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学校の種類、学級の種類

「発達障害のある長男が来年、小学校へ進学することになった。さて、どの学校に進学すべきか?」
保護者が小学生だった時とは、名称や仕組みが大きく異なっており、保護者の経験が現在の子どもに適応しにくくなっています。そのため、初めての子どもの就学に際して、戸惑う保護者は少なくないでしょう。
この記事では、学校の種類や学級の種類について説明し、どのような機能があるのか、どのように利用するのかを解説していきます。

通常学校と特別支援学校

学校教育法の第一条では、学校を①幼稚園、②小学校、③中学校、④義務教育学校、⑤高等学校、⑥中等教育学校、⑦特別支援学校、⑧大学及び高等専門学校の9種類に定めています。このうち、小学校や中学校を『特別支援学校』と対比させるように『通常(の)学校』と呼ぶことがあります。
以前は、特殊学校や養護学校と呼ばれていましたが、平成18(2006)年に学校教育法等の一部を改正する法律(平成18年法律第80号)が公布され、平成19(2007)年度からは、名称を特殊学校や養護学校は『特別支援学校』に名称が変更されました。
これは「児童生徒等の障害の重複化に対応した適切な教育を行うため」に、従来の盲学校・ 聾学校・養護学校へと分類していた制度を、「複数の障害種別を対象とすることができる」制度へ転換することが目的でした。また、これと同時に小・中学校における『特殊学級』も『特別支援学級』に改称されました。

学校教育法等の一部を改正する法律(平成18年法律第80号)の概要 内閣府
第1章 特殊教育から特別支援教育へ:文部科学省

特別支援学校の対象者と目的

特別支援学校の対象者は、学校教育法施行令第二十二条の三に、以下のように定められています。

区分 障害の程度
視覚障害者 両眼の視力がおおむね〇・三未満のもの又は視力以外の視機能障害が高度のもののうち、拡大鏡等の使用によっても通常の文字、図形等の視覚による認識が不可能又は著しく困難な程度のもの
聴覚障害者 両耳の聴力レベルがおおむね六〇デシベル以上のもののうち、補聴器等の使用によっても通常の話声を解することが不可能又は著しく困難な程度のもの
知的障害者 一 知的発達の遅滞があり、他人との意思疎通が困難で日常生活を営むのに頻繁に援助を必要とする程度のもの
二 知的発達の遅滞の程度が前号に掲げる程度に達しないもののうち、社会生活への適応が著しく困難なもの
肢体不自由 一 肢体不自由の状態が補装具の使用によっても歩行、筆記等日常生活における基本的な動作が不可能又は困難な程度のもの
二 肢体不自由の状態が前号に掲げる程度に達しないもののうち、常時の医学的観察指導を必要とする程度のもの
病弱者 一 慢性の呼吸器疾患、腎臓疾患及び神経疾患、悪性新生物その他の疾患の状態が継続して医療又は生活規制を必要とする程度のもの
二 身体虚弱の状態が継続して生活規制を必要とする程度のもの

特別支援学校は上記の状態にある児童生徒に対して「幼稚園、小学校、中学校又は高等学校に準ずる教育を施すとともに、障害による学習上又は生活上の困難を克服し自立を図るために必要な知識技能を授けることを目的」としています。

学校教育法施行令 e-Gov法令検索

通常学級と特別支援学級

特別支援学級とは、障害などの理由によって通常の学級における教育では十分な教育効果を上げることが困難な児童生徒のために設置された学級です。一人ひとりの障害の状況や特性に応じた指導や支援を、学習指導要領に沿って行うことを原則としています。
自治体によってその規模は様々ですが、1クラスの人数の基準はですが8人とされており、通常の学級の規模に比べて少人数であるため個別の支援を受けやすい体制となります。
特別支援学級は、学校によって独自の学級名を使用されることが多く、ひまわり学級、なかよし学級、ふれあい学級、あすなろ学級などの名称が使用されています。
なお『特別支援学級』と対比させるように、一般的な学級を『通常(の)学級』と呼ぶことがあります。

特別支援学級の対象者と目的

学校教育法の第八十一条では、特別支援級の対象を以下のように定めています。

小学校、中学校、義務教育学校、高等学校及び中等教育学校には、次の各号のいずれかに該当する児童及び生徒のために、特別支援学級を置くことができる。
一 知的障害者
二 肢体不自由者
三 身体虚弱者
四 弱視者
五 難聴者
六 その他障害のある者で、特別支援学級において教育を行うことが適当なもの

