放課後の居場所「放課後児童クラブ」「放課後子供教室」「児童館」「放課後等デイサービス」
子どもが小学生になると、気になるのが放課後の子どもの居場所です。
共働きの家庭においては子どもが高学年ならばまだしも、低学年であれば下校してから留守番をさせることに不安を覚えるのではないでしょうか。
子どもの居場所となる行政サービスには様々なものがあります。しかし、保護者としては単に預けて面倒をみてもらう場所ではなく、子どもの特性に適した場所であってほしいと願うものです。
この記事では放課後の子どもの居場所である「放課後児童クラブ」「放課後子供教室」「児童館」について、その内容や利用条件などを紹介します。また、児童福祉法の定める「放課後等デイサービス」にも触れ、その違いについて説明します。
なぜ放課後の居場所が必要なのか
女性の社会進出が進み、働く女性たちの希望する就労形態は多様になりました。例えば「子どもがまだ幼いので、子どもが学校に行っている昼間だけ働きたい」と希望をしても、雇用側の勤務条件が17時までだと、子どもを預けられる場所を探さなければなりません。しかし、核家族化が進み祖父母と同居していないこと、近所づきあいの減少で家庭外に頼れる人がいないこともあり、勤務中に子どもの面倒をみてもらうことが難しくなっています。このような状況では、子どもが幼稚園を卒園して小学校に入学すると、放課後の子どもの居場所を確保することができず、仕事と子育てを両立することができなくなってしまいます。これを『小1の壁』と言います。
この問題を解消すべく、2014年に政府は放課後子ども総合プランを策定し、放課後児童クラブの整備が進められました。さらに2015年には、小学校4年生になると放課後児童クラブの退所を求められる問題(『小4の壁』)を解消するために子ども・子育て支援新制度が始まりました。これにより放課後児童クラブの対象年齢は、小学校3年生から小学校6年生までに拡大されただけでなく、市町村に対しては整備計画の策定が求められ、サービス利用の拡大が進んでいきました。
このように放課後児童クラブの利用拡大が進められたのですが、依然として利用できずにいる待機児童は問題のままでした。そこで2018年に待機児童問題に対処すべく新・放課後子ども総合プランが策定され、放課後児童クラブと放課後子供教室の一体化が進められました。これにより、放課後の子どもの居場所がさらに充実されました。
「放課後子ども総合プラン」の策定 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000054032.html
「新・放課後子ども総合プラン」の策定について 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000212051_00002.html
令和元年(2019年) 放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)の実施状況 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000189556_00003.html
放課後児童クラブについて
放課後児童クラブの法律上の名称は放課後児童健全育成事業で、児童福祉法第6条の3第2項の規定に基づいて整備された厚生労働省が管轄の事業です。
保護者が仕事などで昼間に家庭にいることが難しい小学生が利用対象です。保護者の仕事以外にも病気や介護などの理由も認められます。
活動は学校終了後や夏休み等に学校の余裕教室を利用して行われます。事業目的は親に代わって子どもを預かることではなく、子どもの健全育成であるため、特別な訓練や学習をする場所ではありませんが、自主性、社会性、創造性を養うために遊びを通じた活動をします。厚生労働省の規定により、職員は適切な教育を受けた放課後児童支援員が配置されています。放課後児童クラブは地域によって学童クラブや学童保育所と名称が異なります。
基本的に運営主体は市町村や社会福祉法人となることが多いですが、放課後児童クラブや学童クラブなどの名称は民間企業も使用することができるため、一般企業が運営する放課後児童クラブもあります。この場合、自治体が運営する放課後児童クラブよりも料金が高額になることが利用者としてデメリットになりますが、民間企業ならではの充実したプログラム、利用方法を柔軟に決められる、自治体運営にはない早朝や遅い時間の利用ができるなどのメリットがあります。
※以降は自治体運営の放課後児童クラブに絞って説明します。
放課後児童健全育成事業について 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000027098.html
放課後児童クラブ運営指針 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000080764.html
放課後児童クラブの利用と料金について
放課後児童クラブを利用するにあたって、いくつか注意点があります。
事前の利用申請が必要
放課後児童クラブには利用定員があり自由参加はできません。利用に際しては、事前に市町村への入会申請が必要になります。申請時期は年末から年始にかけて開始する自治体が多いようです。
保護者の就労状況などによっては入会できないことがあります。申請方法や時期、条件についての最新の情報は必ず各自治体に確認をしましょう。
学校から直接通所が原則
学校が終わったら家に帰らずに学校から直接通所することが原則です。一旦帰宅してから通所したり学習塾やその他の用事のために途中で抜けたりすることは認められていません。通所時には職員が子どもの出欠を確認します。基本的に、帰りは保護者が迎えに行くことになっています。
利用時間
