アイコン ファイル 気づく
アイコン はてな

ひきこもり支援

「人と会うのが苦手で、外に出るのが怖い」「家にいてもイライラしてなんだか落ち着かない」というひきこもり状態にある本人の不安、そして「子どもがひきこもりかもしれない」「悩み続けて、家族も疲れてしまった」など、ひきこもりの状態が長くなると、家族も強い不安や悩みをもつことがあります。
この記事ではひきこもりについて解説し、ひきこもりに対する支援方法や機関を紹介します。

ひきこもりとは

ひきこもりは、2010(平成22)年に国のガイドラインで下記の通り定められました。

様々な要因の結果として社会参加(義務教育を含む就学、非常勤職を含む就労、家庭外での交遊など)を回避し、原則的には6ヵ月以上にわたって概ね家庭にとどまり続けている状態(他者と交わらない形での外出をしていてもよい)を指す現象概念である。
なお、ひきこもりは原則として統合失調症の陽性あるいは陰性症状に基づくひきこもり状態とは一線を画した非精神病性の現象とするが、実際には確定診断がなされる前の統合失調症が含まれている可能性は低くないことに留意すべきである。

つまり、ひきこもりは病名ではなく、「状態」を示す言葉です。
学校や仕事に行かず、自宅にひきこもり、家族以外の他者との親密な関係性を築かない状態が6ヵ月以上続いており、さらにその原因が精神疾患とは考えにくい状態像を示します。
ひきこもり状態にある方の中には、コンビニや書店、映画館など、他者との親密な関係や会話を必要としない場所には出かけることができる人もいますが、そのような場合でもひきこもり状態であると言えます。

ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン 厚生労働省

全国のひきこもり実態

2015(平成27)年度に実施された満15歳~満39歳までの人を対象とした調査でも、その人口の1.57%(54.1万人)がひきこもり状態にあると推移されました。 また、2018(平成30)年度に行われた調査では、全国の満40歳~満64歳までの人口の1.45%(61.3万人)が広義のひきこもり状態(「ふだんほとんど外出しない」~「ふだんは家にいるが、自分の趣味に関する用事のみ外出をする」を含める)であると推計されました。 これらの結果から、「ひきこもり」はどの年齢層にも、どのような立場の人にもみられる現状であり、誰にでも起こりうる可能性があることを示しています。
性別は、広義のひきこもりまで含めると男性が76.6%、女性が23.4%で、男性に多い傾向がみられています。
ひきこもり状態になってから7年以上の人が引きこもり者数の半数に及ぶことから、ひきこもりの長期化問題が指摘されています。

長期化するひきこもりの実態 内閣府

島根県のひきこもり実態

島根県でも2019(令和元)年度ひきこもり等の実態調査が行われ、調査で把握できたひきこもり状態にある方の総数は1089人となりました。2013(平成25)年の調査結果と比較すると49名の増加となっています。
年齢層は40歳代以上の割合が全体の半数(66.6%)と高くなっており、全国の実態と同様、性別は男性71%、女性25%と男性が女性の3倍ほど高い比率となっており、ひきこもり期間も「5年以上10年未満」が全体の20%、「10年以上」が全体の40%となって長期化しています。

「ひきこもり等に関する実態調査報告書」(令和元年12月) 島根県健康福祉部障がい福祉課

ニート(NEET)との違いは?

ニート(NEET)は、『Not in Education, Employment or Training』 の略であり、日本ではいわゆる『若年無業者』といいます。 若年無業者とは、「15~34歳の非労働力人口のうち、通学、家事を行っていない者」で、仕事をしていない、または失業者として求職活動をしていない人のうち、主に学校に通ったり、家事、仕事を行ったりしていない人のことを指します。 ひきこもり状態と比較し「学校や仕事に行っていない」という点では共通していますが、ニートや若年無業者は15~34歳という明確な年齢基準が設けられている点が異なります。
さらに、内閣府が行った「子供・若者の意識に関する調査(令和元年度)」においてニートは「就労していない、また、仕事を探しておらず、家事も通学もしていないこと(15歳以上の方)」と定義されており、外出の有無や家族を含まない他者との交流の有無に関しての基準は設けられていません。 そのため、ニートの状態にある人の中には、学校や仕事に行っていない状態でも友人と遊びに出かけたり、趣味のクラブチームに参加したりと、社会的な関わりをもっている場合も含まれます。つまり、家族以外の社会との関わりをもたないニートは、ひきこもりの状態であるとも言うことができます。
2007(平成19)年度の調査では、ニートの49.5%にあたる方がひきこもりの状態を経験していることが分かっています。

