アイコン ファイル 気づく
アイコン はてな

就労支援(障害者総合支援法)

障害者の就労を支える代表的な法律と、その法律が規定するサービスや機関には以下のようなものがあり、発達障害に限定されず全ての障害で受けることができます。

障害者総合支援法
・就労移行支援
・就労継続支援(A型、B型)
・就労定着支援

障害者雇用促進法
・障害者職業センター
・障害者就業・生活支援センター

この記事では障害者総合支援法に基づく就労支援について解説します。
なお、障害者雇用促進法に関する就労支援についてはこちらを参照ください。

障害者総合支援法による就労支援

障害者総合支援法(正式名称:障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律)では、障害者が障害福祉サービス等のサービスを受けた場合、自立支援給付費が支給されます。自立支援給付には、介護給付費、自立支援医療費、補装具費及び高額障害福祉サービス等給付費などがあり、そのひとつに『訓練等給付費』が規定されています(第6条)。

障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律 e-GOV法令検索


図 第4章 日々の暮らしの基盤づくり 内閣府HPより

訓練等給付のなかで、就労支援に関するサービスは次の3つです。

(1)就労移行支援

一般企業への採用を目指す障害者に対して、就職に必要なスキル獲得を目指す支援サービスです。このようなサービスを提供している事業所を就労移行支援事業所と呼びます。 就労移行支援では、企業へのエントリーに『一般枠』『障害者枠』を問わないため、就職選択の幅が広がります。 就職に必要なスキル学習では、あん摩マッサージ指圧師など特定の資格取得やパソコン操作などの職業訓練にとどまらず、履歴書の書き方、面接対策、適性にあった職場探しの手伝い、実際の企業へ職場実習をするなど、具体的かつきめ細かい支援を受けることができます。さらに、就職後には職場に定着して長期就労に結び付くようさまざまな相談にも応じてくれます。 就労移行支援の対象者は『就労を希望する障害者』とされ、障害は精神障害、発達障害、身体障害、知的障害を問いません。障害の診断を受けている人であれば障害者手帳の取得は必須ではありませんが、障害者手帳を取得していない人が就労移行支援の利用を要望する場合には、医師や自治体によってその必要を認められなければなりません。

そのほかの条件として
・原則65才未満であること
・原則2年間の期間
が定められており、その他の就労支援サービスよりも条件が厳しいのが特徴です。

就労移行支援サービスには利用料がかかることがあります。利用料には上限が定められており、例えば、
・市町村民税課税世帯:月額9,300円
・市町村民税課税世帯の20歳以上の入所施設の利用者、グループホーム利用者:37,200円
となっているほか、低所得者や生活保護受給者は利用料が免除されます。

就労移行支援の利用方法は、市町村市役所の福祉課へ申請します。申請と利用の流れは一般的な福祉サービス申請の流れと同様になりますので、こちらを参照ください。

(2)就労継続支援

就労継続支援には『就労継続支援A型』『就労継続支援B型』の2つの支援形態があり、以下に説明をしていきます。

〇就労継続支援A型

就労継続支援A型の対象者
一般の企業に就職することが難しい障害者やそれに相当すると認められた18歳以上65才未満の方です。具体的には次のような人が対象となります。

(1) 就労移行支援事業を利用したが、企業等の雇用に結びつかなかった者
(2) 特別支援学校を卒業して就職活動を行ったが、企業等の雇用に結びつかなかった者
(3) 企業等を離職した者等就労経験のある者で、現に雇用関係がない者

障害者手帳は必須ではなく、利用の必要性を認めればサービスを受けることができます。

就労継続支援A型は、雇用契約を結んで勤務するため最低賃金以上が保障されることとなり、一定の賃金を得ることができます。そのため、業務内容や勤務形態も一般就労やアルバイト、パートに近くなります。事業所によって異なりますが、一般的に1日4時間以上、週3日以上の勤務になるだけでなく、業務内容も飲食店での調理・製造、小売店での接客から品出し、工場での部品組み立てなど多岐にわたります。長時間の作業と長期間の勤務に耐えられる健康状態が求められるため、医師などの専門家による『就労可能』の判断が必要になるのです。 健康状態に問題はないが働くこと自体に不安がある場合でも、就労継続支援A型はリハビリや訓練を兼ねたいわゆる『福祉サービス』であるため、支援を受けながら業務に取りくむことができます。これは同時に『福祉サービス』の利用料金を支払わなければならないことにもなります。利用料の自己負担額は『就労移行支援』と同様の減免措置が適用されます。

