閉症という状態を巡って

  • 広汎性発達障害
  • 発達障害
  • 自閉症
  • 高機能自閉症
  • アスペルガー障害

という様々な名称が使用されていました。これにより、本人や保護者だけでなく支援者も混同してしまうことがあったのです。現在では、DSM-Ⅴに従って『自閉スペクトラム症』やそれを略した『自閉症』、または英語のAutism Spectrum Disorderを略記した『ASD』と呼ばれることがほとんどです。
自閉スペクトラム症は、その重症度だけでなく知的能力の問題があるかどうかによって問題となる行動が大きく変わります。しかし、基本となる症状は同じであり障害としては連続しているため、スペクトラム(=連続体)という用語を使用して『自閉スペクトラム症』という名称が使用されるようになりました。名称をわかりやすくまとめると下表のようになります。

診断基準 DSM-Ⅳ-TR(2000年)まで DSM-Ⅴ(2013年)
大分類 広汎性発達障害 神経発達症群/神経発達障害群
名称 ・自閉症障害*
・アスペルガー障害
・特定不能の広汎性発達障害

*状態によって以下の名称が使用されることがある
・高機能自閉症
・カナー型自閉症

・自閉スペクトラム症

自閉スペクトラム症の症状~ウィングの3つ組~

自閉スペクトラム症の症状とはいったいどのようなものでしょうか。
これを明らかにしたのが、イギリスの児童精神科医であるローナ・ウィングでした。ローナ・ウィングは自身の娘が自閉スペクトラム症であったこともあり、自閉スペクトラム症に対して鋭い観察眼と分析能力を持っており、基本的な症状には以下の3つがあると指摘しました。これは一般的に「ウィングの3つ組」と呼ばれています。

1、社会性の質的な差異

社会性は他人を意識したり、集団の要請に応じたり、集団から認められたいと思ったりするなど、人が集団(社会)を形成して維持するために必要な特質です。
人間にとって集団生活は個人で生活するよりも生存に有利であり、最近の調査では、ヒトや一部の類人猿の脳には、社会性に関係する部位があると報告され、社会性は本能的なものであると考えられています。
社会性に問題があると、例えば年上の人に敬語を使わずに話してしまう一方で、年上の人に敬語を使うようになると、親にも敬語を使ってしまう。同級生たちと会話していて関心のない内容になると、(その場にとどまって集団の雰囲気を維持するのではなく)その場を離れて自分の興味のあることをする。このように相手や集団に対して、独特な行動をしてしまうことがあります。年代別では以下のような行動がみられることがあります。

乳幼児期
  • 周囲の子どもに興味を示さず、一緒に遊ぶよりも一人で遊ぶ。
  • 指差しが少ない。指差しがあっても「●●を頂戴」の要求の指差しが多く、「あ!●●見て!!」のような感情共有の指差しは少ない。 など
児童期
  • 周囲の目や集団の雰囲気に気が付かず、自分勝手な行動をしてしまう。
  • 抱きついたり近寄ったりなど社会的に不適切な方法で人に関わってしまう。
  • 他者と共感的な関わりが難しい。関りがあってもやり取りを何往復もして発展させることが難しい。
  • 若年者と遊ぶときにハンディキャップを与えることを「不公平」と考える。相手の状況に応じた加減ができない。 など
思春期以降
  • 『友達』の基準がわからず、第三者に利用されてしまうことがある。
  • 感情や価値観を共有することが難しいため、思春期には集団の会話に入りづらい。 など

これらを自閉スペクトラム症の本人は悪気がなくやってしまうのですが、周囲からは「非常識」「失礼」「自己中心的」と捉えられてしまうことがあります。時には「わざとしている」と周囲の人を怒らせてしまうこともあるのです。
社会的な行動は本能的、自然に獲得されるだけでなく、教育や経験によって習得することもできます。そのため特に知能の高い自閉スペクトラム症の人たちは、学習や経験により社会的な行動がとれるようになる人たちがいます。しかし、それでも一般的な人たちがごく自然に社会的な行動をとれるようになっていくのと異なり、かなり意識的にしなければならず、集団にいるだけで強く緊張してしまうことがあるようです。

2、コミュニケーションの質的な差異

コミュニケーションの側面には相手に伝える『表出』と受け取ったものがわかる『理解』があり、方法には言葉や文字を使った『バーバルコミュニケーション』と仕草や表情などを使った『ノンバーバルコミュニケーション』があります。また、コミュニケーションが適切に成立するには以下の点も重要になります。

言語行為
  • 依頼する、質問するなどの言語行為が状況に適切か。例えば、自分より知識のある専門家に『教える』という言語行為は失礼に当たる。
会話の協力
  • 知識のない初心者に対して専門用語を使って説明する
  • 相手の質問に応じず、自分が興味のあることだけを伝える
文脈との関連付け
  • コミュニケーションの状況を考慮せずに話したり理解したりする(「お風呂のお湯を見てきて」と言われて見て蛇口を止めずに帰ってくる)