ニートの状態にある若年者の実態及び支援策に関する調査研究報告書 厚生労働省

ひきこもりと医療受診

ひきこもりは「状態像」を示した用語であり、医学的な診断名ではありません。
「ひきこもりに医療は不要ということか?」となるとそうでもなく、長期間に及ぶひきこもり状態によって生じた二次障害(抑うつ、社会不安障害など)としての精神症状に対しては治療が必要になります。 ただし、厚生労働省のひきこもり定義に含まれているように、実際には未治療のままの発達障害や統合失調症が隠れている可能性もあるため、医療的な支援が必要となる場合が少なくありません。
ひきこもりの状態が症状となり得る疾患には以下のものが挙げられます。

主な症状が「ひきこもり」となり得る疾患

・統合失調症
・社会不安障害
・強迫性障害
・うつ病
・発達障害 など

症状に「ひきこもり」が伴うこともある疾患

・緘黙症
・知的能力障害
・分離不安障害
・反応性愛着障害
・PTSD
・不安障害
・摂食障害 など

鑑別すべき疾患に統合失調症があります。これはひきこもりと類似した状態が多く見られて誤診されやすいためです。
統合失調症の症状には、感情が平板化したり、意欲が欠如したりすることで、社会的ひきこもり状態を呈することがあります。 しかし、統合失調症のそのほかの症状には、人には聞こえないような声や音が聞こえる「幻聴」や、思考が混乱し、考えに一貫性がなくなったり、考えが急に中断したりするような「思考障害」があることが少なくありませんが、ひきこもりではそのような症状はありません。 統合失調症の場合は、精神科病院で適切な薬物治療を受けることで、症状の改善が見込めるのです。
類似の状態を呈する精神疾患との鑑別、ひきこもり状態によって生じた二次障害への治療など、ひきこもりの状態にある方を支援する際に、医療機関にかかることは今後の支援を効果的に進めるために役立つことが少なくありません。 しかし、ひきこもり状態にある本人が、医療機関に足を運ぶことは容易ではく、まずは、ひきこもり状態にある同居者が後述する支援機関に相談することが必要になることが多いようです。

治療的支援の方法

ひきこもりは誰にでも、そしてどの家庭にも起こりうる「状態」です。原因を探してもなかなか見つからないことが多く、ひきこもりの状態にある本人やその家族は、それぞれ異なる経緯や事情を抱えています。 様々な要因や背景が絡み合って、その状態に至っているため、ある一定の支援方法があるわけではなく、本人や家族にあった支援方法、サポート体制が必要となります。 そのためにもまずは、本人のひきこもり状態に対する理解と共感が改善の糸口になります。

ひきこもりへの支援方法として、一般的に以下の3点が挙げられています。

(1)家族相談
上記のように、ひきこもり状態にある本人が最初から治療に参加することは稀であり、まずは家族相談から開始する必要があります。 家族からみた本人の状態、ひきこもりに到ったきっかけ、発達段階での気づきなど、支援者と一緒に本人の様子や状態について考えることで理解が深まり、本人と家族との間に良好な関係を築くことができます。
『親子だから関係には問題ないのでは』と指摘される方がいますが、ひきこもっている状態にある本人自身が、社会と関われないことで強い焦燥感や不安を秘めていることが多く、 保護者が期待や励ましを込めて「仕事はいつから始めるの?」「まずは、散歩することからはじめてみたら」と声をかけてしまうことで、本人の焦りや不安を助長してしまい、ひきこもり状態の悪化につながることがあるのです。 ですので、まずは家族と本人との間に良好な関係を築くことが重要になるのです。
家族から本人への関わり方として『耳を貸して、手は貸さない』という姿勢が重要になります。本人との良好な関係をつくるために、本人のひきこもり状態を受けとめることはとても重要ですが、本人の言いなりになることや本人が好きなように過ごせるように放置することとは異なります。 本人にとって放置や放任は「見捨てられるのではないか」という大きな不安に繋がることもあるのです。 ひきこもっていても安心できる関係をつくるには、積極的に関わりを持つことが必要ですが、例えば、本人の訴えに対して金銭を渡したり、言うとおりに買い物に行ったりなどの「行動」で応えるのではなく、精一杯本人の話に耳を傾けることが重要です。
また、全国的に長期化しているひきこもり状態にあって、治療開始の時点では、本人と家族の間でほとんど会話が行われていない場合も少なくありません。 はじめは不自然だったり、どこかぎこちない感じがあったりすることもあるかもしれませんが、まずは「おはよう」「おやすみ」といった挨拶から始めてみましょう。 家庭内に言葉のやりとりが生まれることで、誘いかけ、お願い、相談など、少しずつ対人交流が増えていきます。