利用時間は自治体によって様々ですが、18時頃で終了とする自治体が多いようです。
料金について
料金は育成料と呼ばれ、月7,000円前後になることが多いようですが、自治体によっては1万円近くになることもあります。育成料の他に、遊びに使った材料費やおやつ代を実費徴収することがあります。
料金は自治体や利用する曜日や時期によっても変わります。また、世帯収入によっては、料金が減額されたり免除されたりする減免措置を受けられる自治体もあります。最新の情報は各自治体に確認をしましょう。
島根県各自治体の放課後児童クラブ(一部) ※2020年5月時点
松江市
http://www1.city.matsue.shimane.jp/kyouiku/jidou/
安来市
https://www.city.yasugi.shimane.jp/kurashi/kyoiku/shien/jido-club.html
出雲市
http://www.city.izumo.shimane.jp/www/genre/0000000000000/1294639369519/index.html
大田市
https://www.city.ohda.lg.jp/ohda_city/city_organization/24a/kodomo-katei/330/1639/
益田市
https://www.city.masuda.lg.jp/soshiki/12/1220.html
放課後子供教室について
文部科学省が管轄する事業で、放課後や週末に子どもたちの居場所を作るために、学校の校庭や空き教室などを活用し、地域住民の協力を得て学習やスポーツ、文化活動などをします。厚生労働省の放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)とともに放課後子ども総合プランに位置づけられています。
放課後子供教室の運営に関しては、余裕教室(少子化による児童数減少に伴い、将来に余裕となると見込まれる普通教室)の利用を推奨すること以外に特に定められた規定はありません。そのため運営者によって活動内容は大きく変わり、活動場所も小学校、地域の施設など様々です。また、放課後子ども総合プランでは放課後児童クラブと放課後子供教室を一体化することが推奨されており、同じ学校や教室で放課後児童クラブの参加児童と放課後子供教室の参加児童とが一緒に活動をすることがあります。この場合、管轄と利用料金が異なるため、利用時間や活動内容以外の内容(おやつを提供するなど)で差別化することがあります。
放課後子供教室の利用と料金について
利用対象は全ての小学生であり、放課後児童クラブのように保護者の就業状況や小学校低学年などの制限はありません。利用方法は自由参加であり、学校が終わってからの直接参加も一度帰宅してからの参加も可能です。そのため、事前の登録は不要とされます。ただし、子どもの安全管理の面から事前登録が必要な放課後子供教室もあるようです。
料金は基本的に無料ですが、年額500円程度の保険料と活動内容に応じた実費が必要となることがあります。
放課後子供教室は地域住民の協力によって学習、スポーツ、文化活動を提供して放課後の居場所を確保する事業です。子どもを預かったり発達を支援したりする事業ではありません。運営は地域住民のボランティアによって行われているため、専門的な要望や個別の要望をすることはできません。
放課後子供教室の取組・現状・課題について 総務省
https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/suishin/meeting/wg/hoiku/20181102/181102hoikukoyo01.pdf
放課後子供教室大田市
https://www.city.ohda.lg.jp/ohda_city/city_organization/20/62/443/houkagokodomokyousitu/2478
放課後児童クラブと放課後子供教室のメリットデメリット
放課後児童クラブのメリットとして、
- 専門の放課後児童支援員を配置する、出欠を確認するなど厚生労働省の様々な規定により安心安全がかなり担保されている。
デメリットとして、
- 保護者の就労条件などによっては利用できないことがある。
- 収入状況による減免措置はあるものの利用料金が負担になる。
放課後子供教室のメリットとして、
- 参加が自由であるため利用しやすい。
- 利用料金がかからない。
デメリットとして、
- 放課後児童クラブほどには管理されない(管理されないことがメリットでもあります)。
上記のようなメリットデメリットが考えられますが、子どもの放課後の居場所としては十分に機能します。
児童館について
1947年に児童福祉法が制定されて設立された児童厚生施設の名称で、厚生労働省が管轄です。
児童に健全な遊びを与えてその健康を増進し、または情操を豊にすることが目的であるとされています。規模が大きいと「児童センター」という名称になります。
児童館の設置の是非は自治体が決定するため、自治体により整備の状況が異なります。
児童の福祉を広く目的としている施設であるため、活動内容は子どもボランティアの育成、中高生の赤ちゃん交流会、保護者同士の集い(母親クラブ)など非常に多岐にわたります。
児童館ガイドラインには放課後児童クラブの実施と連携が明記されており、放課後の居場所として機能している児童館もあります。
職員には児童館ガイドラインが規定している児童厚生員と呼ばれる専門の職員が配置されており、子どもの安全管理を行ってくれるだけでなく、保護者の子育て相談にも応じてくれます。
児童館の利用と料金について
利用対象は児童福祉法に定められている児童(18歳未満)となっています。