これらが損なわれると、やり取りはできていてもコミュニケーションが成立していなかったり、ずれたりしてしまい、周囲から「空気が読めない」「わかっているのにわざとやっている」と摩擦が生じてしまいます。
なお、自閉スペクトラム症のコミュニケーション問題の本質は、言葉の遅れではなく『独特の方法』であるため、一般的なコミュニケーションと比較した『質的な差異』という表現になります。年代別では以下のような行動がみられることがあります。

乳幼児期
  • 発語の開始が遅れることが少なくない。発語があっても、相手とのやり取りに使用されることが少ない。
  • 相手の話したことをオウム返しする現象(エコラリア)がある。即時のエコラリア以外にもかなり時間が経ってからみられる遅延のエコラリアもある。※エコラリアは言語獲得児の幼児にはしばしば見られることがあります。
  • 「ちょうだい」と「どうぞ」、「ただいま」と「おかえり」のように役割の異なる言葉を逆転あるいは混同して用いることがしばしばみられる。
  • イントネーションや流暢な話し方に異常がみられることがある。
  • 非言語的コミュニケーションの理解が難しく、他者の視線の行方を追わない、指し示す方向を見ない。
  • 非言語的コミュニケーションにおいては、表情、視線、身振りなどを適切に用いることが困難なことがある。 など
児童期
  • 一見流暢に話し、専門用語や四文字熟語などを使用していても、意味を十分に理解せずに使用していることがある。
  • 指示を聞いているが(復唱もできるが)、内容を理解できていない。
  • どのように、なぜといった説明が苦手。
  • いわれたことをそのまま受け止めてしまう。「お風呂の水を見てきて」と依頼すると、風呂の水を見るだけで帰ってくる(湯を止めない)。
  • 教室のような大勢がいる場所では誰が誰に話しているのかわからなくなる。会話の方向性がわからないため、先生が自分に説明していることがわからない。 など
思春期以降
  • 自己表現が苦手で、自分の考えや気持ちを伝えることが難しい
  • グループ内での共通の興味や、会話の意図、暗黙のルールなどを汲み取ることが難しい。
  • 話すタイミングやリアクションがわからないなど女性特有のおしゃべりを苦手とする。
  • 相手の会話に「へぇー」と共感するよりも、「それはね・・」と正論を伝える。
  • 相手の発した言葉の中で自分の気になった部分のみに着目してしまう。そのため、会話に乗り遅れる。
  • 相手が話している途中でも他のことを話し始めるため、ひんしゅくを買ってしまう。
  • 状況に応じた適切な会話内容がわからず、今朝見た事故の話を結婚式でしてしまう。

自閉スペクトラム症の本人は「どのタイミングで会話に入ってよいかわからない…」「伝えたい内容を伝えているだけなのになぜ怒られるの?」「何かを得られるわけではない会話に参加する意義がわかりづらい」など、コミュニケーションに悩んでしまい、集団生活に苦手意識を持ちやすくなります。また、正しくできているにもかかわらず、的確にコミュニケーションができていることに自信が持てず、「会話に入れないのは自分が嫌われているから?」「何か不用意な発言をしてしまったかも」と自分を責めてしまうことさえあるようです。

3、イマジネーション(想像力)の質的な差異

具象的(直接それとわかるようなはっきりした形をもっているさま)ではなく、目の前にはない物事について頭の中で操作する力をイマジネーション(想像力)と言います。イマジネーション(想像力)によって、見えないことや頭の中になかったことにも動じずにいられるのです。
例えば、友達の手が自分の肩にあたったことに関して、「僕の肩を叩いて呼ぼうとしたのだろう」「たまたま手があたったのかもしれない」「肩についているごみを取ろうとしてくれた?」など様々な想像ができることで、「手が肩にあたる=攻撃」のように目に見える結果だけで判断して誤った行動(例:やりかえす)をせずに済むのです。

イマジネーション(想像力)に偏りがあることで、目に見えることや頭の中の想定にとらわれがちになり、考えや行動、感情などが「こうあるべきだ!」「●●なはずだ」と臨機応変に行動することが難しくなってしまいます。その他に、ある物事に強くこだわる、全体ではなく一部を極端に見る、変化のない常同的(常に同じ)な行動や思考をする、などがあり、これらはいずれもイマジネーション(想像力)の問題によって、状況を広く捉えられないことから生じています。年代別では以下のようなこだわり行動がイマジネーション(想像力)の問題としてみられることがあります。

