就労支援(障害者雇用促進法)
障害者の就労を支える代表的な法律と、その法律が規定するサービスや機関には以下のようなものがあり、発達障害に限定されず全ての障害で受けることができます。
障害者総合支援法
・就労移行支援
・就労継続支援(A型、B型)
・就労定着支援
障害者雇用促進法
・障害者職業センター
・障害者就業・生活支援センター
この記事では障害者雇用促進法に基づく就労支援について解説します。
なお、障害者総合支援法に関する就労支援についてはこちらを参照ください。
障害者雇用促進法による就労支援
障害者雇用促進法(正式名称:障害者の雇用の促進等に関する法律)は、障害者の職業の安定を図ることを目的に定められた法律です。
本法律では障害があっても職業生活で自立ができるよう、
・職業リハビリテーションの推進
・事業主が障害者を雇用する義務(法定雇用率制度)
・差別の禁止
・合理的配慮の提供義務
などが定められています。
また同法では、障害者の職業支援を行う機関として以下の2つの設置が定められています。
①障害者職業センター(障害者雇用促進法 第三節)
②障害者就業・生活支援センター(障害者雇用促進法 第四節)
①障害者職業センター
障害者の職業的自立を促進、支援するために設置されている機関で、障害者雇用促進法に基づいて職業リハビリテーションの実施、助言、援助などを行っています。設置、運営の主体は、厚生労働大臣の委託を受けた独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構です。
なお、職業リハビリテーションとは、職業生活で自立できるよう障害者に対して行われる「職業指導」「職業訓練」「職業紹介」「職業評価」など全般を指します。
障害者職業センターの種類
障害者職業センターには、以下の3種があり、2020(令和2)年現在の設置数は下記の通りになっています。
・地域障害者職業センター:47都道府県に1つ
・広域障害者職業センター:全国2か所
・障害者職業総合センター:全国1か所
以下では、地域に近い『地域障害者職業センター』を中心に説明をします。
広域障害者職業センターと障害者職業総合センターはそれぞれのサイトを参照ください。
広域障害者職業センター 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構
障害者職業総合センター 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構
地域障害者職業センターとは
障害者一人ひとりのニーズに応じて、職業評価、職業指導、職業準備訓練および職場適応援助等の各種の職業リハビリテーションを実施するとともに、事業主に対して、雇用管理上の課題を分析し、雇用管理に関する専門的な助言その他の支援を実施しています。
地域障害者職業センターは都道府県に1つ設置されており、障害者、事業主、関係機関の全てに就労支援に関する支援を実施しており、まさしく障害者就労支援に関する地域の基幹的な役割を担っています。
地域障害者職業センターのサービス内容
障害者本人に対して下記のような職業リハビリテーションを実施します。
〇職業相談・職業評価
就職の希望などを把握した上で、職業能力等を評価し、それらを基に就職して職場に適応するために必要な支援内容・方法等を含む、個人の状況に応じた職業リハビリテーション計画を策定します。
職業評価は、就職できるかどうかを判断するためのものではありません。得意なことや苦手なことを整理し、どのような職場環境や支援があると働きやすくなるのかを整理していくための評価です。職業経験を聴取するだけでなく、作業検査や心理検査などの検査をおこない、作業能力や心理適性などを客観的に評価し、就職、職場適応、復職を目指した具体的な職業リハビリテーションの計画書を作成します。
Q1:職業評価ではどのようなことをするのでしょうか? 島根障害者職業センター
○職業準備支援
就職または職場適応に必要な職業上の課題の把握とその改善を図るための支援、職業に関する知識の習得のための支援、社会生活技能等の向上を図るための支援を行います。終了後はハローワークによる職業紹介、職場適応援助者(ジョブコーチ)支援などにつなげてくれるため、就職前の準備、求職活動、就職後の支援など、職場定着まで一貫したサポートを受けられます。
一人ひとりの状況に応じて下記のような支援を実施します。
・基本的な労働習慣習得と作業遂行力向上の支援
・コミュニケーション能力・対人対応力の向上を支援
・障害特性や職業上の課題の把握及び改善に係る支援
・職業に関する知識の習得に係る支援
・社会生活技能等の向上に係る支援
職業準備支援のご案内 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構
職業準備支援の利用方法について 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構
○職場適応援助者(ジョブコーチ)支援事業
障害者の円滑な就職および職場適応を図るため、事業所に職場適応援助者(ジョブコーチ)を派遣し、障害者および事業主に対して、雇用の前後を通じて障害特性を踏まえた直接的、専門的な援助を実施します。
・障害者への支援例の例として
作業の仕方やコツなどを助言します。必要に応じて、作業マニュアルや手順書を一緒に作成します。職場の人には、ご本人が理解しやすい指示の出し方をアドバイスします。また、話し合いによる定期的な振り返りを行い、課題を共有して不安の軽減を図ります。
・事業主への支援例として
仕事の内容や指導方法を改善するための助言や提案をします。また、ご本人の意向を確認した上で、事業所に障害や病気に関する基礎的情報を提供し、職場で配慮して頂きたいことを伝えます。
職場適応援助者(ジョブコーチ)による支援 ジョブコーチ(職場適応援助者)による支援のご案内 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構
ジョブコーチ(職場適応援助者)による支援のご案内 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構
○精神障害者総合雇用支援
精神障害者および事業主に対して、主治医などの医療関係者との連携のもと、精神障害者の新規雇入れ(雇用促進支援)、職場復帰支援、雇用継続支援を実施します。