(2)個人療法
ひきこもり状態にある本人が相談や治療の場に訪れると、本人に向けた支援が開始可能になります。 家族相談から本人への支援に進んだとしても、家族相談は重要な役割を果たし、変化する本人の気持ちや状態にどう向き合って行けばいいのか、どのように声をかけていけばいいのかなど、個人支援と並行して家族支援は進められます。
本人が治療や支援をうけることに同意しても、はじめは強く抵抗したり、暴れて抵抗したりすることがあるかもしれません。 ひきこもりの状態から外にでることは、それほど怖いことでもあり、不安なことなのです。その気持ちを充分に受け入れた上で、治療や支援の必要性だけは譲れないこととして「一緒に行こう」と声をかけることが重要です。
ただし、それでも応じない場合は無理をせずに家族支援のみ継続しましょう。 その際には「今から支援センター(もしくは、病院)に行ってくるね」と、声をかけ、帰宅後は本人に「今日はこんなこと話したよ」と相談内容を伝えてあげましょう。 本人にとっては、家族が家の外で何かを画策しているのではと不安になることがあるため、このような対応で不安を軽減してやることができるのです。
薬物療法が可能な場合は処方が、知的な遅れや発達の偏りが認められる場合には心理療法的なアプローチが行われます。 その治療だけで全ての問題が解決することは多くなく、就労支援やデイサービスなどの居場所の利用など、自立と社会参加に向けた継続的で多面的な支援が提供されます。

(3)集団適応支援
集団適応支援の段階では、少人数のデイケア活動や、自助グループ、作業所などの活動に参加することで、少しずつ親密な対人関係の経験を重ねていくことを目標とします。
ひきこもりの状態にある方の中には、家族以外の他者と過ごす経験が不足していたり、過去の集団場面で傷ついた経験があったりすることがほとんどのようです。 ひきこもりの状態にあった人にとって、一度その状況を脱したとしても、些細なことをきっかけに再び元の状態に戻ってしまうことも少なくないため、 ひきこもり経験のある少人数グループでお互いの気持ちを共有しながら関係性をつくったり、発言や出席が少なくても非難されない集団や環境で人との関わりを練習したりしていきます。

ひきこもり支援者読本 内閣府

具体的な問題への対応

以下は、ひきこもり状態によく生じる問題場面への一般的な対処法です。

無為な生活

ひきこもり状態にある人は、何かを楽しむといった心の余裕やゆとりが失われてしまうため、横になったり、ぼーっとして過ごしたり、無為な時間を過ごすことが多くなってしまいます。

〈精神疾患の可能性がある場合〉
何に対してもやる気が出ず、楽しむことができないといった様子は、上記『ひきこもりと医療受診』に述べたように、精神疾患による症状の可能性も考えられます。
特に、統合失調症の陰性症状は、意欲の減退、自分の世界に閉じこもり他者とコミュニケーションを避けるような症状が見られ、ひきこもり状態にある人の様子と類似しています。精神疾患が関係している場合は、精神科などの医療機関を受診し、治療の段階を踏まえて社会参加へ臨む方法を考えていく必要があります。

〈精神疾患がみられない場合〉
『治療的支援の方法』で述べたように、(1)家族相談(2)個人療法と援助が進んでいきます。
支援者と家族、支援者と本人、それぞれとの関係づくりをしながら、援助のために必要なアセスメント(見立て)を行っていきます。「(過去の)原因は何か」を考えるのではなく、「どのような可能性があるか」「どのような生活を望んでいるのか」「どんなことが必要となってくるのか」という未来について考えていきます。
さらに、見立てに合せて、これからどのように相談や援助を進めて行くかというプランニング(計画づくり)が始まります。このプランニングは援助者側が一方的につくるものではなく、本人、家族と話し合いながらつくりあげていきます。計画は大きな計画ではなく、少し先の『とりあえずのプラン』から始まり、半年先、1年先…『もう援助が必要ないと思える最終ゴール』とつくられていきます。
1度に全ての目標を決めるのではなく、まずは『とりあえずのプラン』をもっとも具体的、かつ、現実的で実行可能である目標として定めることが重要となります。それがどんなに小さなことでもかまいません。本人にとって、実行できる目標でないと続けることが困難になるからです。
本人とつくるプランの例を見ていきましょう。

