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スクールカウンセラー

子どもたちを取り巻く環境は日々変化しています。普段の授業、テスト、部活動や委員会、クラス替え、地域の方との交流、学外での活動など、毎日多くの活動や人との出会いを経験しています。
今までできなかったことが急にできるようになったり、少しずつ身体が大人に近づいていったりと、目にみえる変化がとても大きい時期です。しかし、同時に目にみえない“こころ”が大きく揺れ動く時期でもあり、昨日まで元気に登校していた児童生徒が、翌日には落ちこんでしまっていることも少なくありません。
そんな目にみえない“こころ”と向き合う専門家として、学校にはスクールカウンセラーが配置されています。この記事では、スクールカウンセラーについて説明をします。

スクールカウンセラーってなに?

スクールカウンセラーは、平成7年度から文部省(現文部科学省)の「スクールカウンセラー活用調査研究委託事業」として活動がはじまりました。文部科学省は、スクールカウンセラーの選考要件に以下のものを定めおり、学校支援に必要な知識や経験を十分に備えたものがスクールカウンセラーとして相談業務に携わっています。

  • 公認心理師
  • 公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会の認定に係る臨床心理士
  • 精神科医
  • 児童生徒の心理に関して高度に専門的な知識及び経験を有し、学校教育法第1条に規定する大学の学長、副学長、学部長、教授、准教授、講師(常時勤務をする者に限る)又は助教の職にある者又はあった者
  • 都道府県又は指定都市が上記の各者と同等以上の知識及び経験を有すると認めた者

なお、一部の自治体は独自に資格要件を設けており、上記以外の資格所有者が児童生徒への相談業務に携わることがあります。また、基本的には都道府県が管轄で都道府県内の各市町村にスクールカウンセラーを配置しますが、市町村によっては独自に予算を確保してスクールカウンセラーを配置している自治体もあります。

スクールカウンセラーは何をする人?

スクールカウンセラーは、児童生徒またその保護者の方に対しては心理学に関する専門知識を生かしながらカウンセリングやアセスメント(情報を集めて総合的に判断すること)、コンサルテーション(学校の先生やその他の専門家に対応や支援の方法を提案したりすること)を行います。また、自然災害や突発的な事件・事故が発生した際の緊急支援、児童生徒が抱える困難やストレスへの対処法の伝達、こころの教育に役立つ教育プログラムの実施などを児童生徒やその保護者に対して行っています。学校の先生に対しては発達障がいの研修を実施したり、教育プログラムの策定に助言したりするなど、学校の実情に応じて活動を展開しています。

どうやって相談すればいいの?

スクールカウンセラーは、主として教育相談コーディネーター、養護教諭、スクールソーシャルワーカーなどと協力をして、いじめ、暴力、不登校などの問題行動や、発達の問題、精神科領域の問題、家庭環境や親子関係の課題など、児童生徒が抱えるさまざまな問題の解決に向かってサポートをします。 相談方法は、児童生徒が直接スクールカウンセラーに声をかけたり、学校の先生に相談をして利用を勧められたり、あるいは児童生徒の保護者が学校に依頼したりすることでスクールカウンセリングの予約を取ることができます。詳しい相談申込方法やスクールカウンセラーの勤務日は各学校によって異なりますので、まずは学校に確認をしましょう。

スクールカウンセラーの利用には料金はかかりません。また、原則として秘密は守られ、児童生徒がスクールカウンセラーに相談した内容が学校の教員や保護者に報告されることはありません。ただし、スクールカウンセラーが職務上知り得た情報のうち、学校が児童生徒に対する指導や支援を行うために必要となる内容は学校全体で管理することが必要になるため、学校に報告する場合があります。ただし、この場合にもスクールカウンセラーは児童生徒や保護者に学校と情報共有をしてよいか同意を得るよう最大限に働きかけをします。