乳幼児期
  • 手のひらを目の前でヒラヒラさせるのを見ていたり、壁を横目にして移動したりなど、ある特定の見え方に没頭してしまいます。
  • チカチカひかる掲示板は乳幼児期の子どもにとっては興味深いものですが、掲示板全体ではなく一部の電球が点滅するのを凝視していたり、繰り返される点滅パターンでも飽きずに見ていたりする。
  • ミニカーの車輪をくるくる回したり、走らせるのではなく並べたりするなど、物の全体的な機能ではない遊び方をすることがあります。
  • いつもの道順や普段のやり方が変わると不安を示す。 など
児童期
  • 急に授業が変更されると強い不安を感じる。
  • ルールを頑なに守るため、ちょっとした違反でも他人を非難する。
  • できることにこだわるあまり、課題が難しそうだとやろうとしない。
  • 段取りや方法が固定してしまうため(いつものやり方にこだわるため)、初めてのことを目にすると、何をどうしていいかわからずに固まってしまう。
  • 例えば「〇〇博士」のように、特定の知識や物事を収集しすぎる。 など
思春期以降
  • 自分のやり方にこだわってしまうため、課題の提出に間に合わなくなる。
  • 大学では、小中高のように全ての時間を授業で埋まるように履修登録してしまうため(これまでの学校生活スタイルを変えられない)、提出物が間に合わない、テスト対策ができずに多くの単位を落とす、バイトができない。 など

社会性を身につけるために周囲と共同することが多い幼少期や児童期では、自分のやり方にこだわるあまり、周囲と衝突したり摩擦が生じたりすることがあります。しかし、決められたことや普段の生活習慣を丁寧に守り、物事を深く追求することを嫌がらない性格にもつながるため、高度な思考能力や記憶力など長所となって現れることがあります。

ライフステージに応じた自閉症スペクトラム者に対する支援のための手引き 国立精神・神経医療研究センター
https://www.ncnp.go.jp/nimh/jidou/research/tebiki.pdf
e-ヘルスネット 厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-03-005.html

自閉スペクトラム症の感覚過敏と感覚鈍麻

最近の研究では、自閉スペクトラム症の人の多くに、聴覚、視覚、嗅覚などの感覚に偏りがあることがわかっています。
例えば聴覚が過敏だと、普通の声でも大きく聞こえてしまい耳が痛くなる、学校ではたくさんの女子生徒の高い声が校舎に響くので頭がガンガンするなど。
鈍感だと、集団内会話で友達が普通の声から「あのね…」とひそひそ話にボリュームを下げると全く聞こえなくなる。そのため「私には教えたくないんだ」と誤った疎外感を感じてしまう。
視覚の偏りがあると、例えば教室のカーテンが風で揺れて光がきらきらすると、目がちかちかして黒板や教科書の文字が見づらくなる。その他の感覚にも偏りがあると、

味覚:固い・柔らかい食感が口の中にあると飲み込みづらくなる、噛んでいる感覚に乏しいことであまり噛まずに飲んでしまい便秘症になる。 など

臭覚:柔軟剤、香料の臭いで酔ってしまう。 など

触覚など:人から触られると予想以上に驚いてしまったり、逆に感覚がわからず体調が悪いことがわからずかなり悪化するまで授業に出て居たり。 など

上記の通り、感覚が過敏であったり鈍感であったりすることで、一般的には何ともない刺激が痛みになったり不調につながったりしてしまいます。感覚の問題であるのを、「我慢が足りない」と責めたり、「そのうち慣れる」と不快な状態にさらし続けたりすることで、自閉スペクトラム症の本人は社会生活に強い疲労と苦痛を感じていくようになっていきます。

自閉スペクトラム症の原因は不明

自閉スペクトラム症の人の割合は、100人に1人であったり1000人に1人であったりと研究によって大きく異なりますが、一定数存在するとされており決してまれなものではありません。その原因は先天性の(生まれつきの)脳の機能異常(解剖学的・病理的な異常がないにも関わらず、臓器や器官などの働きが低下すること)によって引き起こされていると考えられていますが、いまだに明らかにされていません。

一部の自閉スペクトラム症は、胎児期の風疹感染(先天性風疹症候群)、脆弱X症候群、結節性硬化症、フェニルケトン尿症などの先天性の病気が要因であることがわかっており、これらの疾患が疑われる場合には適切な検査と治療が行われます。 なお、ひと昔前までは、自閉症の原因は保護者の不適切な養育が原因(いわゆる『冷蔵庫マザー説』)とされた時代がありましたが、1972年にイギリスの精神科医マイケル・ラターがこれを否定したのをきっかけに、現在では保護者の養育が原因であるとの見方は明確に否定されています。