『とりあえずのプラン』

・毎朝同じ時間に起きて朝食を食べる
・2日に1回、家の手伝いをする
・楽しみなこと(趣味など)を続ける
・2週間に1回、保健所のスタッフに会う

『半年先くらいまでのプラン』

・家族と一緒に好きな食事をつくってみる
・自分の部屋だけでなく、リビングなど他の家族のいる空間でも過ごすようにする
・保健所のスタッフと一緒に、苦手なバスに乗ってみる
・保健所のスタッフと一緒にハローワークに行ってみる

『最終ゴールのプラン』

・一人暮らしができるようになる
・自分にあった職場で、パートタイムで働く
・友人と一緒に旅行にでかける

少しずつ関係が築かれ、具体的な目標が明確になってくると、本人や家族にとって「もう少しやってみたいこと」が広がっていきます。 『治療的支援の方法』で述べた集団適応支援もその1つで、居場所としてのフリースペースやデイケア、就労・就学支援プログラム、少人数で行うソーシャルスキルトレーニンググループなどがあります。 さらに「もう少しじっくりと話を聞いて欲しい」「悩みを相談したい」といった個人カウンセリングの希望など、そのときの本人や家族にあった支援につなげていきます。
段階が進めば不安も生じていきます。一歩一歩進んでいても「やっぱり不安だからやめたい」と立ち止まったり、戻ったりしたい気持ちが生じることも少なくありません。 周囲の人は「せっかく前進しかけていたのに…」と無理強いするのではなく、不安や本人の気持ちに寄り添い、尊重する態度が大切です。 本人の「できそう」「やってみたい」を大切に、具体的でごく小さな目標をつくり、達成する経験を重ねることでそれが大きな自信につながっていくのです。

10代・20代を中心とした「ひきこもり」をめぐる地域精神保健活動ガイドライン-精神保健福祉センター・保健所・市町村でどのように対応するか・援助するか- 厚生労働省

家庭内暴力が生じている

ひきこもりの経過中に家庭内暴力が起きることは少なくありません。特に、ひきこもりが長期に及ぶ場合、家族関係が悪化し、些細なことや時には理由もなく家庭内暴力に至ってしまうこともあります。
家族は、自らの自責感や世間体などから相談や援助に消極的な場合もあります。 しかし、適切な対応ができないまま家庭内暴力を放置することで、傷害事件や家族の健康状態の悪化などに発展する恐れがあります。家庭内暴力について正しく理解し、早期に適切な対応をすることが重要です。
では、家庭内暴力とはどのようなものをいうのでしょうか。大きく分けると『初期暴力』と『慢性期暴力』の2つがあります。
初期暴力とは、家族が皮肉や嫌味、叱ったりすることで起こる暴力のことを指します。初期暴力は、本人を刺激しない対応を心がけること、本人にとって警戒せずに参加できる話題にするなどの対応によって、ほとんどは抑止することができます。 また、家族が誰にも相談できず、家族以外の第三者が介入をしない状態で慢性化しやすいことが指摘されており、相談と介入(友人、親戚、援助者など)によって、問題を外部に開示することが慢性化を防ぐことにつながります。
「暴力って言っても、怪我をしたわけじゃないし…」「家族の問題だから、家族で解決しないと」と家族だけで悩まず、まずは家族以外の人に相談してみてください。
一方で、慢性期暴力とは、家族の刺激がなくても起こる暴力のことを指し、些細なことに難癖をつけて暴れたり金銭を要求したりすることがあります。 本人は現在の状況を「家族のせいで生じたものだ」と他責的になり、家族に暴力をぶつけたりや代償を求めたりせずにはいられないのです。 しかし、根源にある感情は『悲しみ』であり、本人も自分を責めていることがほとんどです。