自由来館が基本であるため、特別な申請はありません。ただし、遠足やクリスマス会などのイベントのために、事前登録が必要になることがあります。料金は無料ですが、活動に必要な実費が請求されることがあります。
児童館について 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/jidoukan.html
児童館ガイドライン 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000212051_00003.html
児童館ガイドラインに基づく児童館実践事例集 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/kodomo_kosodate/kosodate/houkago/jidoukan_jirei.html
島根県各自治体の放課後児童館(一部)※2020年5月時点
http://inochiku.sakura.ne.jp/education(出雲市 伊野児童館)
http://www.masuda-jidoukan.org/index.php(益田市 益田児童館)
http://masuda-shakyou.or.jp/publics/index/181/(益田市 吉田児童館)
放課後等デイサービスについて
児童福祉法に定められた障害児通所支援です。利用対象は学校に就学している障害をもつ子どもや支援が必要と認められた子どもです。学校の授業終了後や夏休みなどの長期休暇中に、児童発達支援センターや厚生労働省令で定める施設に通わせ、生活能力の向上のために必要な訓練をしたり社会との交流を促進したりします。
ガイドラインでは子ども本人への支援だけでなく、「保護者の時間を保障するために、ケアを一時的に代行する支援を行うこと」と、保護者に対する支援も明記されています。これにより、放課後等デイサービスは発達障害を持つ子どもたちにとって放課後の居場所になっています。
放課後等デイサービスを利用するためには、市町村への申請が必要になります。利用申請が認められると障害児通所受給者証が発行され、1割負担の料金で利用することができます。
利用料金は自治体によって定められており、1回1万円くらいですが、1割負担になるため1回千円くらいになります。
放課後等デイサービスの内容や支援についての詳細は放課後等デイサービスの項目を参照ください。
放課後等デイサービスガイドライン 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000082831.html
児童館と放課後等デイサービスについて
児童館も放課後等デイサービスも、子どもの放課後の居場所として機能します。
児童館については、利用する子どもたちは複数の学校区から集まるため、学校空間以外の交流を広げることができます。例えば、不登校のため学校の子どもに会うのは恥ずかしいけど他の学校の子どもなら問題ないという子どもの場合、児童館は子どもの居場所や活動空間になりやすいです。
放課後等デイサービスも、子どもたちは複数の学校区から集まっています。児童館と同様の理由で利用される方もいます。また、発達障害があっても放課後児童クラブの利用は可能ですが、放課後等デイサービスは発達障害などへの支援を目的としているため、放課後児童クラブよりも丁寧な対応を期待することができます。
まとめ
各事業や施設によって、目的、方法、料金が異なります。下表にまとめましたので参考にしてください。
自治体に相談相談する際には、厚生労働省管轄の事業は市役所の福祉課など、文部科学省管轄の事業は市役所の学校教育課などが窓口になることが一般的です。
放課後児童クラブ | 放課後子ども教室 | 児童館 | 放課後等デイサービス | |
---|---|---|---|---|
目的 | 放課後に子どもを見られない家庭の代わりに子どもを育成する。 | 放課後の子どもの居場所確保が大きな目的。 | 子どもの地域の福祉拠点。これに関して、安全な放課後の居場所を提供している。 | 支援の必要な子どもに対して訓練や集団活動を提供するほか、保護者に代わってケアをする。 |
開館時間 利用時間 |
【平日】 放課後から18時 ※延長可能ならば19時 【学校のない日】 8時30分から18時 ※正確な情報はお住いの自治体に確認しましょう |
【平日】 放課後から17時 【学校のない日】 8時30分から17時 ※正確な情報はお住いの自治体に確認しましょう |
児童館により変わる | 事業所により変わる |
利用対象、要件、定員 | 対象:小学生(概ね低学年) 要件:保護者の就労状況など 定員:施設ごとに有り |
対象:小学校の児童全員 要件:無し 定員:無し |
対象:18歳未満 要件:無し 定員:無し |
対象:支援が必要な小、中、高の児童生徒 要件:支援が必要と認定されること 定員:事業所ごとに届け出を行っている定員 |
事前登録 | 事前登録が必要 ※利用要件により利用できない場合もある |
基本的に不要 | 自由来館 | 福祉サービスの利用申請が必要 |
料金 | 育成料として、月額7,000円程度 | 保険料として、年額500円程度 活動内容により実費徴収 |
活動内容により実費徴収 | 1回1,000程度 ※障害児通所受給者証による1割負担 |
通所方法 | 直接通所 | 直接参加することも一度帰宅してからの参加も可能 | 帰宅してからの来館が望ましい | 事業所から学校への送迎あり |
職員など | 職員は適切な教育を受けた放課後児童支援員 子ども達の出欠管理をする |
地域のボランティアなど 子どもたちが活動に参加する場であり、預かりをする事業ではない |
専門の児童厚生員 | 児童指導員など |
管轄 | 厚生労働省 | 文部科学省 | 厚生労働省 | 厚生労働省 |