自閉スペクトラム症の検査と診断

診察では、医師は保護者に子どもの『成育歴』を詳しく聞き取ります。というのも、自閉スペクトラム症の症状は発達早期に現れていなければならず、子どもの時には見られなかったのに成人になってから現れるようになった場合は、その他の疾患が疑われます。また、自閉スペクトラム症は社会性の障害なので、子どもにとっての社会生活空間である園や学校での様子も併せて聴取します。診察の際には、乳幼児期の様子がわかる母子手帳や学校の先生から学校の様子を記した文書などがあるとよいでしょう。

医師は診察室で子どもの様子を注意深く観察します。その中で子どもに質問や問題を出したり、専門的な観察技術(例えば『自閉症診断観察検査ADOS:Autism diagnostic observation schedule』)を用いたりして反応を確かめ、診断に必要な情報を見極めていくのです。
自閉スペクトラム症は血液検査や脳の画像検査などで診断することはできません。時には心理職が発達検査や知能検査を実施することがありますが、これによっても自閉スペクトラム症と診断することはできません。医師の専門的な観察と高度な発達の分析によってのみ診断が行われるのです。

なお、問診ではM-CHAT(Modified Checklist for Autism in Toddlers)、SRS-2(Social Responsiveness Scale Second Edition)、AQ(Autism-Spectrum Quotient)などの質問紙が使用されることがあります。これらの中にはインターネット上で実物を見ることができるものがあります。これらはスクリーニング(大まかな選別)が目的あり、『結果に問題がある=診断』ではありません。子どもの様子に不安を感じる場合には、インターネットからの情報だけでなく、自治体の相談事業、所属の園や学校の相談担当者に必ず相談をしましょう。

自閉スペクトラム症の治療

自閉スペクトラム症そのものは根本的な治療が難しく、多くは『治療』ではなく『支援』が重視されます。
幼児期の場合、自治体や児童発達支援事業所・センターが実施している療育(行動療法や言語療法など)により基本的な能力の底上げが有効になります。自閉スペクトラム症の子どもを大人まで追跡した多くの調査からは、幼児期(5、6歳)までに少なくともコミュニケーションに使える言葉があるかどうかによって予後は大きく異なるとされます。乳幼児健診や市の相談事業で相談し、療育を積極的に活用していきましょう。

自分で判断して行動できるようになる児童期以降では、作業工程をわかりやすくする、特別支援教育を利用するなどの環境調整や、こだわり許容するなどの周囲の協力が必要になることがあります。知能検査で知能指数(IQ)が50未満の場合には、思春期以降も緊密な支援や行政サービスが必要になる可能性が高くなります。これまで受けた支援や行政サービスをまとめておくと、児童期・思春期・成人期に移行しても切れ目のない支援を受けやすくなります。厚生労働省は切れ目のない支援を受けるために『相談支援ファイル』の活用を推奨しています。

具体的な支援方法についてはこちらを参照ください

相談支援ファイルを活用しよう

厚生労働省は、当事者が発達早期から就労まで一貫した支援を受けられるための『相談支援ファイル』を自治体が作成するよう推奨しています。保護者は自治体が作成した『相談支援ファイル』を入手し、子どもの支援状況を記録していきます。これにより、これまで受けてきた支援の状況が明確になり、新しいサービスを受ける際に地続きの支援内容が受けられること、支援者が再び状況確認や情報収集を行わなくてよくなり、保護者の説明の負担も軽減されます。

『相談支援ファイル』は自治体に作成が義務付けられておらず、自治体によって作成の状況はまちまちです。『相談支援ファイル』は地域によって『サポートファイル』や『すこやかファイル』と名称が様々であるため(松江では『サポートファイルだんだん』)、自治体や支援者の中には、『相談支援ファイル』では通じないこともあります。
基本的に記入は保護者が実施することとされていますが、保護者の依頼により関係機関が記述したものをファイルすることも可能です。しかし、自治体作成の『相談支援ファイル』の一部には、記入項目が非常に多いものがあり「書くのが手間なので話して伝えよう」と、本来の使用目的を果たせないものもあります。
『相談支援ファイル』は、居住区の自治体が作成したものを使わなければならないと規定はされていませんので、全国の『相談支援ファイル』の中から、保護者が「これなら、子どもが大きくなるまで記録できそう」と思えるものを選択することが長続きする(つまり、支援記録が途絶えない)ポイントでしょう。

ライフステージを通じた相談・支援 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/06/dl/s0610-6b.pdf
サポートファイルだんだん 松江市
http://www1.city.matsue.shimane.jp/kyouiku/tokubetushien/soudan/hattatukyouikusoudansiennsennta-esukokakusyusiryou.data/jitubutusyasinn.pdf
サポートファイルさっぽろ 札幌市
http://www.city.sapporo.jp/shogaifukushi/hattatu/documents/supportfilesapporo28.pdf
サポートファイルうらやす 浦安市
http://www.city.urayasu.lg.jp/kodomo/kosodate/joho/1000799.html