アイコン ファイル 気づく
アイコン はてな

学校の支援者

学校には担任の先生以外にもたくさんの支援者がいます。養護教諭、特別支援コーディネーター、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーなど。
この記事では、学校の支援者や支援制度について解説し、どのような役割があるのか、どのように相談するのかについて説明をします。 なお、スクールカウンセラーはこちらを、スクールソーシャルワーカーはこちらを参照ください

養護教諭とは

いわゆる保健の先生と呼ばれる養護教諭は、学校教育法第28条7項で規定されている『児童の養護をつかさどる』教育職員です。
養護教諭の主な役割に以下のようなものが挙げられます(昭和47(1972)年の保健体育審議会答申より)。

  • 児童生徒の保健及び環境衛生の実態把握
  • 疾病や情緒障害、体力、栄養に関する問題等、心身の健康に問題を持つ児童生徒への指導
  • 健康な児童生徒への健康増進に関する指導
  • 一般教員の行う日常の教育活動への協力

また時代の変化に伴い、平成9(1997)年の保健体育審議会答申では『いじめなどの心の健康問題へのカウンセリング対応』が養護教諭の新たな役割として明記されました。
なお、一般社団法人日本養護教諭教育学会では、養護教諭を以下のように定めています。

「養護教諭とは、学校におけるすべての教育活動を通して、ヘルスプロモーションの理念に基づく健康教育と健康管理によって子どもの発育・発達の支援を行う特別な免許を持つ教育職員である」

養護教諭の職務内容について 文部科学省
養護教諭とは 一般社団法人日本養護教諭教育学会

発達障害に関する養護教諭の仕事

養護学校(現在は『特別支援学校』)の名称から、特別支援教育に関わる教諭と誤解されることがありますが、一般教員のように国語、算数、社会などの教科学習を指導することはありません。ただし、養護教諭の役割に『一般教員の行う日常の教育活動への協力』があり、担任教諭や保健体育教諭と協力して健康教育や性教育などの学習指導を行うことがあります。
例えば、知的障害や発達障害がある児童生徒の性トラブルに対して、性教育を行うことがあります。また、不登校傾向にある児童生徒が保健室登校を始めたときに、保健室で見守りやカウンセリング的な対応をします(保健室登校はこちらを参照ください)。 保健・医療の専門的な知識をもつ養護教諭は、子どもの特性を担任教諭にわかりやすく伝えたり、時には、問題行動の誤解を解消するために、保護者の了承を得たうえで児童生徒に発達障害の特性について指導したりします。また、スクールカウンセラーと教諭を結び付けたり、学校と医療機関が連携するための窓口になったりもします。

参考文献

  • 中野靖子, 池添志乃 (2020). 発達障害をもつ子供を支える学校・専門機関との連携における養護教諭のわざ, 高知女子大学看護学会誌, 46(1), 59-74
  • 矢野洋子, 荒木みなみ, 猪野善弘 (2015). 発達障害の子どもへの支援に求められる養護教諭の役割Ⅰ, 九州女子大学紀要, 52(1), 57-66
  • 矢野洋子, 猪野善弘 (2015). 発達障害の子どもへの支援に求められる養護教諭の役割Ⅱ, 九州女子大学紀要, 52(2), 107-116

特別支援学校教諭免許状とは

教員の免許状には、養護教諭、小学校教諭、中学校教諭などのほかに、特別支援学校教諭免許状があります。
特別支援学校教諭免許状の教育課程では、心身に障害のある幼児や児童生徒についてその教育に係る社会的・制度的・経営的な事柄、知的障害・肢体不自由・病弱などの障害種別の生理・病理的な理解とその特別支援教育の方法、学習障害などの発達障害に関する事柄などを学習します。
特別支援学校教諭は、児童生徒一人ひとりの障害の状態をふまえて『個別の指導計画』を策定し、この個別の指導計画に則って、必要な教材や指導法を用いて児童生徒を指導していきます。指導は学習に関する問題だけでなく、生活課題や就職などの進路相談にも行われ、本人や保護者からの相談にも対応しています。特別支援学校を卒業した後も、卒業生やその保護者からの相談に応じたり、関係機関と調整しながら生活や職業の支援も行ったりします。

特別支援学校教員、特別支援学級教員 - 職業情報提供サイト 厚生労働省

特別支援学校教諭の支援を受けるためには

教育職員免許法の規定では、特別支援学校教諭免許状教諭の配置は特別支援学校にのみ定められており、通常学校の特別支援級の担任や通級指導を担当する教員には、特別支援学校教諭免許状の取得は規定されていません。
そのため、通常学校の特別支援学級に在籍している、通級指導を利用しているからと言って特別支援学校教諭から直接支援を受けられるとはかぎりません。しかし、特別支援学級や通級を担当する教員は、特別支援学校の職員派遣や相談をうけて個別の支援計画を策定したり、自立活動や授業内容を組み立てたりすることができ、特別支援学校教諭の専門的な知識を指導に生かしています。
詳しくは、こちらの『“特別支援教育”が子どもの学びを支援』を参照ください。

