発達障害者支援センター
発達障害者支援センターという機関をご存じでしょうか。発達障害者支援センターは、発達障害者支援法第3章第14条に基づき、都道府県・指定都市に設置されています。
発達障害と診断されていないので子どものことを相談しづらい、相談して発達障害だと診断されたらどうしよう、など様々な誤解があるようです。
この記事では発達障害者支援センターの機能と役割について説明していきます。
発達障害者支援センターとは
発達障害者支援センターは、発達障害児(者)への支援を総合的に行うことを目的とした専門的機関です。対象は発達障害をもつ本人に限らず、保護者、教師や保育士、児童発達支援に関わる支援者、医師、雇い主など制限はありません。また、相談に際して発達障害の診断は必須でありませんので、多くの方が利用できる機関です。 発達障害者支援センターは、発達障害発達障害者支援法の第3章第14条に基づいて都道府県や指定都市が直接設置をするほか、社会福祉法人や医療法人などが都道府県からの委託をうけて開設することができます。 令和元年7月現在で、センターの設置数は
- 直接実施(都道府県・指定都市の直接運営):29か所
- 委託解説(社会福祉法人など):70か所
となっています。
発達障害者支援センターの役割
発達障害者及びその家族からの相談に応じて直接に指導や助言を行ったり、関係機関との連携強化や各種研修の実施により、発達障害者に対する地域における総合的な支援体制の整備を推進したりすることが発達障害者支援センターの役割とされます。
具体的な事業内容は下記の事業を行うこととされていますが、都道府県や指定都市の人口規模、面積、交通アクセス、既存の地域支援資源の有無などによって、各センターが担う事業には地域差があります。
(1)相談支援(来所、訪問、電話などによる相談)
発達障害児(者)とその家族、学校、医療機関、福祉機関など様々な関係機関から日常生活も関する相談(コミュニケーションや行動面で気になること、保育園や学校、職場で困っていること など)に応じています。必要に応じて、福祉制度やその利用方法、保健、医療、福祉、教育、労働などの関係機関への紹介をします。また、学校や保育所、その他の機関に訪問して子どもの様子を観察し、子どもの状態に適した助言を支援者にします。
(2)発達支援(個別支援計画の作成・実施など)
発達障害児(者)とその家族や、支援者からの支援に関する相談に応じ、療育に関するアドバイスをします。また、知的発達や生活スキルに関する発達検査などを実施したり、発達障害児(者)の特性に応じた療育や教育、支援の具体的な方法について支援計画の作成や助言を行ったりすることもあります。その際、児童相談所、知的障害者更生相談所、医療機関などと連携を図ります。
(3)就労支援(発達障害児(者)への就労相談)
就労を希望する発達障害児(者)に対して、就労に関する相談に応じるとともに、公共職業安定所、地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センターなどの労働関係機関と連携して情報提供を行います。必要に応じて、発達障害者支援センターの職員が学校や就労先を訪問し、障害特性や就業適性に関する助言を行うほか、作業工程や環境の調整などを行うこともあります。
(4)普及啓発・研修、機関支援
発達障害をより多くの人に理解してもらうために地域住民向けの講演会を開催したり、発達障害の特性や対応方法などについて解説したわかりやすいパンフレット、チラシなどを作成し、保健、医療、福祉、教育、労働だけでなく、交通、消防、警察などの公共機関や一般企業などに配布したりすることもあります。また、普段から発達障害を支援する保健、医療、福祉、教育、労働などの関係機関の職員や、都道府県及び市町村の行政職員などを対象に研修を行います。
発達障害者支援法 法令リード
教育と福祉の連携に関する施策について 厚生労働省
発達障害者支援施策について 発達障害情報・支援センター
発達障害者支援センターに配置される職員
発達障害者支援センターには下記の職員が配置されることとなっています。
- 管理責任者
- 相談支援担当職員
- 発達支援担当職員
- 就労支援担当職員
職員の職種は、委託をうけた機関によってソーシャルワーカー、心理職や言語聴覚士、医師等を配置しているところがあります。
医師が勤務していたり、定期的に医師が相談を担当したりすることがありますが、発達障害者支援法では、第14条第1項に発達障害者支援センター、第19条に都道府県が確保した専門的な医療機関と明確に区別しており、発達障害者支援センターには発達障害の診断をする機能はありません。発達障害者支援センターの委託を受けている医療機関においては、発達障害者支援センターではなく、受託をしている医療機関として診断をします。
また最近では、発達障害児(者)への支援ネットワークを緊密にするために、発達障害者地域支援マネジャーを配置する機関もあります。発達障害者地域支援マネジャーは、事業所、医療機関、学校などに訪問し、アセスメントや支援ツールの導入だけでなく、各関係機関の連携や困難ケースへの対応などを実施しています。
発達障害者地域支援マネジャー 厚生労働省
発達障害地域支援体制マネジメント事業 広島県
相談方法は?相談料金は?