相談内容

スクールカウンセリングでの相談は多岐にわたります。

  • 不登校
  • 暴力行為
  • 心身の健康や保健
  • いじめ
  • 友人関係
  • 家庭環境
  • 学業、進路
  • 児童虐待
  • 貧困の問題
  • 教職員との関係
  • 発達障がい
  • など

相談内容は上記に限りません。少しでも「ちょっと心配だな」「誰かに話したい」と思った場合は、気軽に相談してみましょう。また、児童生徒への支援にあたって、他の専門機関への紹介や依頼、あるいは他の専門機関と連携をする場合があります。
主な関係機関の例は以下の通りです。

福祉関係機関 児童相談所、福祉事務所、自立相談支援機関、要保護児童対策地域協議会の所管部署、児童家庭支援センター、社会福祉協議会、放課後児童クラブ、児童館、保育所、児童福祉サービス事業所(放課後デイサービス等)、発達障害者支援センターなど
保健医療関係機関 保健センター、保健所、精神保健福祉センター、病院など
刑事司法関係機関 警察署(生活安全課など)、少年サポートセンター、家庭裁判所、少年院、少年鑑別所、保護観察所など
教育関係機関 教育支援センター(適応指導教室)、教育相談室、民間教育団体、民間教育施設、転出入元・先の学校、幼稚園など
団体 臨床心理士会、社会福祉士会、精神保健福祉士協会、弁護士会など

こんな支援をします

スクールカウンセラーに相談しても、すぐに問題が解決するとは限りません。しかし、相談に訪れた児童生徒や保護者が安心して相談できる場をつくること、子どもたちに寄り添い、子どもたちのもっている「可能性」や「力」を信じながら、今起こっている問題とどのように向き合っていくのか一緒に考え、その問題や悩みに応じて対処していくこともスクールカウンセラーの大切な仕事のひとつです。
また、相談室での相談業務に限らず、休み時間や授業参観など日常場面での声かけや関わりを通して、児童生徒の理解・援助につなげることもあります。
スクールカウンセラーの支援方法は、相談の内容や状況によって臨機応変に行われます。スクールカウンセラーの活用事例についての詳細は、以下を参照ください。

スクールカウンセラー実践活動事例集 文部科学省
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1372335.htm

スクールソーシャルワーカーとの違い

スクールカウンセラーと同様に、子どもの問題や悩みの解決に向けて支援する専門家として、スクールソーシャルワーカーという職業があります。スクールカウンセラーは、心理学に関して、高度に専門的な知識及び経験を有し、児童生徒のカウンセリングに当たる“こころの専門家”であり、児童生徒の心、内面に焦点を当てて問題解決にあたります。
一方、スクールソーシャルワーカーは、教育分野に関する知識に加えて、社会福祉分野等の専門的な知識、技術を用いて、問題を抱える児童生徒等への支援を行う“福祉の専門家”であり、問題行動等の背景にある、子どもを取り巻く環境に焦点を当てて問題解決にあたります。

スクールソーシャルワーカーについては、こちらの記事を参照ください。

島根県におけるスクールカウンセラー

島根県では平成30年度に国・県の「いじめ対策事業」の一つとして、全ての公立学校(分校を除く)にスクールカウンセラーが配置され、相談体制の拡大と充実が進められています。しかし、相談時間が長くない、学校に常駐ではないためいつでも相談できるわけではない、いじめや不登校への相談対応に強くても発達障害への支援は途上であるなるなど、まだまだ十分とはいえません。
島根県では、島根県教育庁教育指導課子ども安全支援室がスクールカウンセラーの管轄になり、平成29年には「スクールカウンセラー活用事業に係るガイドライン」を作成し、県内のスクールカウンセラーの支援体制整備をさらに進めています。

スクールカウンセラー活用事業に係るガイドライン 島根県教育庁教育指導課
https://www.pref.shimane.lg.jp/kyoikusido/index.data/scgaidorain.pdf?site=sp