『六 その他障害のある者で、特別支援学級において教育を行うことが適当なもの』として、次のような障害を持つ児童生徒が対象とされます。

・言語障害
言葉を話す、聞いて理解することに困難がある児童生徒。構音障害や吃音など。
・自閉症者および情緒障害者
コミュニケーションの不得手、気持ちの表現とコントロールに困難がある児童生徒。高機能自閉症や緘黙(かんもく)、不登校の児童生徒など。

通級の目的と対象者

「通級による指導」または「通級指導教室」(以下、通級)とは、通常学級に在籍しながら利用する特別支援教育制度です。障害や困難の程度に基づいて定められた指導時間や指導内容を通級に移動して指導を受けます。基本的には1対1の個別指導になり、障害による学習上、または生活上の困難を主体的に改善、克服するための指導を行います。
通級による指導の対象となる障害は、学校教育法施行規則140条で以下の通りに定められています。

1 言語障害者
2 自閉症者
3 情緒障害者
4 弱視者
5 難聴者
6 学習障害者
7 注意欠陥多動性障害者
8 その他障害のある者で、この条の規定により特別の教育課程による教育を行うことが適当なもの

第8号の「その他」に該当する障害には、「肢体不自由」「病弱」及び「身体虚弱」が該当します。

特別支援学校や特別支援学級の対象にもなる同じ障害でも、比較的軽い状態の障害が対象になります。具体的には下記の通りです。

・自閉症者
自閉症又はそれに類するもので、通常の学級での学習におおむね参加でき、一部特別な指導を必要とする程度のもの。
・情緒障害者
主として心理的な要因による選択性かん黙等があるもので、通常の学級での学習におおむね参加でき、一部特別な指導を必要とする程度のもの。
・学習障害者
全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算する又は推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示すもので、一部特別な指導を必要とする程度のもの。
・注意欠陥多動性障害者
年齢又は発達に不釣り合いな注意力、又は衝動性・多動性が認められ、社会的な活動や学業の機能に支障をきたすもので、一部特別な指導を必要とする程度のもの。

なお、知的障害のある児童生徒は通級による指導の対象にはなっていません。というのも、知的障害の学習または生活に関する指導は、生活に結びつく実際的・具体的な内容を継続して行われる必要があるため、一定時間のみ取り出して行う通級のような形態はなじまないと考えられるためです。

通級による指導の制度的位置付け 文部科学省

“特別の教育課程”とは

特別支援学級や通級を含む特別支援教育では、学校教育法施行規則第138条にて『特別の教育課程』を組むことができるとされています。各学校の特別支援学級や通級の担任が、児童生徒の障害の種類や状態、クラスの状況に応じて授業内容を編成できるのです。
例えば、学年相応の教科内容を基本にして特別支援学校学習指導要領に示された自立活動を取り入れたり、教科の目標や内容を下学年の教科の目標や内容に替えて、自立活動を取り入れたりします。
この時に編成される“自立活動”とは、『特別支援学校教育要領・学習指導要領解説 自立活動編』に従うと「個々の幼児児童生徒が自立を目指し、障害による学習上又は生活上の困難を主体的に改善・克服しようとする取組を促す教育活動」であり、その内容は「人間としての基本的な行動を遂行するために必要な要素と、障害による学習上又は生活上の困難を改善・克服するために必要な要素で構成」され、「健康の保持、心理的な安定、人間関係の形成、環境の把握、身体の動き、及びコミュニケーションの六つの区分に分類・整理」されています。
特別の教育課程の編成においては、児童生徒の知的障害の有無によって、組み合わせ方がことなります。しかし、小学校・中学校の目的や目標など、目指すことは同じです。
都道府県の教育センターや特別支援教育センターによっては、“特別の教育課程”について、モデルを提示していることがあります。特別支援教育の利用にあたって、そのようなモデルを参考にしてもよいでしょう。

知的障害特別支援学級

知的障害特別支援学級の教育課程は、原則として小学校及び中学校の学習指導要領に基づく諸規定が適用されるが、子供の障がいの状態等から、特別支援学校(知的障がい)の学習指導要領を参考として、その内容を取り入れるなど、特別の教育課程を編成することが認められている。したがって、教育課程編成や指導法は、特別支援学校の場合と共通することも多い。そのため、知的障害特別支援学級においても、教科別の指導のほか、各教科等を合わせた指導を取り入れている。