通常学級 特別支援学級 特別支援学校
児童数
1学級あたり)
40人
※1年生は35人
8人 6人
※重度重複学級は3人
個別の指導計画/ 個別の教育支援計画の策定 推奨
※通級指導の対象者は策定義務あり
義務あり 義務あり
担任の免許 教員免許 教員免許
※特別支援学校教諭免許を所有していなくてもよい
教員免許
+
特別支援学校教諭免許

※自治体の予算により、担任以外の「加配教員」が配置されることもある

学級編制・教職員定数改善等に関する基礎資料 文部科学省
特別支援学校教員の特別支援学校教諭等免許保有状況関連 文部科学省

特別支援教育コーディネーター

特別支援教育コーディネーターは、保護者や関係機関に対する学校の窓口の役割や、学校内の関係者や福祉・医療等の関係機関との連絡調整の役割を担当する教育職員です。
2003(平成15)年の「今後の特別支援教育の在り方について(最終報告)」にて、特別支援教育における学校内および関係機関や保護者との連絡調整(コーディネート)を担う職種として、学校に『特別支援教育コーディネーター』の設置が提言されました。2007(平成19)年には、「特別支援教育の推進について(平成19年4月1日文部科学省初等中等教育局長通知)」にて「各学校の校長は、特別支援教育のコーディネーター的な役割を担う教員を『特別支援教育コーディネーター』に指名し、校務分掌に明確に位置付けること」とされ、全国の小・中学校への配置が進むこととなりました。
2018(平成30)年の調査では、全国の小・中学校のほぼすべてに特別支援教育コーディネーターが配置されていることがわかりました。

今後の特別支援教育の在り方について(最終報告) 文部科学省
特別支援教育の推進について(通知) 文部科学省
平成30年度 特別支援教育に関する調査等の結果について(概要) 文部科学省

特別支援教育コーディネーターの役割

「特別支援教育の推進について(平成19年4月1日文部科学省初等中等教育局長通知)」では、特別支援教育コーディネーターの役割として以下を明記しています。

「特別支援教育コーディネーターは、各学校における特別支援教育の推進のため、主に、校内委員会・校内研修の企画・運営、関係諸機関・学校との連絡・調整、保護者からの相談窓口などの役割を担うこと。」

具体的には次のような活動があります。

  1. ①学内連携

    例えば、担任、校長、教頭、学年主任、養護教諭など様々な役職が集まり、児童生徒への指導や対応を協議する校内委員会にあわせて、子どもの特性、困り感、利用中の支援などの情報を収集します。
    学内の他職種であるスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーと学校とを結びつける窓口にもなることがあります。
    また、学内の特別支援教育の知識、技術の向上を目的に、講師を招いて研修会を企画することもあります。

  2. ②学外連携

    保護者同意のもと子どもが通院している医療機関や福祉機関と情報共有をして教育支援に必要な情報を収集したり、専門的な支援の判断にしてもらうべく学校から専門機関へ情報を提示したりします。
    時には、保護者と関係機関の連絡を調整することもあります。

  3. ③保護者相談の窓口

    保護者が学校と相談をしたくても、何をどのように相談してよいのかがわからないことがほとんどです。特別支援教育コーディネーターは保護者からの相談窓口となり、特別支援教育に関する不安や希望を整理したりします。
    その他の役割として、担任の相談に応じて子どもの支援を検討し、担任と共同で児童生徒の個別の指導計画などを策定したり、特別支援学校からの巡回相談や専門家の学校訪問に応じたりしています。

特別支援教育コーディネーター実践ガイド  独立行政法人国立特別支援教育総合研究所

特別支援教育コーディネーターと相談するには

子どもの様子が気になった場合、まずは担任の先生と相談をしましょう。
「担任の先生に何をどのように相談してよいかわからない」、「担任の先生から説明を受けたがなんとなく不安だ」などがあれば、特別支援教育コーディネーターと相談するとよいでしょう。担任の先生やスクールカウンセラーなどの学校関係者に特別支援教育コーディネーターと相談したいと伝えると、相談を調整してくれます。
なお、特別支援教育コーディネーターは、関係者や関係機関の連絡・調整が主たる目的となります。実際の相談支援や特別支援教育の実施は、スクールカウンセラーや担任・特別支援学級担当者が実施をします。

