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スクールソーシャルワーカー

少子化と核家族化の進行、ひとり親世帯数の増加、格差の拡大、さらには教育現場の激務化などなど、子育てに関する状況は家庭も学校も年々厳しくなっています。様々な社会問題の影響を受けてしまうことで、子どもに不調や問題が生じることがあります。このような場合、子どもへのカウンセリングや教育的な支援だけでは問題を改善することは難しく、家庭や学校への社会的な支援も必要になります。
この記事では、社会的な問題や生活上の問題を支援することで子どもを支援する『スクールソーシャルワーカー』について解説していきます。

スクールソーシャルワーカー(SSW)とは

スクールソーシャルワーカー(SSW:School Social Worker)は教育に関する知識を備え、かつ、社会福祉に関する専門的な知識や技術を有する専門家です。児童生徒が抱えている問題に対し、環境に働きかけたり関係機関と連携したりすることで問題を解決していきます。
現在、日本にはスクールソーシャルワーカーの資格試験はありません。社会福祉士、精神保健福祉士などの福祉専門職などのソーシャルワーカーが、スクールソーシャルワークに関する教育課程を修了し、就職先(多くは市町村教育委員会)が行う審査を経て『スクールソーシャルワーカー』となります。
現在、文部科学省は「いじめ対策」、「教育相談体制の充実」、「子供の貧困対策」として、スクールソーシャルワーカーの活用を進めています。しかし、まだまだスクールソーシャルワーカーの数は少なく(全国に1,399人 平成27年度 文部科学省初等中等教育局児童生徒課調べ)、文部科学省は貧困対策として『ひとり親家庭・多子世帯等自立応援プロジェクト』 の中で平成31年度までに中学校区にスクールソーシャルワーカーを配置することを目標に掲げました。

スクールソーシャルワーカーの活用 文部科学省
スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカーによる教育相談体制の充実 文部科学省
ひとり親等の現状について 厚生労働省

スクールソーシャルワーカーの業務

スクールソーシャルワーカーは以下のような業務を行うこととされています。
・問題を抱える児童生徒が置かれた環境に働きかける
・関係機関等とのネットワークの構築、連携、調整
・学校内におけるチーム支援体制の構築、支援
・保護者、教職員等に対する支援、相談、情報提供
・教職員等への研修活動 など
しかし、実際には業務内容は多岐にわたり、平成27年に文部科学省が報告した『学校における教育相談に関する資料』では、スクールソーシャルワーカーが対応した相談内容は「家庭環境の問題」「不登校への対応」「発達障害等に関する問題」の順で多く、その他にも「児童虐待への対応」「非行・不良行為」「教職員などとの関係の問題」などがありました。

学校における教育相談に関する資料 p38 文部科学省
スクールソーシャルワーカー活用事業 文部科学省
平成30年度スクールソーシャルワーカー実践活動事例集 文部科学省

スクールカウンセラーとの違い

スクールソーシャルワーカーと同様、学校で子どもを支援する職種に、スクールカウンセラーがあります。スクールソーシャルワーカーとスクールカウンセラーの違いとして以下の点が挙げられるでしょう。
〇調整する対象
スクールソーシャルワーカー「環境と制度」×スクールカウンセラー「心と周囲の人」
〇支援の態勢
スクールソーシャルワーカー「アウトリーチ」×スクールカウンセラー「本人の自主性」
例えば、子どもが不登校である場合、スクールソーシャルワーカーもスクールカウンセラーも児童生徒に直接働きかけるだけでなく、家族や学校の先生など間接的な働きかけをします。しかし、スクールソーシャルワーカーは、子ども食堂の利用や無料の学習塾の紹介など、家庭の経済状況に支援の力を、スクールカウンセラーは本人にカウンセリングをして不安を取り除いたり、知能検査を実施して教員に教育上の配慮をお願いしたりするかもしれません。
また、スクールソーシャルワーカーは、子どもの問題で行き詰っている家庭に訪問することで、適応可能な制度や医療資源を提案していくかもしれません。一方スクールカウンセラーは、子どもや保護者に働きかけつつも学校の相談室で待つことで、彼らが閉塞した状況から一歩でも進めたときにはその自主性を受け入れ、さらなる活動につなげていくかもしれません。
スクールソーシャルワーカーとスクールカウンセラーには上記のような違いがありますが、どちらの方法があっているか、早い解決が見込めるかではなく、両者による支援が総合的に実施されることで、本人、家族、学校や地域も含めた確実かつ持続的な問題解決が期待できます。

スクールカウンセラーとスクールソーシャルワーカーの役割等 画像

表:学校における教育相談に関する資料 文部科学省初等中等教育局児童生徒課(平成27年12月17日)

島根県内でのスクールソーシャルワーカーの利用について

島根県はスクールソーシャルワーカー活用事業のより効果的な活用のために、「スクールソーシャルワーカーの効果的な活用のために」「スクールソーシャルワーカー活用事業に係るガイドライン」および各種アセスメントシートを作成しています。
島根県では、学校等が市町村教育委員会、島根県教育庁にスクールソーシャルワーカーを要請することで相談が開始されます。多くは専門関係者が集まってのケース会議という形であり、スクールカウンセラーが学校の相談室に待機することで、児童生徒たちが気になった時に話ができるような体制ではありません。
家庭の経済状況や保護者の就労相談など込み入った話になりやすいため、スクールソーシャルワーカーとの相談は気軽にできる体制が望まれます。島根県内の一部の市町村では、スクールカウンセラーのように定期的にスクールソーシャルワーカーの相談会を設けているところもあります。

スクールソーシャルワーカーの効果的な活用のために 島根県
スクールソーシャルワーカー活用事業に係るガイドライン 島根県
スクールソーシャルワークのアセスメントシート 島根県
令和2年度『出雲市スクールソーシャルワーカー定期相談会』 出雲市教育委員会教育部児童生徒支援課

※毎年情報が更新されますので最新の情報を参照ください