家庭内暴力に向き合う重要なポイントは『暴力の徹底拒否』です。慢性期暴力になると、たとえ家族の刺激がなくても暴力が起こります。 この場合、子どもからの暴力は甘んじて受けるのではなく、『家族は真剣に暴力を拒否している』という毅然とした態度が解決の糸口となります。暴力の拒否といっても、暴力に対して暴力で対決するわけではありません。
力で家庭内暴力を制圧しようとしても、ほとんどの場合失敗します。暴力は拒否しながら、本人が言葉で訴えてきた場合には、その言葉にしっかりと耳を傾けてください。 暴力をふるわずにはいられないほどの「悲しみ」や「不安」な気持ちがそこには存在しています。そして、同時にその言葉に振り回されないことも大切です。 『治療的支援の方法』で述べたように、いいなりになることと耳を傾けることは異なります。その言葉に対して、真摯に向き合う姿勢をみせることで、暴力が解消しやすくなります。

実際に長期的な暴力が起こっている場合には『通報』と『避難』の2つが重要になります。

通報

暴力の程度によっては、警察への通報も必要になります。ただし「警察が問題を解決してくれる」から通報するのではなく、暴力を徹底拒否するという毅然とした態度を見せるための通報です。 それだけの覚悟をもって家族は問題と向き合っていると、本人に理解されることが大切です。また、予め「暴力があれば通報をする」ことを本人にも伝えた上で、本当に暴力があった場合は警察に通報するということがポイントとなります。 通報の予告をして実際に暴力が生じた際には、ためらわずに警察に通報しましょう。家庭内暴力が起きた場合の警察への通報は、逮捕や補導が目的ではありません。 家庭内暴力は密室化した家族関係で生じやすいため、第三者が家庭に介入することで暴力のエスカレートは防げるのです。
通報の予告のみで対応を続けていると『結局、通報することはない』と判断され、暴力はエスカレートしてしまいます。
家庭内暴力が生じてからの110番にためらいが強いのであれば、地域の警察署(例えば〇〇市警察署)に事前に「家庭内暴力のことでお連絡差し上げることがあると思います。」と報告しておくと、実際場面での通報にためらいも軽減します。

避難

「私たち家族が我慢すればいい」と暴力を甘んじて受けることは得策ではありません。それは、暴力をエスカレートさせないという理由だけでなく、暴力でしか訴えることができない本人に対話の重要性に気づいてもらうためでもあります。
そのためにも本人には
(1)暴力から逃れるための避難であること
(2)あなたを見捨てたわけではないこと
(3)暴力がなくなればまた一緒に暮らすことができること
の3点をしっかりと伝えておき、暴力が発生した時には物理的に離れることが大切です。

上記のような方法をとるとしても、ただ他人に任せればいい、ただ逃げればいい、というわけではありません。タイミングを間違えると逆効果になることもあります。まずは専門家や支援者と話し合い、十分に打合せをする必要があります。

4節緊急時の対応 2.暴力が生じている場合の家族支援 厚生労働省
ひきこもり支援者のための実践的な知識や制度等の解説 (5)家庭内暴力への対応 内閣府
島根県ひきこもり支援マニュアル 第5章「緊急時対応」 島根県

利用できる資源

ひきこもり支援推進事業

厚生労働省では、2009(平成21)年度から『ひきこもり支援推進事業』に取り組んでいます。ひきこもり支援推進事業とは、下記の3つの事業から構成されています。
(1)ひきこもり地域支援センター設置運営事業
(2)ひきこもり支援に携わる人材の養成研修 2013(平成25)年度~
(3)ひきこもりサポート事業 2018(平成30)年度~
ひきこもり地域支援センターは、2020(令和2)年度現在、全国67の自治体で設置されており、主な業務に下記のようなものがあります。
・ひきこもりに特化した相談窓口:相談窓口の明確化
・ひきこもり支援コーディネーター:自立への支援
・関係機関との連携:包括的な支援体制の確保
・ひきこもりに関する普及、啓発:情報発信
ひきこもり支援コーディネーター事業では、社会福祉士、精神保健福祉士、心理職などのコーディネーターがひきこもり状態にある本人や、その家族からの電話、来所などによる相談や家庭訪問を中心とした訪問支援を行っています。

ひきこもりサポート事業では、ひきこもりの状態にある本人、家族からの相談を受けて、訪問による支援や専門機関への紹介等を行います。また、ひきこもりの方の居場所づくり、ひきこもりサポーターの派遣、ひきこもり施策情報の発信を行います。