加配教員とは

公立学校に配置される教職員の人数は、児童生徒の人数に応じて自動的に決定されます(公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律)。しかし、より丁寧な指導やいじめ支援などの必要性が高い場合には、定められた教職員の人数では対応が難しいことが少なくありません。
そこで文部科学省は、教職員定数に上乗せして配置する非常勤の教職員、いわゆる加配教員の配置を認めています。目的に応じて加配教員の役割が異なります。

  1. ①教諭など
    • 指導方法工夫改善:少人数指導、習熟度別指導、チーム・ティーチングなどのきめ細かな指導や小学校における教科専門的な指導を行う場合の加配教員
    • 児童生徒支援:いじめ、不登校や問題行動への対応のほか、地域や学校の状況に応じた教育指導上特別な配慮が必要な場合の加配教員
    • 特別支援教育:通級指導への対応や、特別支援学校のセンター的機能強化などのための加配教員
    • その他に、主幹教諭や研修などに関する加配教員などがあります。

  2. ②養護教諭

    いじめ、保健室登校など心身の健康への対応のための加配教員

  3. ③栄養教諭

    肥満・偏食など食の指導への対応のための加配教員

  4. ④事務職員

    学校事務の共同実施を通じた事務機能の強化のための加配職員

公立小中学校等の学級編成及び教職員定数の仕組み 文部科学省

加配教員の支援をうけるためには

加配教員の人数は各学校や自治体が任意で決められるものではありません。自治体の要望を受け、各都道府県が必要な加配教員を算出して文部科学省に申請します。文部科学省は各都道府県から受けた申請に基づいて必要な加配教員の人数を決定し、次年度から配置されます。

参考文献

田中隆一 (2019). 教員加配の有効性について, 会計検査研究, 59, 105-125

特別支援教育支援員

加配教員が文部科学省の人数決定に従って配置決定されるのに対し、特別支援教育支援員は各自治体が独自の予算で配置を決定することができます。
特別支援教育支援員の資格条件に教員免許は定められておらず、一般的に自治体は、障害者支援のために活動する社会福祉法人やNPO法人などと連携して、特別支援教育支援員を確保しています。
教員免許は資格条件ではありませんが、半数以上の方が教員免許を保有しています。また、県教育委員会などが支援員に対して研修プログラムを実施しており、特別支援教育支援員として必要な知識は担保されています。

特別支援教育支援員について 文部科学省

特別支援教育支援員の役割

特別支援教育支援員の役割には以下のようなものがあります。

  • 基本的生活習慣確立のための日常生活上の介助
  • 発達障害の児童生徒に対する学習支援
  • 学習活動、教室間移動等における介助
  • 児童生徒の健康・安全確保関係
  • 運動会(体育大会)、学習発表会、修学旅行等の学校行事における介助
  • 周囲の児童生徒の障害理解促進

『発達障害の児童生徒に対する学習支援』では、具体的な活動として次のようなものがあります。

  • 教室を飛び出して行く児童生徒に対して、安全確保や居場所の確認を行う。
  • 読み取りに困難を示す児童生徒に対して黒板の読み上げを行う。
  • 書くことに困難を示す児童生徒に対してテストの代筆などを行う。
  • 聞くことに困難を示す児童生徒に対して教員の話を繰り返して聞かせる。
  • 学用品など自分の持ち物の把握が困難な児童生徒に対して整理場所を教える等の介助を行う。

児童生徒への教育に関する責任を負うのは学級担任であり、特別支援教育支援員が学習や生活に関する指導をすることはありません。特別支援教育支援員の基本的な役割は特別支援の補助になります。

「特別支援教育支援員」を 活用するために 文部科学省

特別支援教育を支えるその他の資格

児童生徒の特別支援教育に関する資格に、一般財団法人特別支援教育士資格認定協会が認定する『特別支援教育士』(Special Educational Needs Specialist 略称:S.E.N.S〈センス〉)という資格があります。国家資格や教員免許ではありませんが、学習障害や注意欠如多動性障害などの評価(アセスメント)と指導を専門的にしています。
支援活動の特徴として、一般財団法人特別支援教育士資格認定協会は以下の様に紹介しています。

「S.E.N.Sは、LD・ADHD等のアセスメントおよび個別の指導計画の作成と立案ができる人材です。学校内での行動・学習に起因して起こるいじめや不登校など、心理的な問題にも学習面の問題にも対応できる力を備え、児童生徒や教師をトータルに支援することができる心理と教育の専門資格です。」(一般財団法人特別支援教育士資格認定協会HPより)

特別支援委教育士の資格保有者には、教育関係者、心理職者、言語聴覚士、作業療法士、医師などがおり、教育、医療、福祉などの多領域の専門家が本資格を保有しています。既に述べた通り、特別支援学級や通級指導の受け持つ教員や特別支援コーディネーターを担当する教員の条件に特別支援学校教諭の免許が必須でないことから、本資格を取得される教員も少なくありません。

一般財団法人特別支援教育士資格認定協会