自閉症・情緒障害特別支援学級

人とのかかわりを円滑にし、生活する力を育てることを目標に指導を進めている。自閉症・情緒障害特別支援学級は、小学校及び中学校に設置されていることから、教育課程は、原則的に は小学校又は中学校の学習指導要領による。しかし、対象とする子供の実態から、通常の学級に おける学習だけでは十分に学習の成果を上げることが困難であることから、子供に応じて学校教育法施行規則第138条に基づき特別の教育課程を編成することができる。この場合、特別支援学校の学習指導要領を参考とし、内容を取り入れて教育課程を編成することができる。 なお、情緒障がいのある児童生徒の場合、心理的な要因による不登校等のために、学習空白が 生じていることがあることから、各教科の内容を下学年の内容に替えたり、基礎的・基本的な内容を重視して焦点化したりするなどして適切な指導を行うことが重要である。

福島県特別支援教育センター 『特別支援学級とは』より

特別支援学校学習指導要領等(平成29年4月公示・平成31年2月公示) 文部科学省
各障害種別の教育支援資料 文部科学省
特別支援学級の教育課程について悩んでいませんか? 島根県教育センター
特別支援学校学習指導要領解説 自立活動編 文部科学省
自立活動って何だろう? 島根県教育センター
初めて通級による指導を担当する教師のためのガイド 文部科学省

様々な“特別支援教育”が子どもの学びを支援

特別支援学校、特別支援学級、通級などの特別支援教育体制は、子どもの学びを支えるために相互に協力しあっています。
例えば、特別支援学級に在籍をしても、通常学級の子どもたちと同じ教室で授業を受ける時間があります。同じように、特別支援学校に在籍していても、通常学校の児童生徒と活動を共にすることがあります。これを交流学級や共同学習と言います。つまり、特別支援学校や特別支援学級に在籍しているからということで、同級生との交流を限定されることはないのです。
2018年の段階で、全国の公立の小学校と中学校の約8割が特別支援学級を設置していますが、学校規模や生徒の人数によっては特別支援学級や通級を設置できないところがあります。子どもが通学する学校に特別支援学級や通級の体制が整っていなくても、近隣の学校へ行って支援を受けることができたり、特別支援学校などの特別支援教育を担当する教員が、子どもが在籍する学校を巡回して指導をしたりします。
また、特別支援教育支援員を配置し、通常の学級で支援を受けることもできます。特別支援教育支援員については こちらを参照ください。

特別支援教育について 画像

パンフレット「特別支援教育」について 特別支援教育(前半) 文部科学省 より

日本の特別支援教育の状況について 文部科学省
交流及び共同学習ガイド 文部科学省
「通級による指導の教育形態」 島根県の通級による指導の充実のために 島根県教育庁特別支援教育課

特別支援教育を卒業してからの進路

特別支援教育を受けている児童生徒たちが義務教育である中学校を卒業してからの進路にはどのようなものがあるのでしょうか。毎年報告される学校基本調査では、下記の進学先が報告されています。

・高等学校等進学
・専修学校
・公共職業能力開発施設
・就職
・その他

令和2(2020)年度の報告では、公立中学校の特別支援学級に在籍する23,309人の生徒の進路実績として、高等学校など進学が21,993人、うち、特別支援学校へ進学した生徒は約45%の10,600人となっており、中学校の特別支援学級に在籍していた生徒の半数ずつが高校進学と特別支援学校に進学しています。なお、就職した生徒は194人となっています。

学校基本調査 令和2年度 初等中等教育機関・専修学校・各種学校 卒業後の状況調査 政府統計の総合窓口

中学校の特別支援学級に在籍する生徒の多くは高等学校に進学していますが、特別支援学級を設置する高等学校は多くはありません。
学校教育法では、小学校、中学校だけでなく高等学校にも障害に応じた特別支援学級を置くことができると明記されています。しかし、高等学校は義務教育ではないこと、受験によって入学することなど、生徒が任意で学力に応じて入学するため、特別支援学級を設置する学校が多くはないのです。そのため、中学校の特別支援学級で受けていたような支援を高校入学後にも求めることが難しくなります。
自治体によっては、公立高校に特別支援学級や通級、またはこれに類似のコースなどを設けるところがあります(例えば、東京都の『チャレンジスクール』や大阪府の『自立支援コース』など)。そのような高等学校を進路に選択することで、中学校までの支援を受けやすくなるでしょう。

高等学校における特別支援教育の現状と課題について 文部科学省
高等学校における「通級による指導」について 島根県教育庁特別支援教育課
これまで設置してきた多様なタイプの学校 東京都教育委員会
平成18年度府立高等学校における知的障害のある生徒の教育環境整備方針 大阪府教育委員会