ひきこもり支援推進事業 厚生労働省

支援に関する機関

ひきこもり地域支援センターを中心として、ひきこもりの状態にある本人、あるいは家族の状況に合わせて利用できる関係機関があります。

相談、福祉、行政関係

・福祉事務所
・市区町村窓口
・児童相談所
・精神保健福祉センター
・発達障害者支援センター
・子ども若者総合支援センター など

教育関係

・学校
・教育委員会 など

就労関係

・地域若者サポートステーション
・ハローワーク
・障害者雇用促進関連施設 など

保健医療関係

・医療機関(精神科、心療内科、小児科など)
・保健所、保健センター など

民間団体

・家族会
・NPO法人
・民間カウンセラー など

これらの機関の多くは、知的能力障害、うつ病、不安障害、アルコール依存症などの治療やカウンセリング、あるいは就労支援に関する機関であり、ひきこもりに特化した機関ではありません。 また、本人が通所できなければサポートを継続することが難しい機関もあります。
そのためにも、ひきこもりの状態にある本人や家族の状況をしっかり査定してそれぞれのケースにあった場所と連携を取りながらサポートできるよう、まずは総合窓口であるひきこもり支援センターに相談してみましょう。
島根県のひきこもり支援に関する情報は、次項の『島根県でのひきこもり支援』を参照ください。

「ひきこもり」対応ガイドライン 4節ネットワークを通した「ひきこもり」への援助 厚生労働省
ひきこもり支援機関一覧 島根県

島根県ひきこもり支援センター

島根県では、身近な各市町村を一時的なひきこもり相談窓口として位置づけております。
2015(平成27)年4月には、松江市の『島根県立心と体の相談センター』内に『島根県ひきこもり支援センター』を設置するだけでなく、県内の支援体制を拡充するために県内の保健所に相談窓口を設置し、ひきこもり本人や家族等からの電話、来所による相談に応じています。
島根県ひきこもり支援センターの主な事業は下記の通りです。
・ひきこもり相談:本人や家族などからの相談対応
【来所相談、電話相談】月~金曜日 8:30~17:15
・家族教室の開催
・小集団グループ活動『クローバー』
・家族会支援
・市町村、支援機関等への技術支援や研修等の実施
・関係機関とのネットワーク構築 など

島根県ひきこもり支援センターの対象者は、下記の通りです。
・中学校を卒業した方
・現在、仕事や学業についていない方
・人とのつきあいがうまくいかない、自信がない方
・家庭以外の居場所や、人との交流の場がほしい方
活動の日時、場所など詳しい情報を知りたい方や、クローバーの利用を希望される方は、島根県ひきこもり支援センターへご相談ください。

島根県ひきこもり支援センターにはクローバーと呼ばれる、主にひきこもりに悩んでいる方を対象とした活動の場があります。 クローバーの活動内容は、グループ活動(ソーシャルスキルトレーニングや外出活動、季節行事、スポーツなど)、ストレッチ、レザークラフトなど様々です。活動の様子は島根県のホームページでも紹介されています。

ひきこもり状態にあるご本人が、最初から支援機関や医療機関に出向くことは難しいことが多く、まずはご家族による相談から始まります。この場合『ひきこもり家族教室』への参加が有効になります。
『ひきこもり家族教室』は、ひきこもりに関する様々な知識やご本人への対応の工夫、サポート方法などを学んでいただくとともに、同じ悩みをもつ家族の方同士で語り合う場です。ご家族の不安や焦る気持ちを和らげることを目的とした場で、島根県内数カ所の会場で開催されています。
ご家族の中には「ひきこもっているのは本人であって、外出できる私たちが変わっても意味がない」「本人を外に連れて出るなんて絶対に不可能だから、家族教室に参加しても無駄だ」と思われる方もいます。 確かに、ご本人と直接会わなければ分からない面もありますが、ご家族が見て思われたこと、感じられたことをその他の家族と一緒に話し合って振り返ることで、家族関係に違う見方ができたり、ご本人への対応を変えられるほどに余力が生じたりすることがあります。その結果、ご本人の変化に繋がっていくこともあるのです。
家族教室の情報は『島根県ひきこもり支援センター』ホームページ内に掲載されています。最新の情報をお確かめください。

島根県ひきこもり支援センター 島根県
島根県ひきこもり支援センター活動の様子 島根県
小集団グループ活動クローバー 島根県