就労継続支援A型の利用手順

下記は、一般的な利用の手順です。既に医療機関にかかっている人は、まずは主治医に就労の希望を相談し、就労が可能かどうかの判断を受けましょう。 まずは利用したい就労継続支援サービスや事業所を見つけましょう。「働くほどに障害や健康状態は安定しているが、どの就労支援サービスを利用してよいのかわからない。」「特にしたいこと、特技などはないので、どの事業所が自分に合っているかわかならい。」など選択に迷う場合には、相談支援事業所を利用して自分に合ったサービスや事業所の相談をしましょう。相談支援事業所は市町村役所が取りまとめていますので、担当窓口に問い合わせましょう。 自分で事業所を探す場合、就労継続支援A型事業所の求人情報は一般的な求人情報サイトに掲載されていることが多いので、作業内容や勤務形態などを検索条件にして様々な事業所を検索してみましょう。また、市町村役所に相談したり、ハローワークで紹介してもらったりすることも可能です。 気になる事業所が見つかれば、見学や体験が可能かを問い合わせてみましょう。見学が可能ならば、業務内容だけでなく事業所や職員の雰囲気、その他の利用者の様子も見学しておき、自分が無理なく働ける環境かどうかを検討しましょう。 利用したい事業所が見つかったら、その事業所に応募して面接を受けます。面接では一般的な採用面接と同様、簡単な自己紹介や経歴が聴取されるほか、健康状態や障害に関して丁寧に尋ねられることが一般的です。「苦手なことや障害のことを伝えたら、採用されなくなる…」と不安になる必要はありません。事前に配慮が必要なことを職員に知っておいてもらうことで、適切な支援や訓練を受けられるようになります。 面接を受けて合格を受けたら、利用負担額が軽減されるサービス受給者証の発行を市町村役所に申請しましょう。申請と利用の流れは一般的な福祉サービス申請の流れと同様になりますので、こちらを参照ください。 サービス受給者証が発行され就労継続支援A型事業所と雇用契約を結べば、いよいよ通所開始となります。なお、就労継続支援A型は就労移行支援のように利用期間の期限はありません。

NPO 法人就労継続支援A型事業所全国協議会

〇就労継続支援B型

就労継続支援B型の対象者
一般の企業に就職することが難しい障害者やそれに相当すると認められた人が対象になります。就労継続支援A型と異なり、年齢制限は設けられていません。具体的には次のような人が対象となります。

(1)就労経験がある者であって、年齢や体力の面で一般企業に雇用されることが困難となった者
(2)50歳に達している者又は障害基礎年金1級受給者
(3)(1)及び(2)に該当しない者で、就労移行支援事業者等によるアセスメントにより、就労面に係る課題等の把握が行われている者

就労継続支援A型と同様、障害者手帳は必須ではなく、利用の必要性を認めればサービスを受けることができます。

就労継続支援B型の特徴
就労継続支援B型は就労継続支援A型と同様に就労の機会を提供していますが、A型のように雇用契約は結ばないため、最低賃金は保障されません。支払いは『賃金』ではなく『工賃』と言われ、事業所によってその算出方法は異なります。1日〇〇円と定額になっている事業所や、出来高制になっている事業所もあります。
2018(平成30)年度、就労継続支援B型の全国平均工賃は下記の通りとなっています。

月額:16,118 円
日額:214 円

平成30年度工賃実績 厚生労働省
障がい者就労継続支援事業所の賃金・工賃(令和元年度実績) 島根県

就労継続支援B型の工賃は就労継続支援A型の賃金に比べて安くなりますが、業務内容は箱の組み立て、袋詰め、作ったお菓子の販売や提供、クリーニングなどの軽作業で、作業時間も2~3時間の短時間になることが多く、自分の障害やその日の体調にあわせて働くことができます。そのため就労継続支援A型での就労が困難な方でも利用が可能です。