高校の進路選択にあたって注意すべきこと

特別支援学級の評価方法について

全日制高等学校への入学試験にあたっては、内申書の提出が必要になることが一般的です。内申書には9教科の評定を5段階で算出した“内申点”が記載されており、内申点は中学校の学習指導要領に沿って評定されます。
特別支援学級では中学校の学習指導要領と特別支援学校の学習指導要領を組み合わせて特別の教育過程を編成できるため、場合によって内申点で評定できないことがあり、高校への受験を制限されることがあります。
ただし、自治体によっては中学校の特別支援学級に在籍していても内申点の評定を希望することができるところがあるほか、内申点の評定がなくても入学試験に影響しない高校があります。

特別支援学校高等部卒業で大学受験は可能か?

基本的に、特別支援学校高等部を卒業しても高校卒業の資格を得ることはできません。特別支援学校では自立活動を含んだ授業を行うため、通常の高校と履修した単位数が異なるためです。
特別支援学校の高等部を卒業しても高校卒業の資格は得られませんが、大学を受験することは可能です。これは、学校教育法施行規則に、大学入学の資格について下記の通り定められているからです

・高等学校又は中等教育学校を卒業した者(第90条第1項)
・特別支援学校の高等部又は高等専門学校の3年次を修了した者(第90条第1項)

大学入学資格について 文部科学省

特別支援教育の利用方法

利用を申請する時期として①小学校に入学する時(就学相談)、②入学してから(教育支援委員会)、があります。

①小学校に入学する時(就学相談)
就学時健康診断の結果をもとに、市町村の教育委員会は地域の教育体制、専門家の意見などを総合的に判断し、子どもにとってより適当な就学先を決定し、これを保護者へ通知します(就学時健康診断についてはこちらを参照ください)。決定は絶対的なものではなく、保護者は市町村教育委員会に意見をすることができます。
例えば、教育委員会が就学先に特別支援学校を決定しても、保護者の意見が『通常学校への入学希望』であれば、特別支援学校への入学ではなく通常学校となります。ただし、学校教育法施行例には「本人・保護者の意見を最大限尊重し、教育的ニーズと必要な支援について合意形成を行うことを原則とし、市町村教委が最終決定する」とあり、市町村教育委員会は、子どもの教育的ニーズや必要な支援も考慮しなければなりません。上記の例ならば『通常学校での特別支援級』が就学先として改めて決定され、保護者の合意を得られるような話し合いが行われるでしょう。
逆に、保護者が子どもに自閉スペクトラム症があって、対人関係がやや苦手であるとの理由で特別支援級を就学先に希望すれば、たとえ教育委員会が通常級を就学先に決定しても、親の希望を尊重しなければなりません。
なお、就学先の判断は教育委員会が独自に行います。そのため、障害者手帳の有無は関係ありません。

特別支援教育の概要 画像

特別支援教育の概要 文部科学省 より

②入学してから(教育支援委員会)
「小学校に通常級で入学したけれど、読み書きがとても苦手であることがわかり、特別支援級での学習の方がよさそうに感じている」「現在、特別支援級に在籍しているけれど、集団交流にも慣れ、気持ちをコントロールできるようになってきたので、通常級に籍を変えたい」など、入学してから就学環境を変更したいことが出てくることがあります。
文部科学省は「就学時に決定した『学びの場』は固定したものではなく、それぞれの児童生徒の発達の程度、適応の状況等を勘案しながら柔軟に転学ができる」としており、入学してからの変更が可能です。
このような場合、子どもが在籍する学校と就学状況の相談をし、市町村教育委員会に設置されている教育支援委員会の検討をもって転籍や転学が決定されます。

障害のある子供の就学先決定について 文部科学省
就学相談・就学先決定の在り方について 文部科学省
お子さまの就学のために 島根県教育委員会

学校・学級の種類と違い

学校や学級の一クラスごとの児童数規模や、個別の指導計画の策定の必要度、担任教諭の資格については下記の通り定められています。

通常学級 特別支援学級 特別支援学校
児童数
(1学級あたり)
40人
※1年生は35人
8人 6人
※重度重複学級は3人
個別の指導計画/
個別の教育支援計画の策定
推奨
※通級指導の対象者は策定義務あり
義務あり 義務あり
担任の免許 教員免許 教員免許
※特別支援学校教諭免許を所有していなくてもよい
教員免許

特別支援学校教諭免許

※自治体の予算により、担任以外の「加配教員」が配置されることもある

学級編制・教職員定数改善等に関する基礎資料 文部科学省