・雇用促進支援
「企業で働きたいけどどうすれば?」と不安な精神障害のある方には職業リハビリテーションを実施します。「障害者雇用を進めるにあたってどのような準備が必要か」と考える事業主に対しては、雇用管理上の課題などを分析して『事業主支援計画』を策定し、採用計画や採用後の職場定着、雇用管理に関する助言や支援を行います。
・職場復帰支援
精神障害のある方に対して体調把握や職場復帰の課題分析、事業主に対して職場復帰に向けた事業所状況の分析、主治医や医療機関に対して病状に応じた支援方法の共有などを行います。これら三者の意思とアセスメントに基づいて支援計画を作成する職場復帰のコーディネートを実施します。
また、復職(リワーク)支援の例として、三者の同意のもとで精神障害者のある方が障害者職業センターに通所し、作業体験やリハビリ出勤、コミュニケーション方法の取得、キャリアプランの再構築などを実施します。
・雇用継続支援
精神障害のある方が働き続けられるために、精神障害のある方と事業主の双方に助言や支援を行います。
例えば、障害者職業センターの職員が職場適応援助者(ジョブコーチ)を職場に派遣し、業務に関する困りごと、対人関係の課題、雇用管理に関する悩みなどを障害者本人と事業主の双方から聴取し、その解決のために助言や支援を行います。
精神障害者総合雇用支援 厚生労働省
地域障害者職業センターの精神障害者総合雇用支援のご案内 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構
上記のようなサービスのほかにも、地域障害者職業センターは障害者職業・生活支援センターやその他の関係機関に対して、職業リハビリテーションに関する助言や援助を実施し、地域の関係機関の知識や技術の向上を行っています。また、医療、福祉、教育分野の関係機関に対して職業リハビリテーションの研修や講習を開催し、職業リハビリテーションに関する認識を地域で共有し、地域の就労支援ネットワークを作り上げており、障害者就労支援に関する地域の基幹的な役割を担っています。
地域障害者職業センターの概要 厚生労働省
障害のある方へのサービス 島根障害者職業センター
対象者と利用方法
対象者は下記のとおりです。
・障害のある人
・障害者雇用に携わる事業主や人事担当者
・障害者就労支援に関する機関(医療、福祉、教育など)
『障害のある人』の条件として、障害の種別は問いません。身体障害、精神障害、知的能力障害、発達障害などのほか、難病をお持ちの方でも利用可能です。また、障害者手帳の所有も利用のための条件ではありません。ただし、就職の際に利用する援護制度の多くが、障害者手帳を必要とするため、障害者手帳を取得しておくことが望ましいでしょう。
利用の手順として、まずは、地域障害者職業センターが開く説明会に参加しましょう。説明会でセンターの利用希望を伝えます。後日、担当者から個別相談日の連絡があり、センターでの相談が始まります。説明会への参加できない場合には、電話での受付も可能です。
地域障害者職業センターによっては、ハローワーク経由で受付するところもあるようです。利用の申請方法は居住区の地域障害者職業センターに確認しましょう。
なお、利用料金は無料です。
②障害者就業・生活支援センター
障害者雇用促進法が定める障害者の職業支援を行う機関には、地域障害者職業センターのほかに『障害者就業・生活支援センター』があります。
地域障害者職業センターが就労場面に特化して支援を実施する機関であるのに対し、障害者就業・生活支援センターは就労場面だけでなく生活場面にも介入するのが特徴です。
地域障害者職業センターの国が独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構に委託し、各都道府県に1か所設置されているのに対し、障害者就業・生活支援センターは、障害者の職業安定を図ることを目的としている一般社団法人や社会福祉法人などが都道府県知事に指定されて開設されます。そのため、地域ごとに障害者就業・生活支援センターが設置されており、設置数は地域障害者職業センターよりも多いです。
障害者就業・生活支援センターのサービス内容
就労だけでなく生活に対しても支援を提供する機関であるため、障害者就業・生活支援センターには『就労支援担当員』と『生活支援担当員』が配置されています。
就労支援担当員は就業支援を行い、具体的には以下のような支援を行います。
・就職に向けた準備支援(職業準備訓練、職場実習の斡旋)
・求職活動の支援
・職場定着支援
・企業に対して障害者の障害特性をふまえた雇用管理に関する助言
・関係機関との連絡調整 (例:養護学校と生徒に関する情報共有)
生活支援担当員は生活支援を行い、具体的には以下のような支援を行います。
・生活習慣の形成、健康管理、金銭管理等の日常生活の自己管理に関する助言
・住居、年金、余暇活動など地域生活、生活設計に関する助言
・関係機関との連絡調整(例:福祉事務所と福祉サービスの利用調整、医療機関と医療面の相談など)
このように、障害者就業・生活支援センターは障害者の身近な地域において、就業場面だけでなく生活場面にも介入して仕事と生活を総合的に支援します。
対象者と利用方法
利用の対象となるのは、就職を希望する障害者と在職中の障害者になります。障害の種別は問いません。
利用方法は、最寄りの利用したい障害者職業・生活支援センターに連絡をとり、相談日を予約して利用するのが一般的です。詳しい利用方法は各障害者職業・生活支援センターに問い合わせをして確認をしましょう。
どこへ相談?何から相談?
就労支援に関する支援サービスや支援機関は数多くあり、どこに相談してよいのか迷ってしまいます。また、漠然と『仕事を…』とイメージする段階では、何から相談してよいのかわかりません。
そこで、厚生労働省はどのような悩みに対して、どのような施策が利用でき、それをどこで相談できるかを整理した『どこへ相談すればいいか分からない方へ』を公開しています。是非参考にしてください。
また、島根県では障害者雇用促進に係る広報資料を作成し、県内の企業や県民に『障害者雇用』について情報を発信しています。こちらも是非参考にしてください。
どこへ相談すればいいか分からない方へ 厚生労働省『障害者の方への施策』より