就労継続支援B型では工賃を得ることができますが、就労継続支援A型と同様に福祉サービスであるため、サービス利用料が発生します。料金や減免措置の内容は就労継続支援A型と同じです。

就労継続支援B型の利用手順

就労継続支援A型と同様、既に医療機関にかかっている人は、まずは主治医に就労の希望を相談し、就労が可能かどうかの判断を受けましょう。
利用できる就労継続支援サービスや事業所を見つけるために、相談支援事業所を利用したり、市町村役所に相談したり、ハローワークで紹介を受けることもできます。
利用したい事業所がみつかったら、事業所に連絡をして見学や体験が可能かを打診してみましょう。見学や体験で「働けそう」と感じたら、事業所にサービスを利用したい旨を伝えましょう。利用が決定したら利用負担額が軽減されるサービス受給者証の発行を市町村役所に申請しましょう。申請と利用の流れは一般的な福祉サービス申請の流れと同様になりますので、こちらを参照ください。
受給者証が発行された後は、事業所と正式な手続きを行い、利用が開始されます。 就労継続支援B型事業所は就労継続支援A型事業所と同じく、利用期間の制限はないため、長期間にわたる利用が可能です。

3.サービスを受けるための各種支援機関 NPO法人福祉ネットだんだんネ
松江市内相談支援事業所(令和元年度) 松江市社会福祉協議会
暮らしのガイド:就労継続支援B型 松江市
就労継続支援B型 出雲市障がい者施策推進協議会

(3)就労定着支援

就労支援は就職だけが目的ではなく、安定して働き続けることも支援されなければなりません。そのためには、作業能力の維持・向上、同僚や上司とのコミュニケーションといった職場に関連した支援だけでなく、朝の出勤に遅刻しないよう日常生活リズムの調整、障害や病気を悪化させないような服薬習慣、給与を浪費しないような金銭管理など、生活面の課題への支援も必要になります。
就労移行支援や就労継続支援などを利用して一般就労する障害者が増えるとともに、就労に伴って生じている上記のような生活面の課題も増加しており、これに対処するべく2018(平成30)年から、障害者総合支援法の定める支援として就労定着支援が開始されました。

就労定着支援の対象者

対象者は障害者総合支援法で『就労に向けた支援として厚生労働省令で定めるものを受けて通常の事業所に新たに雇用された障害者』と定められています。具体的には就労移行支援、就労継続支援、生活介護、自立訓練を利用して一般就労をした障害者やこれに相当する利用者で、就労に伴う環境変化により生活面や就業面で課題が生じている人とされます。
利用の条件として『一般就労後6月を経過した者』と定められており、就労してから6か月を経過していることが必要となります。また、サービスの利用期間は3年間となっており、経過後は必要に応じて『障害者就業・生活支援センター』などへ引き継ぐこととされています。また、利用の期間に『3年間』の期限が定められています。

就労定着支援のサービス内容

就労定着支援サービスの内容は次のように定められています。

・障害者との相談を通じて日常生活面及び社会生活面の課題を把握するとともに、企業や関係機関等との連絡調整やそれに伴う課題解決に向けて必要となる支援を実施する。
・利用者の自宅、企業等を訪問することにより、月1回以上は障害者との対面支援を行う。

利用者が就労定着支援事業所に通所するだけでなく、就労定着支援事業所の職員が利用者の職場にも家庭にも訪問します。就労定着支援事業所の職員は利用者の職場での様子を観察し、企業に環境調整をお願いしたり、医療や福祉など必要な関係機関に連絡したりして職場で生じている課題の解決を図ります。また、就労定着支援事業所の職員が家庭訪問することで、利用者の生活状況を把握することもでき、生活リズム調整、服薬管理、金銭管理などに対して助言や指導をします。
このように職場と家庭に介入することで、利用者が安定、継続して就労できるように支えていきます。

