不登校支援サイト『未来地図』と『不登校新聞』
子どもが学校に行けなくなったとき、保護者は子どもの将来を不安に思い、また、そのような状態になったのは自分のせいではないかと自分を責めることもあるでしょう。
焦る気持ちは家庭のあらゆる面に影響し、不安な気持ちを募らせるだけになってしまいます。
効果のあった不登校支援
2005(平成17)年、厚生労働省は『児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査』にて『不登校児童生徒への指導の結果、登校するようになった児童生徒に特に効果があった学校の措置』に関する調査結果を発表しました。
結果は次の通りです。
この結果からは、学校と家庭が一緒になって学習と生活の両面で子どもを支援してくことが、不登校支援に必要であることがわかります。そして、医療機関との連携は、あまり効果が高くないこともわかります。
不登校道案内サイト『未来地図』
保護者の不安を軽くするために、学校の先生はスクールカウンセラーの利用を勧めることがありますが、スクールカウンセラーを利用できる時間は学校が開校している時間であり、相談するのにも学校へ足を運ばなければならず、平日にお仕事のある保護者にとって利用は容易ではありません。
不登校の子どもを支える『親の会』に参加することも方法のひとつですが、会の多くは当事者が自主的に立ち上げているため、数は多くなく、開催情報も公にされていないことがあり、アクセスはよくありません。
そのような問題を解消してくれるのが、先輩ママたちが運営する不登校の道案内サイト『未来地図』です。
未来地図は『子どもがはじめて不登校になって不安いっぱいのママ&パパたちが思いっきり安心できる場所を作りたい。そんな想いで、不登校の知識から先輩ママたちの体験談までさまざまな情報を発信している』不登校専門の情報サイトです。(HPより)
本サイトには
- 不登校に関する情報まとめ
- 先輩ママの体験談公開
- イベントの紹介
- 思いを書き込む掲示板
- 個別のメール相談
- 全国の『親の会』紹介
- フリースクールや通信制高校の情報まとめ ※一部のサービスは、利用にあたって無料の会員登録が必要です
など、様々な情報が保護者の目線で保護者向けにまとめられています。
我が子のもがく姿に何もできず、子育ての自信を失いそうな保護者にとっては、我が子にも自分(親自身)にも「大丈夫だ」と、声を掛けられるようになれる繋がりや情報が満載のサイトです。
『不登校新聞』
全国には様々な業界新聞や専門新聞があります。『不登校新聞』は文字通り不登校を専門に扱う専門紙です。月2回の定期発行で、現在は、紙版だけでなくWeb版も発行しています。
保護者や本人向けの情報だけでなく、元不登校だった大人の声、不登校まっただ中の児童生徒による連載、著名人による“不登校”への思い、不登校に関する政策動向など、不登校に関する深くて広い情報が掲載されており、大人も子どもも読める内容になっています。
不登校新聞のメッセージである「“不登校”という生き方を提案します」を体現するさまざまな人の生き方や考えに触れると、辛くて苦しいだけと思っていた『不登校』に別の側面が見えるようになり、「大丈夫」と、ふと思える瞬間に出会えるようになります。
「大丈夫」が希望になっていく
最後に私の好きな先生の言葉を紹介して、この記事をしめくくりたいと思います。ひとりは、玄田有史先生、東京大学の教授です。島根県がご出身です。玄田先生は中学生と高校生に向けて、次のようなメッセージを伝えています。
「大きな壁にぶつかったときに、大切なことはただ一つ。壁の前でちゃんとウロウロしていること。ちゃんとウロウロしていれば、だいたい大丈夫。」
玄田先生が研究するのは『希望』です。希望とは何か、希望がある人とはどういうことか、希望は “スキル”のようなものなのではないか、希望があると生きやすくなるのか、など希望に関する研究を進め、『希望学』を立ち上げました。
調査によってわかったことの一つに「挫折経験があるとする人ほど希望を持っていると回答する傾向にある」(玄田 2006)があります。これは『挫折を乗り越えられたからこそ、希望を持てるようになる』といった根性論のようなものではなく、『希望を持てるようになるには、挫折経験が必要である』ということです。
また、挫折が希望になっていくためには「大丈夫」という言葉が必要であると指摘しています。ただし、やみくもに「大丈夫だ」と言うだけでは、不安にいる当事者たちにはむしろ心もとなく感じられるかもしれません。玄田先生は「聞いた人が希望を持つことができる“大丈夫”」についても研究調査で明らかにしており、上記の“大丈夫”はその例です(玄田 2010)。※大丈夫の使い方の詳細は成書を参照ください。
以下は希望学のメンバーである宮田祐子先生のメッセージです。
「計画を作ってみようよ。希望を持つことから始めてみようよ。将来計画通りの人生を歩むことは不可能だけど、幸せな人生を送ることは可能だよ。挫折したことのある人であればあるほど、幸せになる確率は高いかもしれない。挫折したということは、それだけ希望があったということ。今もし挫折して劣等感を抱いているとしたら、それは自分に希望をかなえる力があるということなんだ。」(希望学の旧ホームページより)
参考文献
玄田有史(編著) (2010). 希望学 中公新書ラクレ
玄田有史 (2016). 希望の作り方 岩波新書