発達障害者支援センターの相談料金は基本的に無料です。相談方法には以下のものがあります。
発達障害者支援センターへの電話相談
発達障害者支援センターの設置する番号に電話で問い合わせをします。電話にて相談内容が解消したり、場合によっては来所を求められたり、その他の適切な機関の利用を勧められたりすることがあります。発達障害者支援センターによっては、メールやFAXでの相談も受け付けています。
来所相談
発達障害者支援センターに出向き、職員と直接相談をします。 来所相談を希望する場合には予約が必要になることが多く、来所に必要な情報(母子手帳、受けたことがある発達検査など)も発達障害者支援センターごとに異なります。まずは電話にて問い合わせをしましょう。
訪問相談
場合によって、発達障害者支援センターの職員が子どもの生活する場面に直接訪問して、支援方法を助言したりすることがあります。対象となる場所は、園や学校、児童クラブ、放課後等デイサービスなど多岐にわたりますが、一般的に家庭訪問は実施していません。支援方法は、子どもに関わっている教師、保育士、その他支援者に対する助言であり、子どもへの直接支援は基本的に行っていません。
島根県内の発達障害者支援センター
島根県内では、県の委託を受けた以下の2機関が設置されています。
・島根県東部発達障害者支援センターウィッシュ(さざなみ学園)
所管区域:松江市、出雲市、安来市、雲南市、仁多郡、飯石郡、隠岐郡
・島根県西部発達障害者支援センターウィンド(社会福祉法人 いわみ福祉会)
所管区域:浜田市、益田市、大田市、江津市、邑智郡、鹿足郡
それぞれの相談日、電話番号、メールアドレスなどは下記のURLに記載されていますので参照してください。
発達障害者支援センター 島根県
国は、発達障害者支援施策の推進に関して、ペアレントトレーニングやペアレントメンターを含むペアレントプログラムを推進しています。これにあわせ、全国の発達障害者支援センターでは、ペアレントプログラムの実施および普及に取り組んでおり、島根県内の発達障害者支援センターも実施、普及を進めています。
ペアレントトレーニングやペアレントメンターについてはこちらを参照してください。
ペアレントメンターの派遣方法 島根県東部発達障害者支援センターウィンド
http://iwami-wind.org/mentor/
主な事業内容 島根県東部発達障害者支援センターウィッシュ
http://www.sazanami-g.jp/wish/pdf/h30.jigyo.pdf
発達障害者支援センターの地域支援機能
発達障害への支援は、その人にあった個別的な方法が必要になります。また、支援するための公共資源も地域差があります。そのため、共通したノウハウが蓄積しにくい、地域を越えて普及しにくいという難点があり、各地域における支援体制の確立が大きな課題となっています。
発達障害者支援センターは、その役割機能である発達障害に関する情報の普及啓発によって各地域の支援体制の底上げを図っているだけでなく、発達障害者支援法第19条の2が定める『発達障害者支援地域協議会』に参加し、地域の支援体制を整備しています。
市町村・事業所等支援、医療機関との連携や困難ケースへの対応などについて、支援の中核である発達障害者支援センターの地域支援機能の強化は必須であり、国は『発達障害者支援センターの地域支援機能の強化』に予算を確保しています。
しかし、発達障害者支援センターへの直接相談が急増しており、中核機関として発達障害者支援センターに求められる市町村・事業所等のバックアップや困難事例への対応が十分に発揮されていない事態が全国的に生じています。子どもの様子や行動が気になる場合には、市町村が設けている相談事業の活用や学校での専門担当者への相談も検討してみましょう。