就労定着に向けた支援を行う新たなサービス(就労定着支援)の創設 厚生労働省

就労定着支援サービスを受けるには
基本的には就労継続支援と同様の手順です。
しかし、就労定着支援事業は始まって間もないサービスであり、また、事業者が『就労定着支援事業』の実施主体になるには『過去三年間において平均⼀⼈以上、通常の事業所に新たに障害者を雇⽤させている⽣活介護等に係る指定障害福祉サービス事業者でなければならない。』と厳しく定めているなどもあり、就労定着支援事業所の数はまだ十分ではありません。
事業所を探すときには、『就労移行支援』『就労継続支援A型・B型』などを運営している各事業所のサイトを調べてみるか、市町村役所に問い合わせるとよいでしょう。

就労定着支援 松江市:暮らしのガイド
就労定着支援事業 浜田圏域自立支援協議会:働くことを応援する場

就労支援サービスのまとめ


就労支援サービスの特徴をまとめると以下のようになります。
就労のどの側面に悩みや不安を感じているのかによって、訓練を受ける、機会を得る、支えてもらう、助言を得るなど支援方法は変わるため、適切な就労支援サービスをうけることが重要です。
まずは、悩みや不安を具体的にしていきましょう。そうすることで適切な就労支援サービスにつながります。相談支援事業所、発達障害者支援センター、市町村役所の担当窓口に相談することから始めてみましょう。

就労移行支援事業 就労継続支援A型事業
事業概要 通常の事業所に雇用されることが可能と見込まれる者に対して、
①生産活動、職場体験等の活動の機会の提供その他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練
②求職活動に関する支援
③その適性に応じた職場の開拓
④就職後における職場への定着のために必要な相談等の支援を行う。
通常の事業所に雇用されることが困難であり、雇用契約に基づく就労が可能である者に対して、雇用契約の締結等による就労の機会の提供及び生産活動の機会の提供その他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練等の支援を行う。
対象者 企業等への就労を希望する者
※平成30年4月から、65歳以上の者も要件を満たせば利用可能。
① 移行支援事業を利用したが、企業等の雇用に結びつかなかった者
② 特別支援学校を卒業して就職活動を行ったが、企業等の雇用に結びつかなかった者
③ 就労経験のある者で、現に雇用関係の状態にない者
※平成30年4月から、65歳以上の者も要件を満たせば利用可能。
備考 標準利用期間:2年
※ 必要性が認められた場合に限り、最大1年間の更新可能
利用期間:制限なし
賃金の支給

就労継続支援B型事業 就労定着支援事業
事業概要 通常の事業所に雇用されることが困難であり、雇用契約に基づく就労が困難である者に対して、就労の機会の提供及び生産活動の機会の提供その他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練その他の必要な支援を行う。 就労移行支援、就労継続支援、生活介護、自立訓練の利用を経て、通常の事業所に新たに雇用され、就労移行支援等の職場定着の義務・努力義務である6月を経過した者に対して、就労の継続を図るために、障害者を雇用した事業所、障害福祉サービス事業者、医療機関等との連絡調整、障害者が雇用されることに伴い生じる日常生活又は社会生活を営む上での各般の問題に関する相談、指導及び助言その他の必要な支援を行う。
対象者 ① 就労経験がある者であって、年齢や体力の面で一般企業に雇用されることが困難となった者
② 50歳に達している者又は障害基礎年金1級受給者
③ ①及び②に該当しない者で、就労移行支援事業者等によるアセスメントにより、就労面に係る課題等の把握が行われている者
① 就労移行支援、就労継続支援、生活介護、自立訓練の利用を経て一般就労へ移行した障害者で、就労に伴う環境変化により生活面・就業面の課題が生じている者であって、一般就労後6月を経過した者
備考 利用期間:制限なし
工賃の支給
利用期間:3年
表:障害者総合支援法における就労系障害福祉サービス 厚生労働省より

どこへ相談?何から相談?

就労支援に関する支援サービスや支援機関は数多くあり、どこに相談してよいのか迷ってしまいます。また、漠然と『仕事を…』とイメージする段階では、何から相談してよいのかわかりません。 そこで、厚生労働省はどのような悩みに対して、どのような施策が利用でき、それをどこで相談できるかを整理した『どこへ相談すればいいか分からない方へ』を公開しています。是非参考にしてください。

どこへ相談すればいいか分からない方へ  上記『障害者の方への施策』内に掲載 厚生労働省